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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
37章.神殿再建(2)

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37-09.タカアシガニ旅行(5) 味もカニかもしれない?

挿絵(By みてみん)


だが、カニだからと言って美味いとは限らない……そう思っていると、また裏切られる。

今度は良い意味でだ。


あ、あれ? 美味い?

カニみそ付けたら一気に化けた。


タカアシガニは味が薄い。カニみそまで味が薄い。

カニみそ付けたところで食感が独特なのは変わらないが、元々身に癖も臭みも無い。

薄味のカニみそでも、バランスが悪くない。


足りなかったものが、補われた感じだ。

風味としてはカニ感もある。


「カニみそ付けると味がある?」


「ほんと、味が濃くなった」


事前に調べたときエビっぽいと書いている人も居た。

俺は、エビはあまりメインで食べたいと思うほどには好きではない。


俺が思っていたのとは違うものの、確かにエビと言えばエビっぽいかもしれない。


俺は”エビに似てる”と書かれているのを読んだとき、火を通したエビの味を思い浮かべた。

それとはまったく似ていない。

だが、伊勢海老の刺身には似ているかもしれないと思った。

エビっぽいと書いた人は、エビの刺身に似てると思ったのだろうか?


ズワイガニであっても、刺身だと味はあまり強く感じない。


タカアシガニは……こいつは、ボイルしてあるものだが、脚の身の見た目は完全にカニそのものだ。

ところが、口に入れると、妙な食感で驚く。

火を通しても妙な食感で味が薄い。

ところが、カニみそ付けたら化けた。カニだと思える味になる。


食感は変わらないが……味的には割とうまい。


「意外だな……これなら美味い」


「ちょっとあっさりしすぎかなと思ったけど、これなら美味しい?」

「カニみそ付けると、けっこう味があるかも?」

※なんで2人とも疑問形なのでしょう?


----


そして、事前にイメージしていたよりも意外に小さく感じた【タカアシガニ】だが、脚ばかりだと思っていた割に脚は細く、思ったほどボリュームがあるわけでは無いわりに、胴体はでかい。

なんだかんだで食べでがあった。


あとは少々のおかずがあれば十分なのに、オマケに付いてくる普通の刺身盛りが多い。

この歳になると、多けりゃ嬉しいという価値観でもなくなるものだ。


ここは若い衆に任せよう。


「唯ちゃん、若いんだから、まだ行けるでしょ」

「ああ、私はもうおなかいっぱいで」

即答だ。


うん、実は俺もそう言うと思ってた。あと、俺も割とお腹いっぱいなんだ。

だから、せめて等分したいと思うのだ。


「ジン君、せっかくだから、もっと食べなよ」


うん。そう言うと思ってた。

でも、なんだよ、その”せっかくだから”ってのは!!


ぬぅ。


港町と、都市部では刺身のボリューム感が全然違うのだ。


だいたい漁港の近くで育ったやつは、都会の魚は全部まずいとか、高くてちょびっととか言うが、そういうのが普通な環境で育った人間には、これは多すぎるんだよ!

米とのバランスがおかしくなるんだよ!! あと、わさび、全然足りないんだよ!

っていうか、魚美味いのに、こんなヘボわさびじゃ失礼ってもんだろ!!


※このおっさん、山奥に行くことがあるので、ワサビの味はわかる男なのです


たぶん、ここの常識では、これが普通なんだろうけど、ご飯一杯のおかずに、こんなに大量の刺身は不要だろ!と俺は思うのだ。


十分ヘビーな刺身定食にオマケで【タカアシガニ】が付いてきたような構成になっていて、洋子さんと唯ちゃんは、刺身をそんなに大量に食べなかった。


……………………

……………………


俺は、なんとか刺身盛に勝利した……


なんか、もう、しばらくは刺身は見たくない感じになった。

※僅か数時間後の夕食も刺身メインです


【タカアシガニ】は何と言うか、珍味としか言いようがない。

火を通してあんな食感になるのが不思議だ。


そして、オマケのつもりだった刺身のボリュームが暴力的だった。


それにしても、一泊旅行だというのに、”タカアシガニを食べる”という目的を、現地に着いて早々に果たしてしまった。


……………………

……………………


俺は、もうすぐこの世界を去るというのに、最後の最後でどうでも良いことに気付いた。

俺はずっとタカアシガニはヤドカリの仲間だと思っていた。

脚が4対に見えたから。


俺は、俺の味覚……嗜好的には、ヤドカリよりもカニの方が美味しいと感じていた。

だが、タカアシガニがカニだとすれば、俺はズワイガニと毛ガニが好きなだけなのかもしれない。

※実際はワタリガニも好きです。


とは言っても、一般的にカニ扱いされているヤドカリの仲間のタラバガニだって、俺はまあまあ好きだ。

カニのコースにタラバガニが出てきたのでがっかりしただけで、タラバガニが嫌いなわけではない。


「カニだったでしょ」


ぬぅ。癪ではあるが、認めるしかない。

「ああ、カニだったんだな……」

確実にカニなのだ。脚が5対あったのだ。


【タカアシガニ】は実はカニだった。予想外の収穫だった。


いや、俺が勝手に間違っていただけだったが、いつもと違う角度から見ると、とても基本的なことに気付いたりすることもある。


意外にも、世の中には、当たり前だと思っていて気付いていない些細な勘違いなんて、

たくさんあるのかもしれない。


※フラグです!


俺は、ラストチャンスをタカアシガニで潰すことには反対の立場だったのだが、洋子さんが嬉しそうなので、なんか、これでも良いかもしれないとは思っていた。

実はカニでした……という展開になってもガッカリした様子は無い。

洋子さんは、俺が喜ばないことを知っていて、決めたはずなのに……


洋子さんは、俺が人間だった頃、はじめた会った頃から、こんな感じだったのだ。

同じ高校に通っていて、俺は好きでもない少女漫画を読まされて、何が目的なのだかぜんぜんわからなかった。

暇潰しに俺をからかっているだけかと思っていた。


※放課後、なぜか少女マンガ読まされる嫌がらせの流れは、

 ”28-21.絶叫作戦(5) 出会い1”のときと大差はありません。

 ただ、元の人生だと、ピクルスマシマシやらが無く若干薄味になってます。


ただ、最終的には俺は洋子さんに好意を持つようになった。

【動物のお医者さん】の連載がはじまらなくても仲良くなったのだろうか?



洋子さんと仲が良かったのは、高校生のときだけで、その後、洋子さんとどうだとは思わなかった。

最初、俺がまともな人間として生きていた人生ではそうだった。


俺は自分から望んで洋子さんに会おうとはしなかった。

俺は洋子さんが離婚した話は聞いていなかったと思う。


だから、フリーな状態の洋子さんと再会することになるとは思っていなかった。


俺にとっては、洋子さんとは騙し討ちで再会させられた。

そう感じた。それでも俺は再会したとき嬉しかった。


俺は完全に縁が切れていると思っていたから。

それまでは結婚することになるなんて考えたことも無かった。


あの頃の俺は、何故か大学に行けば楽しい人生が待っていると思っていた。

結婚相手も勝手に見つかって、平凡な生活を送るのだろうと漠然と思っていた。

まあ、子供の頃から、良い大学に行け、行かないと悲惨なことになる、良い大学行けば勝ったも同然みたいな話を聞かされて育ってきたので、そんなものかと思っていた。


だが、大学に行っても彼女はできなかった。

何の手も打たなかったわけではないが、手応えは全く無かった。


洋子さんと再会したのは社会に出て5年くらいの頃だった。


あのころはまだ、俺はそんなに焦ってはいなかったのだが、

現実が見えてくるにしたがって、

【俺が仲良くなれる女性は、洋子さんしかいなかったんじゃないか】なんて考えることもあった。

今思えば、そう思うように今井さんに誘導されてたような気もするけど。


でも、俺が人間として生きていたあの人生では、洋子さんはアクージョ様では無かったと思う。

いつからアクージョ様になったのだろうか?


たぶん50の年の同窓会で俺と再会したときだ。

何かある。俺はアクージョ様は嫌いではない。

でも、俺が人間だった頃の洋子さんはアクージョ様では無かった。

酒はそんなに飲まなかったと思う。


アクージョ様化する前の洋子さんは、タカアシガニを食べに行こうなんて言わなかった。


俺がタカアシガニの脚は4対だと思っていたから、ここに来た。

俺がタカアシガニをヤドカリの仲間だと思っていて、タカアシガニを食べに行くのは嫌だと言ったから来たはずだ。


実際はヤドカリの仲間だと思っていたのが間違いで、カニだった。

ヤドカリだと思っていたタカアシガニがカニでした……と判明したところで、特に意味は無い。


だとすると、おそらく他の方向で何かしらの意味が有るのだと思う。


俺がこの世界を去る準備ができて、俺が異世界に行くために必要な何かがここにあるから、わざわざタカアシガニを食べに来た。

そう考える方が自然に思える。


何があるのだろうか?


あっちの世界には、俺が海だと思うこの景色はたぶん無い。

単に、最後に海の見納めに……という俺への配慮でもあるのだろうか?


……………………


仕方ないことではあるが、カニを食べた後は、手がカニ風味な感じになる。


タカアシガニは、そんなにカニっぽい臭いはしない。

それでも、手を洗ってもなんとなくカニっぽい。


「さっさと風呂入りたいな」


俺がそう呟くと、洋子さんが反応する。


「少し買い物してから行きましょう」


今、何かを感じた。

たぶん、これがガンダムだったら、ニュータイプのひらめき音が鳴ったはずだ。

※あの”ヒュルルルル、ピキーン”みたいな音のことです


なんだか、ホテルに行く時間を引き延ばしている気がする。

嫌な予感がする。


「部屋に風呂ついてるんだよな?」

俺は洋子さんに確認したつもりだったが、唯ちゃんが答えてくれる。

「はい。ちゃんと付いてます。確認しました」


気にし過ぎか……か?


実は、貸切風呂をある時間で予約してあって、本当は部屋には風呂は無い。

そんなトラップがあるのではないかと疑ったのだ。


俺が人間だった頃、洋子さんと夫婦だった時、貸切風呂に入ることがあった。

べつにラブラブな2人が入る風呂というわけではなく、子無し夫婦が家族風呂に入っているだけなのだが。


ある程度の歳の夫婦が風呂に入って何か新鮮味があるかというと、そんなものがあるわけでも無いし、そんなものを求めて来るわけでもない。


この感覚は、”温泉が好きで温泉に入る人には理解が難しい”かもしれない。


俺も洋子さんも温泉好きというわけではない。

なので、二人とも大浴場を満喫する習慣が無かった。


夫婦2人で行っても大浴場は男女別になる。


温泉好きでもない2人は、温泉に入ること自体は、さほど好きなわけでもなく、話し相手も居ないので長湯しない。大浴場で風呂がでかくて嬉しいとかそういうのはあんまり無い。

これは温泉好きにはわからないだろう。


温泉にはさほど興味が無いから2人で入る。


2人で入りたいから2人で入るわけでもない。

1人で入ってもつまらないから2人で入る。


友好関係が決して広いとは言えない俺ではあるが、

少なくとも俺の知る限り、温泉好きはこういうことはしない。


一人で入ってつまらんなどとは思わないようだ。


温泉好きではない俺たちの場合は、温泉自体にはさほど興味が無いので相方と入る。

べつに風呂でイチャイチャいたいわけではないのだ。


せっかく2人で旅行に来ているのに、風呂にバラバラで入るというのがつまらない。

むしろ雑談するのにちょうど良い場だと思っていた。


いつでもできる話なのに、風呂のときだけ出てくるようなネタというのもある。

何を話したのか覚えていないが、風呂に入ると思い出す出来事があったのだと思う。


懐かしくはあるものの、今の俺には難易度が高い。


なぜなら、今の俺は、ときどきいきなり吐血することがある。

心臓も止まるが、それは短時間で何とかなることが多い。

だが、血は残るのだ。


家族風呂や貸切風呂は時間貸しで、すぐ入れ替えになる。

俺が湯船で吐血したら、証拠隠滅する時間が無いのだ。


それはわかっているはずだからやらないとは思うが、

部屋に風呂が無くて貸切風呂があると、俺は大浴場には行かず貸切に行く。


そうなると洋子さんが一緒に入りたがる気がする。

今回の人生で一度も入っていないから。


唯ちゃんが居るから自重してくれるとは思っているのだけれど。


普段であれば、俺は一日くらい風呂に入らなくても死にはしないと思っているが、体がカニ風味な気がして今日に限ってはかなり風呂に入りたい気持ちでいっぱいなのだ。


ホテルに向かう……と言っても、小さな町なのですぐに着く。


「すぐ夕食ね」


チェックインが遅かったので、いきなり夕食……はわかる。

だが、このタイミングを狙っていたようにも見えた。


「少し、部屋で休んでからでも良くないか?

 腹も減って無いだろ」


「お腹はすいて無いけど、お風呂入るほどの時間も無いし」


まあ、ゆっくりする時間が無いのは確かだ。

そうなるように狙ったように見えたのだ。


「俺、腹減ってないんだけど」

「食べられないなら、ビールでも飲んだら良いじゃない」


俺は思うのだ。ビールはけっこう腹にたまる。

ビール飲んでしまうと食欲が失せるというか……


ついさっきあの大量の刺身を食わされたばかりで、さらに夕食にチャレンジしなくてはいけないわけで、ビールとか飲んでる余裕が無いのだ。

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