22話 吸血鬼城攻略戦②
待たせたなぁ!! え? 待ってない? ……生意気言ってすみませんした。
というわけで(話題逸らし)、凄まじくどうでもいい作者の近況報告を。
最近イケアででっかいサメのぬいぐるみを買いまして、元々いた同じくイケア出身のでかい犬のぬいぐるみと一緒に抱き枕にしているんですよ。
それで毎晩サメと犬に挟まれてハーレム状態なわけですが、これを誰に言っても可哀想なものを見る目をするだけで、少しも羨ましそうにしてくれないんですよ。
もっと地団駄踏んで地べたを転げまわって悔しがってくれていいんですよ?
ちなみに、作者はハーレムものそんな好きでもありません。例外はありますが。(代表例 ありふれ 100カノ)
天気の良い昼下がり、人通りの多い噴水広場に、一つの小さな人影が現れた。
「…………」
ここはこの国のセーブポイントであり、初心者やキルされたプレイヤーが現れることから、誰も気にとめない。
その人影は、そこに現れてからというものの、かれこれ10分以上は直立不動のまま動かない。
「…………」
黒いネコミミ付きのフードを目深に被っているうえ、うつむいているために外から表情は見えないが、黒い上着の下に白いスカートと黒いタイツが見えることから、身長も考えると11歳か12歳程度の少女だろう。
傍から見れば親とはぐれて迷子になった少女である。ネコミミフードも相まって迷子の迷子の子猫ちゃ………なんでもないです。
外部からは見えないが、その人影は小刻みに震えており、普段表情のないはずが涙目でどことなく不満そうな雰囲気であった。
そうしてしばらくした後に、
「………………………………まけた」
その人影、お察しの通り現代の化け物紅月白夜に久しぶりの黒星をつけたのは、神話の化け物セレナイト・スカーレットだった。
◇ ◇ ◇
「ようこそ、吸血鬼の城へ。わたしは、今は無き吸血鬼の国の姫、セレナイト・スカーレット。──セレナとでもお呼びください」
そうして一礼する少女だが、白夜はその少女のステータスに集中していた。
【吸血姫 セレナイト・スカーレット】 レベル2135
種族:吸血鬼(真祖)
状態:弱体化
HP:203276
SP:102376
MP:259435
筋力:81376
速度:90167
防御:78596
魔攻:263297
魔防:247964
隠しステータス:貧乳
称号:『■■■』(データ削除済み)
『継承者』
『魔導の極み』
『夜闇の王』
ナンダコレ。
明らかにおかしい。称号とかにもつっこみたいが、とりあえずステータス。
白夜が今まで見た中で、異常に高いステータスは、陸斗の筋力10万、拓海の魔攻魔防13万、美空の速度15万、メイの速度23万。
そして、この世界のNPCの一般兵士が高くてもステータス平均千から2千。歴代【勇者】が5千から1万。
3千あれば英雄。1万あれば小規模な天変地異が起こせる(拳で地面にひびを入れたり目にも留まらぬ速度で動いたり魔術で地形を変えたり)。
ちなみに初代【勇者】がオール6万、【魔王】は当時(4000年前)オール10万。
【勇者】には寿命を削って相手のステータスに追いつくという面白機能があるので、格上とも対等に戦えるためステータス差はあまり意味がないが、この二人の戦いの結末を言うなら、【魔王】は今もご存命ですとだけ言っておく。
神獣ならオール50万もいる。
まあ、インフレ野郎共は置いておいて、陸斗たちのように、一点に特化したタイプではなく、多少(?)魔法系ステータスに偏っているものの、超ハイレベルなバランス型。おそらく魔術をメインに物理ステータスによるごり押しもできるタイプ。
純粋に強い。ステータスで劣る白夜にはかなり厳しい相手である。
そんな風に、白夜が戦術を組み立てていると、
「さて、お姫様ごっこもこのくらいにして──」
そう言って再び玉座に座り、こころなしか楽しそうに言う。
ごっこどころか血統から肩書きまで正真正銘お姫様のはずだが、セレナからすればごっこらしい。
そして、ステンドグラスのような細工がされた透明なガラス張りの天井から見える赤い月を見上げ、
「月が綺麗ですね」
なんか告白された。
と言っても、この世界に日本文学的なよく分からん表現があるかは知らないが。
「自分で作ったんでしょ……」
ロマンチックのロもない答え。
「おー。気づいてましたか。たしかにあの結界を張ったのはわたしですけど、わたしが生まれる前からあんな感じだったそうなので、たぶん仕様です」
「あ、そんなに警戒しなくても《月の加護》は切ってあるので安心してください」
──吸血鬼固有スキル《月の加護》
数ある吸血鬼の固有スキルの中でも特に有名なもので、三日月で3倍、半月で5倍、満月で10倍、蒼い満月で20倍、紅い満月で30倍のステータスバフが得られる。
つまり、最大で一番低い防御ステータスでさえ235万を超え、一番高い魔攻にいたっては789万超え。
ステータスだけなら神獣とも殴り合える。
そんなものを使われたら、白夜に勝ち目はなかっただろう。
「まあ、それはそうと。ちょっと聞きたいことがあるんですよ」
「……聞くだけ聞く」
「いえ、シャロとメイを殺したのはあなたですよね?」
「ん」
「じゃあ、ジンって人知りません? 灰色っぽい銀髪の人狼のおっさ──お兄、さん? なんですが……」
「しらない」
「そうですか……。《眷属支配》が切れたので死んだのは間違いないんですが。……みんなそろってわたしを置いて次から次へと……」
最後は声が小さく、白夜の耳に届くことはなかったが、どことなく不満そうな、そして泣きそうな表情が見えたがすぐになくなったので気のせいかもしれない。
「質問は終わり?」
「ええ、もういいですよ」
「じゃあ、これ」
そう言って、取り出した物を高々と放り投げる白夜。
それは放物線を描きながらセレナの方へと落下し、
「……《風弾》!」
セレナが指先から放った風の弾丸により、少し軌道を変えてからセレナの手の中に収まる。
そして、風の弾丸に当たった際に剥がれた小さな紙のようなものが天井付近まで舞い上がり、轟音とともに爆発する。
「……まったく油断も隙もない……」
「油断して隙を晒すのが悪い」
「……警戒してて正解でしたよ……」
呆れたようにため息を吐きながら、落ちてきた物をキャッチすると、それは手のひらサイズの黒いキューブだった。
「これは……シャロの魔力ですか」
「ん。シャロがそれ届けろって」
「そうですか……。ははっ………さすが、ですねぇ……」
一瞬、セレナが泣き笑いのような表情になったが、次に起こった出来事により、すぐに消える。
黒いキューブから影鳥が現れ、セレナの頭の上に乗ったかと思うと、セレナの頭をつつき、ひと声鳴く。
「……はいはい。わかってますよ。シャロはシャロの、メイはメイの仕事をした。わたしだけボイコットはしません」
そうして白夜に向き直り、
「さて、もう用は終わりましたね? あとは殺し合いましょう」
「……なんで?」
白夜としては本来の目的は終わったのでここにいる理由も殺し合う理由もない。
どちらかというと先に爆発物投げ込んだのは白夜なので、本来その反応はおかしいのだが、爆発物はほぼ無意識で仕掛けたため、あれで喧嘩を売ったとは考えていない。
「わたしを殺せたらわたしのボスドロップとこのお城をあげます。本来なら『世界の半分をくれてやろう』くらいは言ってみたいのですが、あのクソ天使共がいる限りちょっと難しいんですよねぇ……」
「……それに、適正ならシャロたちより高いので眷属にしたいのですが……そういうわけにもいきませんし。仕方ないですね。残念です」
後半は口内で呟くような小さな声だったため、白夜にはなにかを呟いたということしか分からなかった。
「まあ、どちらにしても逃がしませんし」
「……わたしが死に戻りしたら?」
「? しないでしょう?」
「………」
たしかに、自殺出来ない理由がなくなれば今すぐにでもログアウトして首をかっ斬りかねない白夜だが、いくらなんでも今ここでそれをするのが経験値や時間の無駄だということぐらいわかる。
だが、そのことを初対面……やたら馴れ馴れしいしどこかで会ったことがある気がしなくもないが、初対面の人間(吸血鬼)に指摘されるのはなんとも言えない気分になる。
「ま、そんなことより闘りますよ〜。──《血器術》」
セレナの軽い声とともに、その右手に真紅の槍が現れる。
「これは《血器術》といって、血液と魔力を結合させて武器に変えるスキルですね。といっても、血液をそのまま武器に変えると貧血で死ぬので、《増血》ってスキルを使って擬似血液で増やしてますね。だいたい血の一滴で槍が一本作れます。あ、これはもっと使っているのでかなり頑丈ですよ?」
なぜかわざわざ自分のスキルの解説をしてくれるセレナ。
解説をする理由は知らないが、その説明通りなら、【ベルセルク】の《魔喰》と相性がいい。……《魔喰》と相性が悪いものの方が少ないが。
「来ないならわたしから行きますね」
そしてセレナは地を蹴り、白夜に迫り槍を振るい、それに合わせて白夜は槍ごとセレナを両断するつもりで大鎌を振るう。
──ガキンッ!
「ん?」
予想が外れ、セレナの槍によって白夜の大鎌は止められた。
困惑しつつも一切のラグ無く後ろに跳ぶ白夜に、セレナの追撃の蹴りがはいる。
「ぐぅっ」
ギリギリで大鎌の柄で防御しつつも、予想外の威力により壁に叩きつけられる。
「……やっぱりですか。せっかくの【大罪の器】なのですからちゃんと使いこなして──おっと」
壁に叩きつけられた白夜の元にセレナが近づこうとして、ふと寒気を感じ取って立ち止まる。
セレナの視線の先には、むくりと音もなく立ち上がった白夜がいた。
いつも通りの無表情で目は眠たげに細められている。
しかしその目は、冷静に物事を観察する学者のようであり、獲物の命を刈り取らんとする獰猛な獣のようでもあった。
そういえば、気づいている方もいると思いますが、同じサブタイトルで①②③に分かれていた場合、①②の時は次回予告という名の茶番はありません。




