37-31.[異世界側のお話です]妻の形見を持たせる(8) あの場面の再現
補足
グライアス=オーテル。オーテルはベスの中の人です。
偽ジョシュアの中身がグライアスなので、実は、この3人(リナ、リーディア、エスティア)も
グライアスと話をしたことがあります。
グライアスさんは異世界側では、まだ生まれていません。未来の世界から干渉してきました。
(偽ジョシュアは、12-5.偽物のジョシュア あたりを参照)
なお、異世界側には犬は実在せず、想像上の動物です。竜を小さくしたような生き物です。
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翌日、朝食で顔を合わせるなりいきなり来る。
エスティアは落ち着いてから自分で言いだそうと思っていたが先手を打たれた。
「エスティア、覚悟は決まったか」
「ええ」
「じゃあ、朝食後すぐにでも」
おそらく、こうなるであろうことはわかっていた。
リナとリーディアは、この状況を予想していた。
この場では多くを語らない。ここで話した内容はあっという間に外に漏れる。
むしろ、アイスが誤解の種を振りまいて歩くかもしれない。
※朝食と夕食は全員で集まるようにしています。
……………………
3人は朝食後、リナが石を読む間使っている部屋に集まる。
リーディアがリナに言う。
「予想通りだったな」
”エスティアが参加することはわかっていた”という意味だ。
結局、はじめからエスティアに時間をくれたという意味合いが強かったのだ。
それはエスティアも理解している。
「昨日はごめんなさい」
「あれは仕方がない」
鎧の視点で見ると、ああなってしまうのだ。
昨日の時点では混乱していただけで、結局エスティアは参加する。
リナとリーディアは、そう考えていた。
「エスティアは参加すると思っていた」
「ええ。中途半端に知ってると気になるし……私は最期を見届ける約束で譲り受けたから」
「”最期を見届ける”……か」
「ルルもそんなことを言っていたな」
「そうね」
※ルルの場合は、森に来る竜の動向を見届けるというのが
父親の遺言でもあり、それが自分の役割であると認識しています。
……………………
「今日の作戦は?」
エスティアは、おそらく今日やることは既に考えられているだろうと思って聞いただけだった。
「ああ、実は昨晩、新たな情報を得た」
これにリナが反応する。
「新たな情報があったのか?」
むしろ、エスティアはそのことに驚く。
エスティアは、新情報を得るのはリナだと思っていた。
最後の一人はリナなので、話をするのが普通だ。
「なんで、リーディアが??」
リーディアは無駄にイイ顔をして言う。
「ヨコハマには、【ベス】というダミーが存在する」
この反応からすると、”リーディアから間接的に話を聞いても意味が分かるはず”
……とでも思っているのだろう。
”ダミー”、この言葉は聞いたことがある。
「ダミーって確か、イグニスがそうじゃなかった?
竜が作るやつよね?」
「そのダミーだ」
「どこから来た情報?」
「誰から聞いたかは秘密だ」
秘密と言うが、ダミーに関する情報で、
この3人が知らない情報を持っている相手は限られる。
リナは、エスティアとリーディアのやりとりを見ていて、
この時点で誰の情報かは見当が付いた。おそらくいつも通りシートだろう。
その人物の名前をエスティアに教えても問題がないのだが、見張りに知られると面倒なことになる可能性が高いので口に出さないだけだ。
※そのとおりです。
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一方でエスティアは、情報の出どころよりも、それが何を意味するかが気になった。
エスティアは少し思い返すとすぐに思い出した。
エスティアの知る範囲でもダミーはいくつか存在する。
ディアガルドが作ったダミーはイグニスだけ。
ディアガルドとは別に、少なくとも2つ以上のダミーを作った竜が存在する。
だが、ヨコハマに送る方法があるか?
ヨコハマにもダミーを作るものが存在するのか?
「どうしてダミーがヨコハマに?」
「わからないが、グライアスが使えるダミーが存在する」
「わざわざヨコハマにあることを教えてくれたということは、
ダミーが手伝ってくれるってこと?」
「簡単に言うと恐らくそうだ」
「おそらくって……」
「正確にはわからない。
ただし、ダミーはトルテラをこの世界に呼ぶために作られた。
それがヨコハマにあるなら、トルテラをこの世界に送り込むために動いているはずだ」
ヨコハマに存在していて、おそらくそれが正しく使われた結果、トルテラがこの世界に現れた可能性が高い。
リナは石の記憶の中で、ダミーらしきものを見たというのは思い当たらない。
そうなると、むしろ怪しい。
「なるほど。だとしたら、今までそのダミーを
石の記憶で見ていない方が怪しく感じるな」
トルテラをこの世界に連れてくることが目的であれば、
石の記憶で見てる可能性が高いように思ったのだ。
それらしき人物は居なかった……と思っていたが、そこで思いついた。
鎧と神殿の話をするとき登場する2人の女。
あの女の正体がダミーなのではないだろうか?
そう考える。
だとすれば、リーディアも見ている。
既に見ているとでも言い出すのだろうか?
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リーディアは言う。
「仕方ないだろう。姿すら知らないのだから」
「特徴があるのか」
「【一番大きな竜】を連れ戻すために、
【グライアス】をそのまま小さくしたダミーを作ったと言っていた」
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グライアスと聞いて驚く。
エスティアはダミーというのは、人間の姿をしているが人間ではない何かだと思っていた。
「人間の姿ではないの?」
リナも同じ印象を持っていた。
「ああ、竜を小さくしたものだから人間の姿ではないな。
グライアスはそのダミーを使ってヨコハマで何かをするはずだと」
「何かって……」
人間の姿をしていれば意味が分かる。
イグニスのように人間の姿をしていれば、人間と接触するのに便利だからだ。
だが、グライアスをそのまま小さくした姿では、人間と接触するのは難しいのではないかとエスティアは考えた。
「プルエクサの知る歴史では、グリアノスは竜を小さくした姿のダミーを作った。
竜を小さくしたダミーはベスと呼ばれていた」
「作ったのはグリアノスなのね。
だったら、何のために作ったのか、テーラに聞けばわかるのかしら?」
「おそらく無理だ」
「え? どうして?」
「まだ現在のグリアノスは作っていない」
”まだ作っていない”。この言い方だと、もっと後の時代に作られる。
「じゃあ、もっと未来の話ってことね」
「察しが良いな」
「どうして、そんなダミーを作ったのかしら?」
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何かを考えている風のリナが口を開く。
「そういえば、石の記憶で【ディアガルド】を小さくしたような生き物。
犬のようなものを見た」
一瞬だったが、あれが、そのダミーだった可能性がありそうだ。
リナはあの時、なぜあれが見えたのか疑問に思った。
あれが、そのダミーであれば納得できるのだ。
「犬のような生き物?」
「ああ、【ディアガルド】と姿はとてもよく似ていたと思う。
人間の言葉を話すようだった。トルテラはその生き物を娘だと思っていた」
「だったら、それじゃない?」
ディアガルドとグリアノスは見た目がそっくりだ。
話をしてトルテラが娘だと思っているとなれば、ほぼ確実だ。
「間違いないだろう」
ダミーの情報が無かったから気付かなかっただけで、既にリナはそのダミーを見ていた。
そのダミーは、トルテラと接触することに成功したのだ。
「石を読んで探そう」
「石の記憶からベスを探して読めばよいのか?」
「それが、もし、ヨコハマの女とベスが一緒に居る場面が見えたとしたら、
ヨコハマの女の体を使ってベスと話ができるのではないかと思ってな」
エスティアは疑問に思う。
グリアノスのようにトルテラと会話ができても、他の人間と会話ができない可能性があると思ったのだ。
「トルテラ以外の人間とも話ができるの?」
「話をしているところは見なかった。
だが、ヨコハマの女と話せるのではないかと思う」
「じゃあ、話ができるかを確認する必要があるのね」
「だが、話ができるとしたら、そのとき何を話すか決めておかないと」
「見えるかどうかもわからないのに?」
「いきなり決めるの?」
「何度も試すのはダメなの?」
「それができたら都合が良いのだが、おそらく無理なのではないかと思っている」
「?」
「偽ジョシュアを覚えているか?」
もちろん覚えている。
「ええ」
「偽ジョシュアは何度も来なかった」
「一度だけね。何日か滞在したけど。……それが?」
「グライアスがトルテラに会いたかったとしたら、
何度もできるなら何度も来たのではないか?」
「ええ。でも、目的が果たされないと、リナに記憶は生まれないんじゃないかしら。
リナに記憶が生まれるまでは、何度でも話ができるかもしれない」
「その可能性もある」
とはいえ、取り返しのつかないことになるかもしれない。
「他に何か案はあるの?」
「まずは鎧の記憶が、昨日見えたあれ以外に無いか確認しておきたい」
「鎧の記憶を見るの?」
「エスティアが戻った後もリーディアと2人で相談していたんだ。
鎧の記憶が他にもあるなら、それも読んでおいた方が良いだろうと」
「一回しか読んでないから、他にも読めるかもしれないってことね。
ダミーについての情報は(鎧の記憶には)無いわよね」
「おそらくないだろうな」
トルテラをこの世界に呼び出すのは、竜のガスパールの計画だ。
鎧は、その計画については一切触れなかった。
鎧が何を思ってこの世界に残り、何を思ってトルテラを呼び出そうとしているかに終始している。
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リナとリーディアは、昨日のうちに既に何をすべきかは相談していた。
トルテラは【妻の形見】を手にしたとき戻ってくる。
少なくとも、鎧はそう思っている。
そこまではわかるが、その先がわからない。
何をすると【妻の形見】がトルテラの手に渡るのか。
だから、その先を調べようと思っていた。
そのあとに、ヨコハマにダミーがあるという話がリーディアにもたらされた。
石を使ってヨコハマの女と接触できることはあるが、接触できるタイミングはこちらからは選べないという致命的な問題がある。
石を使って接触できるか試してみることはできるが、その結果、ヨコハマの女の時間軸で、どのタイミングに接触するのかは選べない。
どちらを先に読むべきかと言えば、鎧の記憶だろう。
鎧の記憶には、鎧と神殿の話が出てこない。
もう既に伝わっているから鎧は気にしていないのか。
おそらく、鎧が気にする意味が無いのだろう。
「ヨコハマの女に形見を渡すよう伝えれば良いのか?」
「神殿を作った後である必要があると思うのだが」
神殿を作る前に形見を渡して、トルテラが戻ってきてしまうと困ったことになる。
「どうする?」
「まずは、鎧が他に何か見せてくれるか確認してみたい」
「そうね」
見ないことには始まらない。
先に鎧の記憶を再度確認することにする。
……………………
昨日と同じように鎧の上で石の記憶を読む。
……見える。が、内容は昨日と同じだ。
リナが最後の仕上げをする役で、結果としてはトルテラが妻の形見を受け取って戻ってくるようだ。
「昨日と全く同じ」
「この鎧は、この記憶しか見せることができないのか?」
2回試したが、同じだった。
鎧を使うと必ず同じ場面が見えるようだ。
「やはり、何度やっても同じだな」
見るたびに、鎧の気持ちが直接心に来るので3人はダメージが大きい。
「新たな情報はなさそうだな」
3人は、鎧の記憶を見るのは終わりにする。
……………………
トルテラの記憶が見えても、死を望んでいるようには見えないのだが、
鎧は死を望んでいる。鎧の死は、トルテラの死を意味する。
だが、それが逆に希望にもなる。
「トルテラは、すぐに死のうとは思っていないし、
すぐに死ねるとは思っていなかった」
まだやってないことがたくさんあるし、それが終わらないとトルテラは死ねないと思ってる。
この温度差は、人間の寿命と神様の時間の流れの関係だろうか?
「鎧が何かをしてくれるわけではないのか。
妻の形見のことくらい教えてくれそうなのに」
鎧は妻の形見を渡せば終わると思っているが、
妻の形見をどうやって渡すのかがわからない。
ヨコハマにベスというダミーが存在することはわかったが、石を読んでいきなりベスが見えて話ができたら、それはそれで困る。
「ベスが見えて、訊くことができるなら、妻の形見のことを聞きたい」
「効率的に進めないと、力を使いすぎると、今日も調査が終わらないかもしれない」
「でも、何が見えるかはわからないのだから、やるしかない」
「確かに、その通りだな」
「鎧の記憶を読む前と、読んだ後の今では私たちの気持ちも変わってるし」
「石から読めるものが変わる可能性が高い……か、確かにその通りだな」
「やるか?」
「やるしかないだろう」
リナも賛成だ。何しろ確実なことが無い。
……………………
今度は鎧無しで石を読む。何が見えるかは見えるまで分からない。
「それじゃ、はじめよう。
まずい場面が出てきたら、リナが読むのを止めてくれ」
誰かが読みたくないと思えば、記憶はそこで読めなくなることが多い。
さっそく読み始める。
……………………
が、読めたのは、鎧と神殿の話をする場面だが、以前と違う。
ヨコハマの女が話をしている場面が見えるはずなのに、話が始まらない。
「何も起きないのか?」
リナがそういうと、驚いたことに呪いの女が反応した。
『今何か聞こえた?』
「これは記憶ではないのか? 聞こえてるのか?」
『……ああ、もしかして、あなたが死神さん?』
また、反応した。話が通じているようだ。
だが、誰かと間違われているのか、あらかじめリナと話をすることを知っていたのか、
リナのことを死神という存在だと思っているようだ。
なぜ死神という存在だと思ったのかはよくわからない。
エスティアは死神とは呼ばれていなかったはずだ。
「死神? トルテラ(テラの神様)がそう言ってたのか?」
『本当に居たのね。死神さん。首の骨の話?』
首の骨!
おそらくトルテラに聞いていたのだろう。首の骨の話が分かるなら早い。
トルテラは誰かが接触してくる可能性は知っていたが、
それが誰だかはわからないから、中途半端な説明になってしまったのかもしれないと考える。
「首の骨で通じるのか。良かった。
神殿と鎧のことを伝えたい。これから私の言うことを口にしてほしい」
『この2人に伝えたいの?』
目の前に、2人の女が座っている。
リナはその2人に話を伝えたいわけではないのだが、この場面をすでに見ているから再現したい。
「実は理由はわからない。
石の記憶……首の骨の記憶で見た通りにしたい。
見たままの場面を再現したいんだ」
『首の骨の記憶が読めるの?
首の骨を樹海の神殿に持っていくだけではダメなの?』
首の骨を樹海の神殿に持っていこうとしているようだ。
色々話したいことはあるが時間が無い。
「すまないが、私は集中できる時間が限られている。
これから神殿と鎧の話をする。
私の話をそのまま口にしてほしい」
『いいわ。死神さんの言うことを聞いてあげる』
「ありがとう。今から言うぞ」
急激に集中力が上がる。何度も練習した。
あの言葉を確実に伝える。
……………………
「鎧は既に全て集まっている。
でも、まだやることが残っているから消えない」
「神様がいる場所が神殿だ。神殿があると子供が居る未来が確定する」
「森には世界で一番大きな神殿がある。未来を繋ぐために……」
「…………」
……………………
何かが切れた……、今、呪いの女の体とリナの心が直接繋がっていた。
体を乗っ取って、リナがしゃべった。
そう感じた。
まだ石の記憶の中に居るように感じる。
「まだ話はできるか?」
『子供の話も、神様の話も本当なのね』
何を言っているのだろうか?
「トルテラ(テラの神様)と娘はどこにいる? ベスは居ないのか?」
『生まれるのは娘なのね……』
ここでやっと気づいた。
時代が違う。これは娘が生まれるより前の時代だ。
この歳で子供を産んで、あの状況になるのだろうか?
年齢ははっきりとはわからないが、若くはないことがわかる。
想定していたのと全く違うが、樹海の神殿は必要になるはずだ。
全てが終わった後、トルテラを送り出してくれるよう頼んでおく。
「樹海に神殿を作って、あなたの願いが叶った後、
トルテラ(テラの神様)を譲って欲しい」
『ええ。神殿は作る。願いが叶ったら、送り出さなきゃいけないのでしょ?
トルテラ(テラの神様)って言う神様になるのね。森の神様だって聞いた』
森の神様になる。そんなことまで話してあるのだ。
「ああ、こっちには大きな森がある」
『そう。願いが叶った後、神様はどこかに去ってしまうのね』
「頼む」
『ええ。私は神様を作るわ。神様はきっと……』
……………………
……………………
いきなり途切れた。
最後、何を言おうとしていたのだろうか?
そう考えるが、聞かなくてもわかる。神様はきっと、この世界にやってくる。
神様を待つ人たちが居るから。
ヨコハマには神様を待つ人たちが多くない。
理由はわからないが、リナの知る限り、トルテラはヨコハマでは
神様であることを知る人は少ない。うまく人間に化けている。
「この石で横浜の呪いの女と話ができるのか!」
リナは鎧で空に上がらないと話はできないと思っていた。
空に上がらずに話ができるとしたら、なぜエスティアは空に上がったのか……
思い当たることはある。北ハスクバハルとの停戦協定だ。
あっちが目的だったのかもしれない。
「凄いな、感動だ。私はこの場に立ち会えたことを生涯忘れない!!」
そんなことを言うと、リーディアが大泣きする。
リーディアは見守るだけで、一言も発せなかった。
それでも、決定的な場面が見えた。
リーディアは、ヨコハマの女と会話する場面をリアルタイムで見る機会は無いと思っていたのだ。
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エスティアは疑問に思ったことを訊く。
「死神さんってなんだと思う?」
「トルテラが誰かが話しかけてくる可能性を話していたか、
もしかしたら、私たち以外にも、誰かが接触したんじゃないか?」
エスティアも、リナが接触する以前に誰かが接触した可能性があると考える。
「グライアス?」
神様が生まれる前だったように思えた。
トルテラも娘も居ないとすると、接触する可能性があるのはグライアスではないだろうか。
「おそらくそうなのだろう。神様が生まれる前だった」
「今の、神様が生まれる前なの?」
「どういうことだ? 時間が戻るのか?
時間が戻ったから神殿が無くなった?」
エスティアは、ヨコハマの呪いの女は、
”神様はこれから生まれる。ヨコハマの女が神様を作る”
と言っていたように聞こえた。
だが、エスティアがヨコハマの女と話した時には神殿を作ると言っていた。
でも、今の話でも神殿を作ると言っていた。どういうことだろうか?
時間に関してはよくわからない。
「妻の形見がもらえなかったからやり直すのかしら」
神殿が無くなったのは時間を戻したから。
確かに、それでも辻褄が合うのかもしれない。
「ああ、神様が生まれる前に戻ると神殿が消えるのか?」
リナはそう答えたが、答えがまとまらない。
むしろ、謎が倍増した。
神様が存在する以前の時間に戻れるのだろうか?
「…………」
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大泣きしていたリーディアが復帰する。
「リナ、新たな記憶は生まれたか?」
「ああ、記憶か……」
今のでリナの役目が終わったのであれば記憶が生まれるはずだ。
よく思い出してみる……が無さそうだ。
「いや、無さそうだな」
「なら、これで終わりではない」
その通り。ヨコハマの女と話せたのは凄いが、その内容の解析より、
まだやらなければならないことがある。
「たぶん、ダミーも関係あるんでしょ」
「さっきの話では妻の形見に繋がりそうな情報は無かったな」
「ああ。ただ、1つ気付いたことがある。
話をするとき、手も動かせた」
リナが話した言葉を通訳してくれるだけでなく、体も動かせるのだ。
「体も動かせたわよね?」
「ああ、確かに、手は動かせたような気がする」
「リナの意思で動くこともできるということか」
「話をするので精いっぱいだったから、どこまで動けるのかはわからない。
動かせるのはさっきの時間で精いっぱいだと思う」
「短時間話をできるだけで、自由に歩き回ることはできない可能性が高いということね」
3人は一区切りついたような気がして安心したら腹が減った。
おやつタイムにする。食欲が無くて3人ともにろくに朝食を食べていなかったのだ。
……………………
……………………
「今日終わったら、すぐに出発するの?」
リーディアは一刻も早くランデルに向かわなければならない。
リナもランデルに行く用事がある。
「出発は急いでも明日だろう」
「神殿ができればディアガルドたちがこっちの世界に来られるようになるでしょ。
そうしたら、ハスクバハルのランデル攻めは中止にならない?」
「もっと前だったら中止になる可能性もあったが、今は既に進軍準備が進んでいる。
この段階で中止するのはどうだろうな?」
「中止できないの?」
「ランデル攻めを行う部隊と、ハスクバハルまで距離がある。
中止を決める前に軍が動き出す可能性がある」
「そっか。中止を決める人が遠くにいるからか」
「リーディアがハスクバハルの軍の指揮官だったら、どうすれば中止する?」
「私が実戦部隊の指揮官であれば、ランデルに竜が出れば別だが、
城壁下に現れたという噂だけで中止はできないな」
「トルテラがランデルに行くなら、私も行かないと」
戦闘が始まったらランデルには行けない。
戦闘開始前に行く必要がある。
リナの記憶が生まれていないのであれば、まだ何かが必要なのだろう。
さっきの神殿の話で、何か状況が変化すれば、ランデル侵攻が中止になるかもしれない。
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■解説
洋子さんが首の骨を持って樹海に行くシーンですが、実際には、今回のやり取りが存在しています。
(これが正。記憶に出てこないのは思い出せていないだけです)
洋子さんは、死神さんと話をして、栫井(トルテラ)の言っていたことが真実だと思い、樹海に行っています。
栫井のところにきた死神と、洋子さんと話をした死神さんは別人ですが、洋子さんにとっては同一人物かどうかは重要ではありません。
何者かが直接頭の中で話しかけてきて、神様の話をするところが重要です。
洋子さんは、神様を作り出すのは良くないことだと思っていますが、同時に、神様を作らなければならないのだという自分の使命を認識する場面でもあります。




