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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
38章.神殿再建(3)ランデル攻防戦(1)

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974/1032

38-01.カリオ神殿跡地復活(1)

挿絵(By みてみん)


異世界側、

”37-34.[異世界側のお話です]妻の形見を持たせる(11)形見の正体”

の続きです。


----


突如、カリオ神殿跡地が復活したという話を持ってイグニスがやってきた。

そこにさらにもう一人、重要人物が現れる。

何かが起きたときだけ現れる人物だ。

「アイス、イグニスは来た?」


声の主はシートだ。


アイスは答える。

「わらわ(イグニス)なら来てるよ。気配でわからないのか?」


それを聞いてシートは少し困る。

”気配でわからないのか”と言われても、

シートの感覚ではイグニスは気配察知での区別が難しい。

「私にはわかりにくいのよ」


「俺はシートの方がわかりにくいよ」


アイスがそう答えるのを聞いて、シートは、普通はそう感じるのだろうと思う。


※イグニスさんとシートさんは、普通の人間とは異なるので、気配の感じ方も

 普通の人間と異なります。

 シートさんは、シートさんにとってはイグニスさんの気配はわかりにくいと

 言っています。イグニスさんも、気配は弱めですが、アイスさんたちは

 慣れているのでよく気づきます。


……………………


アイスとシートは食堂に向かう。

イグニスの気配は、まだ食堂から移動していない。

おそらく、まだ菓子を食い荒らしているはずだ。

※イグニスさんも町の人たちからは重要人物だと認識されているので、

 菓子を食べまくって無言で去っても、さほど大きな問題にはなりません。


そこに、慌ててリーディアとリナがやって来る。

2人は早速ランデル行きの準備を進めていたが、食堂に戻ってきた。

シートが来るのを待っていたのだ。


「シート、きっと来ると思っていた」


リーディアが出発する前に来るとは思っていたが、同時に遅れる可能性もあると考えていた。

間に合って良かった。


そのとき、エスティアとルルとテーラはイグニスと共に食堂に居た。

そこに、リーディアとリナとアイスと共にシートがやってきた。


エスティアは、シートを見るとこう言う。

「ああ、神殿の話ならイグニスに聞いたけど」

※エスティアさんは、イグニスさんと一緒に菓子を食べていました。


イグニスがここに居るのだから、それはシートもわかっている。

「でも、これはまだなんじゃない?」


「これ?」

「何が起きた?」

エスティアは、”これ”が何を指すのかわからなかったが、

リーディアは”これ”が何かわかっているようなので、話を聞くことにする。


「大芋畑が大騒ぎよ」


「?……あ!」

エスティアは理解した。


神殿が復活したとき大芋畑が大騒ぎになる理由。そんなものが存在する。


大芋の育ちが悪くなったから、あんなに大きな畑を作ったのだ。

その状況で神殿が復活して大芋の成長が戻ったら、今度は地中で絡み合って収穫に莫大な手間がかかる。


「もう、力が戻って、そんなに広まってるってこと?」


エスティアは、神殿が復活して、徐々に元の状態に戻っていくことをイメージしていた。

だが、シートの回答は違った。

「私は以前よりずっと強まったように感じる」


「以前って……私たちがシートの家で暮らしていた頃よりも?」

「ええ。強くなってる」


それを聞くとテーラの表情が沈んだように見えた。

力が強くなるとテーラにとって都合が悪い……その理由はエスティアにはわからなかった。


ところが、そんなことはお構いなしにアイスが話しかける。

「なあ、わらわ、シートが前より神殿が強くなったって言ってるけど

 どうだった?」


「わらわのことを、わらわと呼ぶなと言っておるであろう!」

「俺はどっちでもいいよ。そんなことより、神殿が強いって本当か?」

「良くないわ、このたわけが!

 そうじゃな、だいぶ強まっておる」


リナは、イグニスが怒りつつもアイスの質問には答えてることに感心する。


「なんで強くなるんだ?」


「そんなの決まっておろうが、【一番大きな竜】が、

 わらわの夫になるために戻ってくるのじゃ」


神殿の力が強まった。

その理由は、イグニスの夫=ディアガルドの夫になるために戻って来るから。

とイグニスは言っているようだが、アイスにはよく意味が分からなかった。


神殿が竜の巣だと言う話は聞いたが、ディアガルド接触する以前に

力が強くなったのであれば、ディアガルド以外の竜と接触したのではないかと考えた。


「へんだな。神殿は竜の巣なんだろ?

 ディアガルドが何もしてないのに強くなったなら、他の竜と……」


一瞬、皆が動きを止めた。

アイスが、言ってはいけないことを言ってしまったのだ。


「おい、きさま、今なんと言った!」


「あ、俺なんか間違ったか?

 神殿が竜の巣で、イグニスが何もしてないのに強くなったなら、

 ”ディアガルド以外の竜が関係あるんじゃないか?”って思ったんだ」


「あの女か!」

イグニスがそう言うと即、シートが答える。

「関係無いわ。グリアノスは何もしてない」


「では、なんで強くなったのじゃ?」

「知らないわよ」


シートとイグニスの会話という珍しいシーンに、周囲の女たちは動きを止めたまま、話の行く末を見守った。


……ところが!

よりによって、アイスがそれを指摘してしまう。


「あのさ、お前ら2人話するの珍しいな」


「したくてしてるわけじゃないわ」

「わらわも、こやつと話などしとうないわ!」


※イグニスはディアガルドの分身、シートはグリアノスが作った人間型のダミー。

 協力とか会話はしたくないのです。


リナとリーディアとエスティアの気持ちが、どよーんと沈む。

敢えて触れずに様子を見ようと思っていたのに、アイスが指摘して話が止まってしまったのだ。


何もしていないのに神殿の力が強まるのは、アイスの言う通りおかしなことかもしれない。

そして、それをイグニスから聞き出そうとし、シートまで巻き込んだ。


これはそう簡単にできることではない。

【ディアガルド】と【グリアノス】という最も身近で影響力の大きな竜の代弁者同士のやりとりが聞ける……はずだったのに……

その奇跡の流れに注目していたのに、アイスが自分でその流れを断ち切ってしまったのだ。


ところが、なぜかテーラがとことこと歩いてイグニスの横に立つと、肩をバンバンと2回叩いた。

「なんじゃ?」

イグニスがそう言うと、テーラはこう答える。

「トルテラは、私が一番好きなの」


「はて? 今の話はお前と何か関係があったか?」

イグニスがそう言うと、テーラは再度バンバンと肩を叩いてこう言う。

「トルテラは、私が一番好きなの」


イグニスは少し考えたが意味が分からなかった。

「この娘は何を言うておる?」

イグニスがシートに問う。

「さあ?」

シートも、意味が分からず、答えられない。


「だって、ディアガルドも、グリアノスも関係無いのに、神殿の力が強まったなら、

 それは私が好きだからでしょ」


イグニスは、普段人間の言うことにたいした価値は無いと思っているので気にもならないが、何故か今は気になる。

仕方が無いので、シートに説明させる。


「人間の言葉はわらわには難しいときがある、おまえ、説明せい」

「私は人間の言葉はわかるんだけど、この子の話は……」


「お前の娘じゃろ」

「わからないものはわからないのよ!」


「なぜ隠す!」

「隠したんじゃなくて、わからないって言ってるの!」


「テーラ、説明して。どういうことなの?」


……………………

……………………


リナとリーディアとエスティアの心の中に、小さな希望が生まれた。

シートとイグニスは、思っていたほどには仲が悪いわけでは無いのかもしれない。


……が、テーラの言うことは(いつも通り)意味不明で、根拠は、リーディアとルルの毛だった。


========


「なんだろう?」

「トルテラと同じさわり心地」

「……こんなの聞いたことが無い」

「シートも知らないか」

「これ、人間の毛では無い……?」

例の毛の話だ。


リーディアの脇腹を何度も触って確認する。

次はルルだが、変なところに生えているので、少々触り辛い。


「ルルは、よりによって、ずいぶん触りにくいところに生やしたわね……」

シートが苦情と言うか、愚痴をこぼす。


が、ルルからしたらたまったものでは無い。

「私が望んでそうしたわけじゃないから!!!」


ルルが珍しく、かなり憤慨しているが、構わず触る。

そして、触れば即わかる。

この触感はトルテラの尻尾の毛と同じだ。


この状況から考えられることとは何か?


リーディアとルルに毛が生えて、テーラには生えていない。

この差は何だろう?と考え込む。


トルテラが戻ることが確定したタイミングで、呪いの女たちの体の一部に、竜の毛が生えても不思議はない。だが、生えた女と生えない女の差は何なのか?


※シートさんは、”おっぱいの大きい順に毛が生えるのではないか”

 と考えられていることは、この時点で既に聞いていますが、

 あんまり納得していないようですね。


……………………


シートが悩んでいる間にも、こんなやり取りが起きていた。


「なあ、エスティアは、あの毛、まだ生えてないのか?」

「やめてくれる? その言い方」

「もう一度調べてみよう。もう生えたかもしれないだろ」

「そんなに一日何度も調べないで!!」

※エスティアさんはかなり嫌がってます。


「みんなも早く毛を生やしてー」

ルルは天に祈るような気持だった。


リーディアは、その毛が自分に生えていることを誇らしく思っているようだが、ルルは生えるのはともかくとして場所が悪かった。下腹部、パンツに隠れる場所に生えてしまったのだ。

そのため、何度も何度も触られて、心の底からうんざりしていた。


「もうパンツの中調べられるの嫌なの、トルテラ早く帰ってきてーーー!!」

※意外にも、この声は、ちゃんとおっさんに届きます。


……………………

……………………


かなりひどい状況ではあったが、なんとか解決に向かいつつある。


人間の世界にできる神殿跡地は”竜の巣”であり、それが強まったと言うのはトルテラ(一番大きな竜)が、女の竜と接触した可能性が高いことを示すが、ディアガルドとグリアノス以外の第三の竜が存在すると都合が悪いので、神殿の力が強くなっているのは”人間の女に竜の毛が生えたから”という理由で決着した。

※大事なのは納得する理由の存在なので事実がどうであるかは重要では無いのです。


だが、まだ問題が残っている。


「あとは……」

「そうだな」

「ランデル……カタイヤね……」


シートはジョシュアの話も知っており、トルテラがランデルに出現する可能性が高いことは知っている。

だが、トルテラがランデルに現れるのは少々妙なことに思える。


「カリオ神殿跡地が復活して、トルテラが戻ってくるのは納得できるけど、

 ランデルに現れる……どうしてかしら?」


現在の状況はシートの知る未来とは全く変わっているが、トルテラ基本トート森に現れる。

ランデルに現れる方法は無いように思える。


トルテラが異世界と行き来するための施設がオーテル神殿跡地であり、一番大きな竜の神殿はカリオ神殿。

2つの神殿は近い位置にあり、共にトート森にある。


カリオ神殿跡地が復活して、ランデルに現れる理由が分からない。


【大きな竜・ガスパール】とカタイヤが何を話したのか。

それがカギになりそうだ。

【大きな竜・ガスパール】はおそらくカタイヤと話をしている。

結果として、ランデルに現れる。


その可能性が高い。


そうなった経緯は明確になっていない。


だが、トルテラがランデルに行くのはわかる。ジョシュアが石の記憶で読んでいるし、

生前のテリオスが、ランデルの族長カタイヤに手紙を送っている。


その中にトルテラが会いに行くかもしれないと書かれているのだ。


さらに、ラハイテスの名は、ラハイテスが生まれたときに付けられたもので、テリオスが手紙を出したのは、それからだいぶ後のことだ。


それを考えれば、カタイヤはトルテラが会いに行くことをラハイテスが生まれたときには既に知っていたと考えるのが妥当だ。

または、おびき寄せるために、娘にラハイテスの名を与えた。


ラハは継承権があることを意味し、ラハイテスの名核はイシスと言う。

イシスは仕えるものの意味を持ち、ラハとイシスを両方持ったラハイテスの名は、通常存在できない名前だった。

継承権を持つ娘でありながらトルテラに仕えるために存在する娘、つまり、神に捧げられた娘であれば、名前の矛盾は解決する。

それを考えると、カタイヤはトルテラがランデルに来ることを知っていたことになる。


その情報源はおそらく【大きな竜・ガスパール】。

カタイヤは【大きな竜・ガスパール】と話をした可能性が極めて高い。


シートが知る未来、つまりグリアノスが知る未来と現状に大きな乖離が生まれたのには、皮肉にも、シートの夫であり、ルルとテーラの父親であるテリオスの行動が大きく影響している。


これは、シートの時系列では比較的最近知ったことになるが、テリオスは【大きな竜・ガスパール】と話をしている。

【大きな竜・ガスパール】は、性別を気にしており、テリオスが男性だと告げると、【大きな竜・ガスパール】は去っていった。

【大きな竜・ガスパール】は会話が可能な人間の女を探していた。


そして、ある時期から、【大きな竜・ガスパール】は人間の世界を徘徊しなくなった。

おそらく目的が達成されたからと考えるのが妥当だ。


おそらくは会話可能な人間の女が発見できた。

それが、カタイヤであった可能性が高い。


ラハイテスの名付けは、そう考えないと納得できないものだ。

そして、トルテラがランデルに出現することは、石の記憶でジョシュアが読んでいる。

ジョシュアが嘘を言っていなければ、おそらく確実に訪れる未来。


……………………


「妾に聞いたのか?」


「ええ。思い当たる理由はある?」


シートはなるべく心を落ち着けてイグニスに話しかけた。

だが、イグニスの返事はこれだった。

「妾が知るか、このたわけが!」


シートは一瞬にして沸騰した。

「だから、話したくないのよ!! コレとは!!」

※人間の皆さんは、だいたいイグニスが何を言っても気にしないのですが、

 シートさんは、凄く気になるようで、すぐに腹を立てます。


リナはそのやり取りを聞いて、思い出していた。

イグニスとシートのどちらかに聞こうと思っていたが、

今なら2人とも揃っているので都合が良い。


「そうだ、その言葉使い……ヨコハマに、イグニスと同じ言葉づかいで

 ディアガルドそっくりな生き物が居た。

 なぜイグニスと同じ言葉を話す? プルエクサとは全然違う話し方だった。

 ディアガルドがヨコハマに行くのか?」


それに対するイグニスの答えはシンプルだった。

「妾は行かぬ」


イグニスは行くつもりはないようだ。

今までの話からも、イグニス(ディアガルド)が行くことにはなっていない。

話し方も声も似ているが、別の存在なのだ。


そこにシートが反応する。

「それはベスね。ベスを見たの?」


「ああ。石の記憶で……イグニスと全く同じ話し方だった。

 声も同じだった。

 見た目はディアガルドを小さくしたような姿だった」


「たぶん……いえ、間違いなくベスよ、それは」


「知ってるのか?」


「ええ。グライアスは転移する竜では無いから、ヨコハマに行けないはずなのよ。

 どうやったのかはわからないけど、ヨコハマに行くことはできた。

 でも、体が無いから現地の人間と話ができない。

 そこで、ベスと呼ばれるダミーを使った。

 だから、グライアスが行った先にはベスが居るはず」


ダミーと呼ばれる謎の存在。イグニスと同じだ。

イグニスもディアガルドの作ったダミー。

見た目は異なるが、あの姿のダミーが存在するのだ。


「ああ、ダミーは、あの声で、あの話し方なのか」

「そういうわけではないのだけれど……」

※シートさん本人もダミーですし、ダミーが何なのかは、

 シートさん自身もあまり知りません。

 本人が知りたいと思っていないというのが主な理由です。


エスティアとリナは顔を見合わせる。

ダミーは全てあの話し方で、見た目を竜を小さくした姿であの話し方のダミーを作れるのであれば、すべて説明がつくのだ。


ディアガルドが行くわけではなく、同じ話し方をするダミーがヨコハマに存在する。

おそらく中身はグライアス。トルテラがオーテルと呼んでいる竜だ。


やはり、オーテルと接触することに成功していたのだ。

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