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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
37章.神殿再建(2)

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37-28.[異世界側のお話です]妻の形見を持たせる(5)

挿絵(By みてみん)


神様をいつまでも手元に置いておくことはできない。

いつかは手放さなければならない。

とはいえ、トルテラは戻ってきてすぐに去るわけではない。

自分たちが許可を出すまでトルテラは死ぬことができないからだ。

つまり、いつかは死ぬ許可を出すことを意味するのだが、

そのタイミングは自分たちである程度選べる……選ぶ余地が多少なりともある。

だから、安心して呼び戻すことに専念できる。


今まで、トルテラが戻ってきても、どれだけの期間、一緒にいてくれるかがわからないという不安があったが、それがある程度取り払われたので、ヨコハマの女に鎧と神殿の話をするシーンが読めるのではないかと思った……が、さらに何度か試すが、ダルガンイストと戦った時の記憶しか読めなかった。


もう何度も試しているのに、見えるのは同じ記憶ばかり。


”このまま繰り返しても前には進めない”

そう考え始める。


「同じ場面ばかりだな……

 ダルガンイスト戦が読めるようになったのはありがたいが、

 他の場面が読めなくなった。これはこれで困る」


リーディアは、この場面ばかりが読めることに心当たりがある。


----


エスティアは、この状況を予想が外れたように感じる。


「変ね、この石がトルテラが帰るためのヒントを

 見せたがっているわけではないのかしら?」


エスティアは、石が読ませたい記憶を読ませている可能性が高く、

この石の現在の目的は、ヨコハマの女を操って、鎧と神殿の話を

させることだとばかり思っていた。


リナがヨコハマの女に鎧と神殿の話をしようとしたシーンが見えたのだから、あれを再現する方法がわかるのではないかと思っていたのだ。

そう簡単には行かないのが、この石の性質でもあるのだが。


「ヨコハマの場面が見えるはずだと思ったのに」


リナもそう思っていたが、当てが外れた。

「どうやら、読めないようだな」


リナがヨコハマの女に何かを伝えることができるのであれば、ヨコハマの女のいる様子が見えるはず。

そう考えていたが、読めなかった。


「”石が伝えたいのは別のこと”なのかしら?」

エスティアは、思考を口にしただけ、つまり独り言だったが、

リナはその言葉に反応する。


”石が伝えたいのは別のこと”そうかもしれない。

「同じ場面が何度も見えるなら、あの場面に何かヒントがある可能性はないか?」


石が伝えたいのは、ヨコハマの女の場面では無く、今日、何度も読めているダルガンイスト戦の方にあるのではないかと考えてみる。


----


「ダルガンイスト戦が見えるのには理由があって、

 あの中に、私たちが気付いていない何かがあるのかもしれない。

 そういうことだな?」


リーディアは、そう言ったが、既にその可能性は考えた。

だが、あの場面にヒントがあるわけでは無く、読むべき場面を読むことに失敗しているだけ、リーディアがあの場面を読んでいるように感じていた。

つまり、自分が妨害している可能性があると感じていた。


「私もそれは考えてみた。だが、違うように感じている。

 私がいるからあの場面が見えてしまうのかもしれない。

 私は勇者の鎧を授かって嬉しかった。その結果があの場面なのだ。

 私が抜けた方が何か意味のあるものが見えるようになるかもしれない」


リーディアが抜けた結果、すんなり目的の景色が見えたら嫌ではあるが、

目的がある。邪魔になるくらいなら抜けた方が良い。


----


リナは、リーディアが邪魔なのではなく、何かが足りていないように感じていた。

だが、今のリーディアの話で思いついた。

思いつかない方がおかしかったようにも感じる。


「リーディアの問題でも、石の問題でも無くて、条件が揃っていないのではないか?」

「フラグが立っていないという話か?」

「いや、リーディアは”鎧を授かって嬉しかった”と言った」

リーディアはピンときた。良くないフラグを立てたのかもしれない。

「それを言うとまずかったのか?」


リナは、リーディアが何を気にしているかはよく知っている。

「違うんだ。その言葉がヒントになった。

 ……そうだな、エスティアの時は、鎧が動いたよな?」


「ええ、動いた」


エスティアとリーディアには、リナが何を言おうとしているのかがよくわからなかった。


「鎧と関係があるんじゃないか?」

そう言うと、リナが見張りに指示を出す。

「大鎧の上半身を持ってきてくれるか?」


……………………


鎧が運ばれてくるまでの間、エスティアとリーディアは、リナが何を考えたのかを聞く。

リナは何かに気付いたのだ。


リナは思い当たることを説明する。

「エスティアの時は、鎧が動いたからよく目立った。

 だが、よく考えると記憶が生まれる時、大鎧の一部が目撃されている」


「私の時以外にも?」


「アイスの時には、兜が出てきている」

「ああ、そうね」

「ルルの話でも、金属片が出現した可能性がある」


ルルの場合は、ただの金属板に見えるので、不明確だが、あの金属板をはじめて目撃したのが、後から生まれた記憶の中での出来事だった可能性が高い。

トルテラが去って行ったあと、ルルは金属板を見た。

その金属板を、父親のテリオスが目の届かない場所に隠した。


特別な物でもなければ隠す必要が無い。


そして、最近ではエスティアの鎧が動き回った。

大鎧の各パーツは、記憶が生まれるときに登場しているのだ。


「なるほど。確かに、鎧は関係があるのかもしれないな」

と言いつつ、関係が無いわけがない、そう思う。

リーディアは覚えていないだけで剣はあったのかもしれない。


大鎧は鎧と名がついているが、元は大きな鎧を着た神様を指し、その装備一式をあらわす。

鎧と兜と盾と剣で一式となっている。


リーディアに対応するのは剣とされており、リーディアが思い出せる範囲では、トルテラに助けられた記憶が生まれたとき、それを見た記憶はない。

リーディアがトルテラに救われたのは、まだ小さな子供の頃であり、ほとんど記憶に残っていない。

ただ、巨大な老人に助けられたことと、助けられなければ死んだことを覚えている程度だった。


テーラも盾を見たとは言っていない。

尤も、テーラは元々死ぬはずの子では無いから、他の女とは事情が異なる可能性がある。


記憶が生まれるとき必ずしも登場するものでは無いかもしれないが、エスティアの時には、鎧は自由に動き回り、空を飛び大活躍している。

リナの場合も大活躍しても不思議ではない。

※エスティアさんがハスクバハルに行った時に動き回っていた鎧の腰部分は、

 今でもアイスさんが時々使っています。

 未だに、飛べるのではないかとチャレンジ中です。

 高所から落ちるときは、少し減速するのではないかと言われています。


「さっき、私の言葉で何か思いついたように見えたが」


「ああ。何度も見えていたのは、本当は、リーディアの鎧と関係が深い場面

 なのではないかと思ったんだ」


鎧のことを気付かせるために、あの場面を見せるとは考えにくい。


「ならば、鎧を授かった場面でも見えればわかりやすいと思うのだが」


「本当の事情は分からない。

 ただ、あのとき、リーディアの話を聞いて、

 鎧を使わないのはおかしいと感じたんだ」


結局のところ、直感を信じたという話になるようだが、さっきのリナの反応を見た感想としては、もっとはっきりと鎧が関係あることに気付いたように見えた。

そのギャップが違和感として残るが、リーディアも鎧を試してみることには賛成だ。


……………………

……………………


「鎧を持ってまいりました」

兵が鎧を運んでくるが、少し様子がおかしい。

どうも鎧を恐れているようにも見える。

「どうした」

「いえ、鎧がお怒りではないかと聞き、慎重にお運びいたしました」


やはり何かがあったのだ。

取りに行く前は知らず、ここに戻ってくるまでに何か新しい情報を得た可能性が高い。


「お怒りとはなんだ、言ってみろ」

「どうも、このところ、保管所から物音が聞こえると騒ぎになっていたようで」


即確定とはいかないが、鎧が音を立てていた可能性がありそうだ。

今日たまたまリナが鎧が必要なのではないかと気付いたが、

鎧の方も何らかの方法で気付いてもらおうと頑張っていた可能性が高そうだ。


それをもっと前に聞ければ、もっと早く気づいたのにと思う。


「なぜ報告しなかった」

「申し訳ありません。担当の都合、先ほど初めて知ったため報告ができませんでした」


「そうか。であれば仕方のないところか、、」


リーディアは、報告しなかった理由を確認しただけで、その内容には見当がついていた。


----


一方で、そのやりとりを聞いていたエスティアには妙に見えた。

同じ屋敷の中の警備をしていて、噂が耳に届かないというのはエスティアには妙に思える。

些細な噂が町中に広まるのにたいした時間がかからないのに、それほど広くない家の中での出来事が耳に入らないというのは変だ。

さらには、リーディアがあっさり納得したように見えたのが不思議だった。

「どういうこと?」


リーディアは、エスティアが何を疑問に思ったかはすぐに理解できた。


「私たちの見張りをできる者は限られている(担当は固定)。

 そうすることによって、情報が漏れるのを防いでいるのだ。

 情報が漏れるのを防ぐ目的で、他の者との接触が制限されている。

 だから、知っていなくて正しい。この者に過失は無い」


「ああ、私たちが機密だって話? なんか、そんなこと言ってたかしら」

エスティアは、そんな話を聞いたような気もした。

※聞いたけど気にしていませんでした。


「うん、で、物音というのは何?」

「鎧が教えてくれていたのだろう。出番だから出せと」


リナとリーディアは、鎧が気付かせようとしていたことを知り、

これで何かが読めるだろうと思い安心した。


「この鎧は、物音立てられても、好きな場所に勝手に移動するわけじゃないのね」

エスティアにとっては、動いてほしい時には動かないのに、ある時勝手に動き出すのが鎧だった。


「好きな場所に勝手に移動できるなら、勝手に来てるはずだ」


そんなのはエスティアも理解している。

エスティアの鎧は勝手に動いた。この鎧も同じかもしれないと思っただけだ。


「何かを見せたがっているのは、石ではなくて鎧の方だったのかもしれないな」

「鎧は話をすることができないからな」


鎧は話をするのかもしれない。エスティアはそう思って接してきた。

エスティアはあまり話ができた気はしないが、少なくともベリヌーは話をしているように見えた。


「ベリヌーは喋ってたみたいだったけど」

「ベリヌー? 誰だ? 私は会ったことがないのではないか?」

「ええ。そうね。ハスクバハルに行くときに一緒になった商人の1人」

「その商人と一緒だったのか?」

「ええ。この話しなかったっけ? 大鎧が動くのを見た商人がいて、

 情報が洩れると困るからって、ハスクバハルまで同行してもらったって」


「その話は聞いたが、別の名前だったような気がしたが」

「スレッダ商会の人」

「ああ、それだ、スレッダ商会。……ということは、スレッダ商会の1人か」

「そう。大鎧が、見たことのない珍しい材質でできてるからってすごい興味持ってて」


確かに、そんな人物の話も聞いた気がする。


「鎧は今でも話すのか……」

「それは、シートが言ってた通りみたい」

「会話をしているのに、人間は会話をしていることに気付かないだったか」

「ええ(肯定の意味)」

シートが言っていた。鎧は人間と会話している。

人間は会話をしていると思っていないが、会話が成立しているように見えると。


「是非とも、その人物と会ってみたいな」

「ベリヌーは探せばどこにいるかはわかると思うけど、すぐには無理よ」

「ああ、それはわかっている。いずれ会ってみたい」

「今ここに居れば、この鎧が何を言ってるのかわかるかもしれないけれど」


鎧と話ができる人物が居なくても問題無い。

「問題無い。私たちには石がある」

「そうね、まずはこれで読めるものが変わるかどうか」


はっきり言って、鎧の上で石を読んだからと言って、鎧が何を言ってるかわかるとは限らない。

だが、鎧が関係あるなら、これで何かが読めるかもしれない。


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