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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
37章.神殿再建(2)

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37-18.タカアシガニ旅行(14) GWに戻ってきたと体感させる方法がわからない

挿絵(By みてみん)


俺が人間だった頃過ごした世界は、こことは少しだけ違うところがあった。


俺は、違う世界に来ていることに気付かずに生きていた。

確かに、違和感は有った。

何故かやたら【減塩】と書かれた商品が並んでいて、昭和の時代がそのまま続いているような妙な世界だと感じた。


おかしいな……と思ったことは何度もあったのだが、俺は深く考えずにスルーしてしまった。

俺が人間として生きた元の世界では、平成の時代には既に【減塩信仰】は過去のものとなっていた。


……………………


塩は最も重要な物資の一つで、サラリーマンでもソルジャーでもサラダでも何でも、語源は塩。

多すぎて困るなんて時代は過去に無かった。


特に日本には天然の岩塩がほとんど無く、海水を加工して塩を作る必要があった。

雨が多く、ほとんどの地域で塩田では塩が作れず、大なり小なり燃料を消費して塩を作っていた。

そんな国なので、食塩を自給可能になったのは高度成長期に入ってからだ。


妙なことに、減塩信仰の発端は日本にも関係がある。

第二次世界大戦後土地ごとの平均寿命の差を、塩にあると考えた。

確かに、塩が多いと罹りやすい病気はある。

過多の場合どうなるかをはじめて知った人たちは、塩は悪いものだと考えて減塩した。

安く手に入るからと言って、多用しすぎると寿命が短くなる。

それは間違いでは無いが、あまり減らすと問題が出る。


はじめは良い効果が目に見えやすい。

ところが、歯止めが効かず、アホみたいな基準を設けて減塩をはじめてしまった。


でも、すぐに気付く。

大事なものだから大昔から高い価値を持っていたわけで、今でも重要なものである。


塩が悪みたいな価値観なんて、そんなに長い間続くわけはない。

俺が子供の頃、塩分摂りすぎは体に悪いと言われていた。

成人した頃にはまだ減塩は良い事だった。


それは、どちらの歴史でも変わらない。


俺が元々ただの人間だった時に過ごした世界では、塩は世界で一律1人何グラム以下にしましょうという基準は21世紀には無かったと思う。

もしかしたら2010年あたりまであったのかもしれないが5gとかそんな基準では無かったはずだ。


一日に必要な栄養素としての基準はあったと思うが、世界一長寿な国の平均摂取量に対して、塩分摂取量の目標値が半分みたいなアホな状況にはなっていなかった。


何かと言うと塩の摂りすぎに原因を求めようとする常識は後に【塩の天動説】と呼ばれるようになった。

もちろん、塩分を制限すべき人は居たが、そうでない人の方が圧倒的に多いのだ。

平成に入ると、【塩の天動説】が指摘されるようになって、なんでも減塩という流れは収まった。

だから21世紀には、世界で一律何グラム以下という基準は無かったはずだ。


俺の知っている歴史はそうだった。


だから、【減塩信仰】は俺にとっては昭和の話だったのだが、実は、ここには【塩の天動説】の言葉自体が存在しない。

【塩の天動説】がそのまま生きている世界だった。


21世紀になっても、そんな昭和の迷信みたいなものが生きているという妙な世界だった。


ただ、人間の常識が"俺が生まれて死んだ世界"と微妙に異なるだけで、人間の力の及ばない自然災害は、同じ日に発生していると思う。


「地震も同じ日だよな。時間が一緒かまではわからないけど」


「ええ。311は変わらない」


自然に起きるイベントは同じ日に起きている。


「唯ちゃんは、地震の時のこと覚えてるかな?」


「はい。もちろん。私が中学生の時でしたから」


おお、そんな歳か!

なんとなく、生まれたばかりの頃とかを想像していた。


「俺が人間だった時も地震は起きた。

 地震の後しばらく、まともな診療受けなかったから、

 あれは俺の死亡時期と間接的に関係あったのかもしれないな」


「そんなに影響大きかったんですか?」


「病院に行きにくい時期があったと思う。

 でもな、病気が見つかるまでに、あの後も何度か検査受けたし、

 何も変わらない気もするな」


----


それは、洋子も考えたことがあった。


「私もいろいろ考えたんだけど、”もっと何々しておけばよかった”っていうのは

 思い当たらなくて、検査もしてたのに、再発したことがわかったときには、

 既に手遅れだったというだけだった。後悔する理由が見つからなかったわ」


※再発は地震とは関係無いです。

 要は、後悔する理由が見つからなかったと言ってるだけです。


「ああ、ごめん。

 俺も、実際のところ、地震のタイミングが少しズレた程度じゃ、

 何も変わらないと思ってたんだ」


「後悔…………あれ?」

「なに?」


洋子は後悔したことがあったような気がした。


「……ううん、何か思い出したんだけど、わからなくなっちゃった」

「飲みすぎ?」


「今日は、そんなに飲んでないから」


洋子はそう言うと、黙って考え込んでしまう。

栫井(かこい)も黙り込んでしまったので、唯は今日はお開きかなと思う。


========


栫井(かこい)は、瞑想にも近いような深い思考に入る。


”今になって、異世界での監視者だか同居人が判明した”理由について考える。


いったい、何があるのだろうか?

俺はもう一か月も経たないうちに、この世界を去る可能性が高い。


なぜ今頃判明するのかとも思うが、一番単純なのは、”判明するから俺が異世界に行く”というパターンだ。

今までも、異世界の女の子の写真が撮れたりと、その存在が徐々に見えてきていた。

このタイミングで、あの女の子たちは、同時期に俺と一緒に過ごしていた可能性が高くなった。


俺は、旅行に来る前から、異世界に行かなくてはならないと思っていて、今もその気持ちは変わっていない。

今の俺は洋子さんの願いを叶えるためにだけに存在していたが、洋子さんは、青い服の女の子に、俺を返すと約束してしまった。


”返す”。つまり、俺はあの子と一緒に暮らしていて、途中で洋子さんの願いを叶えたことを確認して、またあの子の元に戻るということなのだと思っている。


戻るというのが、感覚的にしっくりくるというのもある。

ただし、時系列的にはおかしいように思う。


それに関しては、謎のままで、よくわからない。



俺は、あの世界から戻ってきた後のことはよく覚えている。

今年のGWに戻ってきた……と俺は体感している。

GW直前のことは何故かよく覚えていない。俺は戻ってきたとき自分の部屋で寝ていた。


俺は、異世界からこの世界に戻るとき、必ず大学入試の2日前に戻る。

1990年に戻るのだ。だから、2021年のGWに突然異世界から戻ってくることは無い。


俺は今回も大学入試の2日前に戻ってきた。

戻った直後は体調が猛烈に悪い。

体調不良のまま入試を受けて落ちる。

そのせいで1年浪人することになる。


俺はGWに戻ってきたと感じているが、あの日に異世界から戻ってきたわけではなく、

あの日、異世界に行った感覚を取り戻し、朝起きた時に違和感を持ったはずなのだ。


ただ、今の俺の感覚としては、GWに異世界から戻ってきて、同窓会で洋子さんと再会した。

この世界に戻ってきてから半年でタイムリミットが訪れる。

尾骨の痛みや、発作の周期的に、俺がこの世界で活動できる期間は短い。

それに、そろそろ俺の命日が迫っている。

俺は生きて2022年を迎えることはできないはずだ。


俺は、一度死んだはずの俺が、生きた人間として今動き回っているのは良いことだと思っていない。

さらには、命日を超えて活動を続けるのは良くないと思っている。


だから、命日を超えて存在する気は無い。

一方で、異世界では命日という区切りは存在せず、ただ、なるべく早く全てを終えて、本当に消えてしまおうと思っている。


そのあたりからも、俺の未来の行動が予想できる。

俺はもうすぐ異世界に行くだろう。


俺の体感している、この特別な半年間という期間にも意味があるのかもしれないと思っている。


地球の1年と異世界の1年の日数はほぼ同じだが、異世界では四季は半年周期で訪れるので、半年を主な区切りとしている。半年を1期と呼んでいるのだが、俺が与えられた猶予が1期だったのかもしれない。


まあ、こっちの時間と、異世界の時間は繋がっていないのだが、1期経ったら戻ってくるとでも言ったのかもしれない。


俺は転移するとき一部の記憶を失う。転移で失う記憶は限られている。

重要なことに限って覚えていない。

俺自身のことと、親しい人たちに関する記憶が無いだけで、それ以外のことは覚えている。


なので、直接的には失っている記憶であっても、間接的に推測可能な部分はあるので、異世界での生活は直接覚えていなくても、間接的に推測できることはいろいろあった。


GWに異世界から戻ってきたと思ったあのとき、一番はっきり覚えているのは、俺は眼鏡をかけずにスマホを操作しようとして、画面が見えないことに驚いたこと。


あれは普通に生活していたらあり得ないのだ。

俺は眼鏡無しにはほぼ行動不能なのに、あのとき俺は自分に眼鏡が必須であることを忘れていたのだ。

眼鏡が無い世界で視力が低いまま過ごしていた可能性もあるが、俺は眼鏡無しではほとんど見えないことに違和感を持った。


そして、全ての電子機器を久しぶりに見たと感じ、操作方法もけっこう忘れていた。

卵かけご飯が旨かったこともよく覚えている。


どう考えても、俺はあの日、異世界から帰ってきた。

ところが、俺が行方不明だった期間は無いし、自分の体に違和感を持った。


精神だけが異世界に行っていて、期間はわからないが、こっちの世界で経過した時間はとても短かった。

そう考えると納得しやすいが、実際には俺は、1990年に戻ってきたはずなのだ。


2021年のGWに俺はこの世界に戻ってきたと感じたとき、一人で寝起きすることに凄い違和感を持っていた。

それまで、俺が愛でている何かが常に一緒に居たような感覚があった。


その後、俺は異世界に戻る前提で行動していた。

俺は異世界に戻るつもりだった。

”妻と娘たちに囲まれて暮らして、そして、最期は幸せに逝きたい”という野望を叶える方法があると聞いたから。

※”21-3.おっさんの願い”参照


ただ、その夢は、49歳の俺が、日本で叶えるのは無理だと思ったから、異世界に行くのだと思っていた。

まあ、俺がそう思うように仕向けられていたからなのだが。


俺はあのとき、異世界に行くためのフラグが高校の同窓会にあると思った。

たぶん、俺がこの世界に戻ってきたのはマンガのメモ書きの決着を付けるためだと思った。


一度行った異世界から戻ってきて、また行くのだから、何かをするために一時的に戻ってきたのだと考えたのだ。


高校生活の最後のころ、洋子さんに貸していたマンガを返してもらったとき、そのマンガにはメモが挟んであった。マンガを開かなくても、少し注意して見ればすぐに気づくものだった。


あのメモ書きの意味を俺は知りたかった。


洋子さんはメモ書きのことなんか忘れているかもしれないと思っていた。

でも、洋子さんが覚えているかどうかは関係なくて、俺は俺の心の整理がつけば異世界に行くものだと思っていた。


だから、同窓会に行った結果がどうであろうと構わなかった。

いや、むしろ、俺は同窓会に行った結果、絶望して異世界に行くのかもしれないと思っていた。


だから、とにかく決着を付けるために同窓会に行こうと思った。


俺は自分自身でそう決めたと思っていた。

実際は、俺が必ずあの同窓会に行くように、あのメモ書きに縋るような人生を送るように細工されていたのだが。

そして、結局俺はあのとき異世界に行かなかった。

あれは予定通りだった。


計画通り、今年の同窓会で洋子さんと再会し、オーテルと唯ちゃんと再会した。

そういう予定で前回やり直したのだ。


だが、俺はGWに異世界から戻ってきたように錯覚させる細工をした記憶が無い。

それを実現する方法も知らない。


オーテルがやったのかもしれないが、そんな方法があるならもっと前に使っていたように思う。


そして、予定外のできごとがもう1つあった。オーテルが神殿を消していったこと。

あれは、前回やり直すときの計画には無かった。

その結果、俺は、この世界で成仏できる条件が揃ってしまった。


”妻と娘たちに囲まれて暮らして、そして、最期は幸せに逝きたい”という野望が叶うと言ったのは俺で、あれは石の記憶だ。

俺は俺自身の野望を知っていたから。


そして、妻と娘とは洋子さんと唯ちゃんのことを指している。


あれは、俺が俺自身を同窓会に来させるために仕組んだ罠で、最期とは、この世界での最期を指す。

それは石の記憶で読めた。前回のやりなおしのとき俺が計画したことだった。


だから、元々あれは嘘だったのだ。

俺は俺が抱く野望の内容を知っていたから、あの嘘情報を仕込んだだけ。


ところが、オーテルの行動で真実に変わった。


”妻と娘たちに囲まれて暮らして、そして、最期は幸せに逝きたい”

あの願いは、この世界で果たせるように思えた。

俺はそれで良いと思っていた。



ところが、それより後になって、洋子さんは、青い服の子と接触してしまった。

オーテルの行動は誰かにバレていた。

或いは、戻るはずの俺が戻らないから呼びに来ただけかもしれない。


転移をせずとも俺に情報を届ける方法が存在するとは思わなかった。

こうなってくると、GWに異世界から戻ってきたように錯覚したのも、異世界側からの干渉である可能性もありそうに思える。


俺は、あっちの世界でどんな結末を迎えるのかはわからない。

オーテルの主観では、オーテルが生まれる前に俺は死んでいるので

”妻と娘たちに囲まれて暮らして、そして、最期は幸せに逝きたい”

という俺の野望は叶っていないように思える。


が、娘のオーテルとは既に会っているので、ある意味、俺の野望はある程度叶ったのかもしれないとも思っている。


よくわからないのが、異世界の女の子たちだ。

皆だいたい同年齢。俺の娘ではないと思う。妻も見当たらない。

洋子さんと唯ちゃんに見えているイメージの中にも、妻らしき人物は見当たらない。


仕掛けの全体像はわからない。

仕掛けたのが竜のガスパール、【大きな竜・ガスパール】であることはわかっている。

【大きな竜・ガスパール】が居ない限り、オーテルがこの世界に辿り着けないから。


オーテルは、あまり予測、推理が得意ではなく、ただ単に会いたいという気持ちだけで俺に会いに来ただけで、仕組みについてはよく理解していなかった。

せっかく、記憶を捨てずにこの世界に辿り着けたのに、オーテルはあまり細かな情報は持っていなかった。


そして、俺は、せっかくあの世界に居たのに、ここに来るとき記憶を置いてきてしまった。


そのせいで、情報を得るためにこんなに苦労しているのだ。

俺はおそらく命日を超えてこの世界に存在することはできない。


存在はできるのかもしれないが、おそらく尻尾が生える。

その前に、この世界でやるべきことをすべて終わらせて、異世界に行く必要がある。


今さら写真が撮れたり、俺が思い出せない記憶を見る方法が見つかったりするのには何か意味があるはずなのだ。


何か理由があって、女の子たちと行動を共にしているはずだ。

俺を探している、あの青い服の女の子も、おそらく巻き込まれただけ。

俺が同窓会に行ったときのように、俺を探し回るよう仕組まれている可能性がある。

おそらく、そう仕組まれているのだと思う。


青い服の女の子の写真だが、下が光っていて、まるで金色の野の上に居るように見える。


挿絵(By みてみん)


これは、俺にとってはかなり挑発的な写真だ。

俺が子供のころに見たある劇場版アニメの一場面をパクった絵に見える。


俺は、このシーン、劇場で見た時からあんまり納得が行かなかった。

アレは、見せ場、感動のシーンだと思うのだけれど、

俺は、”なんで伝承のシーンが都合良く再現されるんだ?”という気持ちで見ていたのだ。


べつに、そういう作品があっても良いと思うし、あのシーンが好きな人が居ても不思議には思わない。

だが、俺は”俺があのシーンが好きだと思われるのは嫌”なのだ。

なのに、わざわざこれを俺に見せるという悪趣味。


竜がこれを考えるとは思えない。


人間の心のロジックを正確に読み取るような生き物ではない。

オーテルと話した感じでは、竜はやはり人間とは異なる種族であり考え方も異なる。

わざわざ俺に青い服の女が金色の野に居るように見える写真を見せるという高度な技を使うとは到底思えない。


異世界側の人物にもおそらく無理なのだ。

そもそも写真が無い世界で映画も無い。

俺があのシーンを見てどう感じたかなど、わかるわけが無いのだ。


俺の予想では、たぶん、俺自身が絡んでいる。


俺自身が、俺をあの異世界に再度呼び寄せるために、この挑発的な写真を送ってきたのではないかと思える。

その割に、石の記憶で俺の計画が見えないのが不思議ではある。

何か読めなくする仕掛けがあるのだろうか?


とはいえ、世界間の移動なんて、限られた竜にしかできない。

人間にはできないはずなのだ。

なのに、鎧を使って俺を探しに来た。

そして、洋子さんと意思疎通することに成功した。

あの子にとって、俺はそんなに大事な存在なのだろうか?


俺自身があの子を使って、俺をあの世界に再度呼び寄せようとしたと考える方が納得しやすい。

ただ、その証拠を掴むのは難しい。


俺が仕込んだわけではない場合、あの子の目的を達成するためには俺が必要なのか……あの子の役目が俺を見張ることだったとしたら、俺をみつけるまで元の社会に戻れないなんてこともあるのだろうか?


【金髪の子】は何のカギを握っているのだろうか?

今になって存在が発覚するのは妙に思える。

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