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21話 吸血鬼城攻略戦①

すみません。かなり遅れました。戦闘描写ってまだ慣れないんですよね……。

あと、ややこしいので真祖と神祖を分けました。

吸血鬼の真祖とご先祖が神祖です。


(時間帯的に)青い(はずの)空(実際は真っ黒)……


 うなる大自然(黒い巨木の森)……


 なれなれしい子牛いません……


 通じないケータイ(この世界にはありません)……


「………ここ……どこ……?」



 遡ること数分前。【闇の森(シャーマナイト)】脱出の際に消費した【魔術符】を補充し、シャロとの約束を果たすべく、シャロいわく『道しるべ』、正式名称【パンパカパーン! シャロの討伐、おめでとうございます! というわけで、来てください。待ってます】、略して【パンパカ】を起動し、そこで見た光景は、


 背後にある黒い巨木の森、昼間なのに暗い空、天に昇る紅い満月、目の前に広がる廃墟の街の奥には、距離感が狂うほど巨大な城。


「………ここ……どこ……?」


 つまり、わざわざ回想するほどのことはなかったわけである。


 空に浮かぶ紅い満月。先程からあれに《魔力感知》が反応している。


 おそらくあの月、というより夜空そのものが大規模な結界だろう。


 とりあえず、目の前の城へ向かうことにする。

 目の前の城、見た目魔王城といった感じなのだが、昔見た姫路城が倉庫に見えるようなサイズである。とにかくでかい。



 ◇ ◇ ◇



 なんとか城までたどり着き、巨大な扉を開き、中へ入る。


 そこは広大な玄関ホール。全てが紅と黒で構成された空間だった。奥には巨大な階段が見える。


 そして、白夜が中に入った瞬間、バタン、と音をたてて扉が閉まる。どうやら自動ドアだったらしい。

 押しても引いても開かないということは、鍵まで自動でかけてくれる便利仕様。


「………しまった……」


 閉まった、という事実を言ったわけではなく、しくじった、の方である。逃げ道を塞がれた。


 見たところ、超強力な封印と結界が施されており、破壊は不可能である。


 闇属性、もしくは光属性の最上級魔術か、火水風土の複合属性の最上級魔術ならおそらく破壊だけならできるだろう。すぐに再生するだろうが。


 闇属性と光属性の最上級魔術は《消滅》をつかさどり、火水風土の複合属性の最上級魔術は《分解》をつかさどるが、白夜はどれも使えない。


 ちなみに、《分解》と《消滅》は似て非なるものだが、似ていることには変わりないので、基本的には気にする必要はない。


 どうしようかと白夜が扉を眺めながら考えていると、コツ、コツ、と背後の巨大な階段から足音が響き渡る。


 背後を振り返るとそこには、膝までの長さの白黒のメイド服、瞳孔が裂けた紅い瞳、そしてなにより目を引くのが、銀の髪の上でホワイトプリムとともに揺れるネコミミ。ネコミミメイドがいた。


「吸血鬼の城へようこそ。侵入者様」


「………」


 ネコミミメイドの衝撃に、反射的に大鎌を構えながらも硬直する白夜。どんな状況でも真っ先に武器を構えるあたり、戦闘民族かなにかなのだろうか。


「私は、今は無き吸血鬼の国の姫、セレナイト・スカーレットの従者が一人、メイド長をしております。メイランド・スカーレットと申します。──メイとでもお呼びください」


 メイド長を名乗る少女、メイは、そう言って、優雅に一礼した。


「あなたにはたいした恨みはありませんが、姫様の命令ですので。申し訳ありませんが、死ぬまで付き合っていただきます」


 そんな言葉とともに、突如メイの周囲に百に迫る銀色のナイフが現れ、白夜に向かって飛来する。


「届け物しに来ただけなんだけ……どっ!」


 白夜も返答しながら左手に数本の【蹂鱗投剣(じゅうりんとうけん) カリュブディス】を《瞬間装備》で取り出し、それを前方のナイフ群に向かって投げ軌道をそらし、残りを大鎌を回転させながら弾く。


(ナイフ、全部実体。《鑑定》結果、【銀の短剣】)


 どうやら、幻影でも魔力を固めたものでもなく、全て本物らしい。

《瞬間装備》や、空間がいじられたような反応は《魔力感知》、《空間感知》では確認されなかった。


《射出》のスキルでもない。強いて成果をあげるなら、《鑑定》でメイのお腹にあるエプロンのポケットが《空間収納》付きだとわかったことくらい。

 本人の《鑑定》結果は《鑑定阻害》のスキルにより妨害されたが、見ることができた範囲ては、





【吸血冥土 メイランド・スカーレット】 レベル1533


 種族:吸血鬼(獣人)


 HP:35796

 MP:1358

 SP:57495

 筋力:13579

 速度:235497

 防御:11349

 魔攻:1135

 魔防:97364





 この一瞬で得られた情報を整理すると、メイは白夜では知覚できない速度で百本近いナイフをエプロンのポケットから取り出し、白夜を囲むようにそれぞれ別の角度から投擲したことになる。


(……速すぎない?)


 それが本当ならたしかに異常な速度だが、この一瞬でこれだけの情報を集め、判断する白夜も十分異常である。


(次はタネ探し。加速系のスキルか、単純な速度ステータス上昇か。どっちにしろ音速超えたら衝撃波(ソニックブーム)がおきるし、そこから速度上げるのは大変なはずだけど)


 床が剣山みたいになって歩けなくなる前に移動しながら、


「吸血鬼のメイドが銀のナイフ使っていいの?」


 たしかに有名な時を止める系吸血鬼の銀髪メイドは銀のナイフを使うが、実際にやるのはどうなのだろうか。そもそもこの世界の吸血鬼に銀が効果あるかも知らないが。


「ええ。私もそう思いますし、なんなら私も半分吸血鬼なのですが、姫様に『吸血鬼のメイドで銀髪ときたらコレですよ!』とか言いながら自作の銀のナイフを数千本手渡されまして……。あのキラキラした期待の眼差しを向けられてそんなことを言うメンタルは私にはありませんでした……」


 どうやら吸血姫の感性は白夜と近いらしい。

 シャロが吸血姫と白夜は似ていると言っていたが、そういうことだろうか(多分違う)。


「シャロの小僧もやたら乗り気だったので、気は向かなかったんですけどね」


「シャロと仲良くなかったの? あいつ今ではわたしの服になってるけど」


【シャドウロード】をひらひらさせながら煽ってみる。

 この会話の間にも最初のような百本近いナイフの弾幕こそないが、一度の投擲の動きにつき十本近くのナイフが同時に飛来している。


「ただの仲間です。強いて言うなら恋敵(ライバル)ですね。私が見たところあいつがリード中。逆転のきざし無し。……何度殺してやろうと思ったことか」


 仲は良かったらしい。


 メイが再び消える。白夜は直感に従って魔術符を取り出し、前方と両脇に炎の壁を展開する。


「おっと。危ないですね」


 そして背後から聞こえた声に向かって、


「──《影弾幕(シャドウバラージ)》」


「おっと。魔術使えたんですか。しかもほぼノータイム」


 いつの間にか背後に現れていたメイに向かって影の弾幕を浴びせると、メイが少し焦ったようにナイフを振るい、弾幕を切り裂く。


 弾幕と言ってもたいした量ではなかったため、あっさり逃げられた。


 先程、白夜は炎の壁を目隠しに、背後にシャロの時にも使った糸を設置していた。


 そのまま突っ込めばサイコロステーキ先ぱ……サイコロステーキになるところだったのだが、回避されたのであらかじめ用意していた魔術を撃ち込んだ。

 白夜はノータイムで魔術など使えないが、勘違いしているなら放っておく。


(まあ、だいたいわかったからいいけど)


 おそらくメイが先程から行っているのは、ただの高速移動。それも走っているだけ。


 しかし、白夜の目でも追えないような速度での高速移動なら、空気抵抗による衝撃波(ソニックブーム)が大変なことになる上、単純に空気抵抗で速度が鈍る。


 本来なら速度ステータス1万で音速なところが、音速を超える者があまりいない理由がこれである。


 速度ステータスというのは、動体視力、神経や筋肉の反応速度であって、移動速度ではない。これを無視するのが美空の《纏風》だが、とりあえずそれはおいておく。


 メイの能力はおそらく、自分と自分の触れているものを対象とした《透過》。それも完全なものではなく、一定以上の質量は透過できない。

 周囲の空気だけを透過し、空気抵抗を無視するためのものだろう。


 だから投げたナイフが突然現れたように見える。手を離れた後に空気抵抗の影響を受けるから。


 全力で《探知》を使っても空気の乱れが見つからないのも、消えては現れていることから、急加速と急停止を繰り返しているはずなのに、髪や服装が乱れていないのもそのためだろう。後者はメイドの奥義かもしれないが。


 とにかく、物理攻撃も魔法攻撃も当たるなら、いくらでもやりようはある。


 白夜は戦闘開始時から回転させ続けていた大鎌をそのまま頭上にかざし、


「──《魔刃・万華》」


 大鎌の刀身が紅い輝きを帯び、花弁のような万の刃が全方向に散り、空間を斬撃で埋め尽くす。


「これが難易度ルナティックってやつですか。姫様とやったリアル弾幕ゲーム並みにしんどいですよ」


 そう言いながらもかなり余裕そうな表情で現れては消えてを繰り返すメイ。


「──ふっ!」


 そこに、メイの背後に回り込んだ白夜による上段の一撃。

 弾幕ごっこは囮。最初からメイが弾幕を抜ける道は一つしか用意されておらず、白夜はそこで待ち構えていた。


 だが、


「甘いですよ」


 そんな白夜の一撃を、メイは少し驚いた表情を見せつつも回避する。

 それにより、勢い余った大鎌が床に深々と突き刺さる。


「あ……」


 焦って大鎌を引き抜こうとする白夜の背後でメイがナイフをその首筋へと一閃し、


「──ぇ?」


 そこで気づく。


 自らの左脇腹、右肩、右脚から、黒い触手のようなものが生えている。否、貫通していることに。


「しまっ──!」


「……つかまえた」


 メイの高速移動は、自分と自分の触れているものに作用する。服やナイフ、直接触れた生物など。


 だが、その対象外となるのが、自分が触れているものに触れている生物。


 つまり、黒い触手を通してメイと繋がっている白夜は対象外。そして、その白夜に貫かれ、身動きが取れない以上、高速移動も意味がない。


「──《収束》」


 そして、そこに白夜からの容赦ない追撃。周囲を飛び回っていた魔刃が向きを変え、メイへと殺到する。


「ちぃっ!」


 メイは今動く左手にナイフを握り、


「ぐっ!」


 魔刃がメイに直撃するが、その数が10分の1程度にまで減っている。


 ずっと《鑑定》を続けていた白夜には、《気功法》《魔闘法》《纏魔(てんま)》の文字が見えた。


 どうやら、ナイフで可能な限りの魔刃を撃ち落とし、後はステータス強化系スキルで防いだらしい。


 だが、メイの抵抗もここまで。白夜の【シャドウロード】の《影操作》で作られた影の触手で貫かれて動けないことに変わりはなく、さらに、


 白夜が床に刺さったままの大鎌を、抵抗などないように軽々と引き抜く。


 先程の、大鎌が抜けないように見えたのはもちろん演技。たしかに床に深々と刺さり、引き抜くのは大変だが、《魔刃》を発動させれば床ごと斬れる。


「じゃ、さよなら」


 動けないメイの首筋に向かって白夜の大鎌が迫る。


 生存本能によって引き延ばされた時間の中で、メイは思考する。


 強化系のスキルでステータスは強化されているが、大鎌はあらゆる武器の中でもトップクラスの耐久性と攻撃力を持つことで有名な武器(その代わりめちゃくちゃ扱いづらい)。おそらく首くらい簡単にはねられる。


 自分は今でも黒い触手で貫かれており、さらには体内で枝分かれするようにして伸ばされ、神経も正確に切断され、右腕と右脚は使い物にならない。


(そして、形状は変わってますけど、あの大鎌が私の知っているものと同じなら、《纏魔》も意味なし。回避は不可能、防御も出来ない。……詰みましたね)


 生存を諦め、先程から流れている走馬灯に浸ることにする。


 脳裏によぎるのは、故郷である【幻獣の森】に、【帝国】【神国】【闇の森(シャーマナイト)】。そして、この城。


(こうして見ると、私結構いろんなところに行ってますね。クソみたいな場所でしたけど、なんだかんだ楽しかったのは【帝国】と【神国】ですかね。あの頃はみんな揃ってましたし)


 そして、運命が変わった『あの日』を思い出す。


(シャロが死んで、姫様もボロボロで、最近になってからジンも死んで、またシャロが死んで、私も死ぬ。あの世でシャロに笑われないくらいの働きはしましたが……いや、ボスモンスターは星にもなれないんでしたっけ? ……いや、それより姫様、一人で大丈夫ですかね?)


 今から死ぬというのに、かなり余裕がある。


(あ、やば。もう大鎌が首にくい込んできました)


 よく見ると、既に白夜の大鎌がメイの首筋に届いていた。引き延ばされた時間も、もう終わりらしい。


「──姫様を、よろしくお願いします」


「へ?」


 その言葉を言い終えると同時に、メイの首が飛び、光の粒子となって空気に溶けた。



 ◇ ◇ ◇



 ── 覚醒個体【吸血冥土 メイランド・スカーレット】の討伐が確認されました。


 ──覚醒個体討伐特典対象者条件を、個体名『しろ』が達成しました。


 ──覚醒個体を、覚醒個体討伐特典に変換。開始します。


 ──支配者『百獣の王』より、要請がありました。


 ──支配者『百獣の王』の要請は承認されませんでした。


 ──覚醒個体【吸血冥土 メイランド・スカーレット】を、覚醒個体討伐特典【猫耳冥土 メイランド】に変換。完了しました。


 ──覚醒個体討伐特典【猫耳冥土 メイランド】を、個体名『しろ』に譲渡。完了しました。



 ◇ ◇ ◇



「………なんだったの? あれ」


 なんか首をはねた相手から姫様をよろしくお願いされた。


 まあ今回の目的はその姫様にお届け物することなので、とりあえず様子は見に行くが。


 そんなことを考えながら、横幅が学校の教室ほどある廊下を歩く。


 城の外観から、その姫様とやらがいると思われる玉座の間の場所を予測していたが、どうやら《空間拡張》が施されているらしく、目測で測ったデータが当てにならない。

 まあ、先程玄関ホールを抜けたところにあった『城内案内マップ』を記憶したので迷うことはないが。


「………ここか」


 そして、まっすぐ来たというのに20分近くかけてようやくそこにたどり着いた。


 そして、重々しい扉を押して──


「………」


 開かなかったので引いて──


「………?」


 開かない。まさかここまで来て鍵かけてましたとかはないと思うが……。

 試しに横に引いて──


 ガラガラ。


「………」


 ……まさかの引き戸だった。見た目の重々しさに反して軽すぎる音とともに、扉が開く。


 そしてその奥には──


「───っ!!」


 その瞬間感じたのは、シャロを圧倒的に上回る『死の気配』。


 紅と黒のドレスを身にまとい、銀にひと房の金を織り交ぜた腰まで届く長い髪。緋色の、縦に裂けた瞳孔が特徴的な瞳が、上段から下界を見下ろす。


 そして、その少女はひらりと玉座から飛び降り、


「ようこそ、吸血鬼の城へ。わたしは、今は無き吸血鬼の国の姫、セレナイト・スカーレット。──セレナとでもお呼びください」


 そう言いながらその少女、セレナは優雅に一礼した。




【吸血姫 セレナイト・スカーレット】 レベル2135


 種族:吸血鬼(真祖)


 状態:弱体化


 HP:203276

 SP:102376

 MP:259435

 筋力:81376

 速度:90167

 防御:78596

 魔攻:263297

 魔防:247964


 隠しステータス:貧乳


 称号:『■■■』(データ削除済み)

    『継承者』 

    『魔導の極み』

    『夜闇の王』


フリティブ辞典

【真祖】吸血鬼の純血のこと。

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