30-33.ルルシアを助けに来た老人、その後(26) 見る子、遂に見る!!
そこに老人がやって来る。
「おはよう」
「おはようございます」
おはよう“ございます“
そう言えば、2人とも、ずいぶん言葉が丁寧だな?
老人は、今更気付く。
多くの村人たちは、昨日の馬車の御者や、冒険者の女たちのように、あまりきれいな言葉は使わない。
この親子の言葉遣いは相当珍しい。
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ガスパールは15年もの長期間、男子学校と、隔離施設で過ごしたという、かなりの箱入りです。
ルルシアも、その言葉遣いの影響を色濃く受け継いでいるので、村人としては、ちょっとおかしな言葉を話す人たちです。
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日本語じゃ無いと思っているのだが、どうにも、挨拶程度にも丁寧語まで存在していて、互換性が高すぎる
と、おっさんは思った。
「大丈夫?」
「飲みすぎで、二日酔いだ。でも、この体は強いな」
横浜のときだったら、吐きまくって、行動不能になってそうだ。
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ルルシアには、老人は体調が悪そうに見えた。
“二日酔い“その言葉をルルシアは、昨日はじめて聞いた。
たちまち役立つ時が来た!と喜ぶ。
水か、お湯を飲むと良い?
※正しくは、二日酔い予防のために、水か湯を飲んでおけと言った
そのタイミングで老人が言う。
「水、コップどれだっけ?」
「ああ、私が汲んでくる」
そう言うと、ルルは飛び出して、すぐに水を汲んでくる。
「はい。水」
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コップを受け取り一言礼を言う。
「ありがとう」
早速、全部がぶ飲みする。
おお!冷たい水が最高だ
だが、アレの味がする。イソ〇ン味。
俺の良く知るうがい薬の味だ。
まあ、仕方が無いが。
木のコップは、一度味や臭いが浸み込んだら、なかなか取れない。
しばらく、イソ○ン味だ。
そこで気付くがもう遅い。あ、俺としたことが!
こんな朝っぱらから、タオル巻き。
せっかく、こんな風呂上がりみたいな格好してるんだから、腰に手を当てて、背中を反らして、ゴクッ、ゴクッっと豪快に飲めば良かった!
なんてことだ。こんな初歩的なミスをするなんて!
若干萎えたが、すぐに気を取り直して、まずは、この格好をなんとかする。
「服くれるか?」
「まだ乾いていません」
「いいよ、だいたい乾いてるだろ」
「まだ」
まだ乾いていない。
そうは言っても、生地が厚いし、一晩では乾かない。
濡れてるかもしれないが、この格好では動きにくい。
「まあいいよ。この格好だと動きにくいし」
そこに、ガスパールの一声が。
「体を流してから着替えた方が良いのでは」
ああ、そうか。そうかも。
確かにそうかもしれない。
なので、その恰好のまま、朝食をいただく。
「手伝えなくて悪いな」
「いえいえ、そんなことは」
昨日は散々酔ってたように見えたのに、ガスパールは元気だ。
二日酔いになりにくい体質なのか。羨ましい。
そこにルルがやってくる。
「ねえ、写真って?」
「写真?」
二日酔いで頭が回ってないが、写真はここには無いと聞いた。
なので、この子が【写真】を知っているのは、昨日俺が話したからだ。
「写真が?」
「写真は作れる?」
俺は写真を作れるような話をしたのだろうか?
「いや、俺には無理だ」
「無理?」
ルルは、予想外の答えに驚く。
「カメラは持ってるんでしょ?」
「ああ、横浜に帰れば……俺の国にならたくさんある」
「うん、じゃあいい」
なんだ?
老人は、意図がわからなかったが、体調が悪かったためスルーした。
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写真という言葉が聞こえた。
流された時、ルルの姿に見とれたように見えた。
あれは後で写真に残すため
そうかもしれない。
ルルシアを見て、固まった。確かに、ガスパールにもそう見えた。
でも、人間の裸を見たことが無かったのかもしれない。
ルルシアが言う、”ルルシアのことが好きだから”というのが本当かどうかはわからない。
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朝っぱらから、大芋。毎日大芋。
これが普通だから仕方ないのだが、やはり、食事は俺の国のものの方が美味しい。
それでも、食べると生きてる気がする。
死人は食べないから、そう感じるのだろう。
俺は何十年もの間、動けずに固まっていたのかもしれない。
止まっている間は、俺は何も食べていない。生きていない状態、つまり死んでいる状態に近いと思う。
俺が、仮死状態から活動開始するには、誰か特定の人物と出会うと動き出す。
俺は、一番大きな竜だったときのことを思い出した。
そのことを、ガスパールに話しておく。
「俺、”一番大きな竜”だった」
ガスパールは、しばらく老人を見て、こう答える。
「やはりそうでしたか」
なんだ、この反応。
まあ、俺が忘れてただけで、ガスパールは知ってたんだな。
「竜のガスパールは、俺とは別の竜だった」
「(竜の)ガスパールをご存知なのですか?」
「直接会ったかどうかはわからないけれど。大きな竜だ」
ガスパール(テリオス)は、なんだか、自分の今までの人生が肯定されたような気がしてくる。
シートとテリシアには申し訳ないが、竜と会うことができた。
その竜は、子供の頃、ガスパール(テリオス)が話をした”竜のガスパール”を知っていた。
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ルルシアが大好きなこの老人は、”一番大きな竜”だったという。
ルルシアは、竜を見たことが無いし、どんな生き物だかよく知らなかった。
竜は、家族に壁を作った。だから、今までは、竜には、あまり良い印象は無かったが、この老人が元竜だとしたら、そんなに嫌でもないかもしれない。
そんな風に感じた。
「まあ、じゃあ、風呂にするか」
「風呂はありませんが、湯は用意できます」
「風呂って言うと、よほど特別感が有るんだな。
お湯で体流すだけだけど、俺は、それも含めて風呂って呼んでる」
この説明は、ガスパールにはよく理解できた。
風呂と言うので驚くが、どうやら、湯があるだけでも良いようで、設備としての風呂ではなく、湯を使って体を洗うことを、”風呂に入る”と表現しているように思える。
単に言葉の使い方の問題だ。
「湯沸かしに、だいぶ時間がかかりますが、」
ルルの心が激しく動いた。
また裸になるチャンスがあるのだ。
”次こそ見る!!”
※この瞬間、ルルは、ブラックエンジェルズみたいな目つきになってますが、誰も見てません
その決意は殺気となって伝わる。
おっさんは気付く。
ん?
「今、なんか嫌な視線を感じた」
ガスパールは老人の反応を見て辺りを警戒した。
だが、誰も居ない。
もしかして、シートが戻ってきた?
シートは気配を消すことがある。
よく神経を集中するが、居ない。
シートは、気配をほぼ完全に消すが、長年一緒に過ごしたガスパールは、気配を消したシートを見つけることが出来る。
※ガスパールは、もともとシートと出会う前から気配を消したラグベルを発見できる
(気配を消して遊びに来るラグベルを待ち続けていたので慣れています)ので、
ほぼ同等の能力を持つシートも発見できます
だが、家の近くにはいない。
「我々以外に気配はありません」
おかしいな?
なんか邪悪な視線を感じたのだが。
「気のせいか、何か危険な気配があったように感じたんだけどな」
ガスパールは、この老人にとって危険なものなどこの世に存在するのだろうかと思う。
意外に酒に弱いことはわかったが。
老人は、調子は出ないし、相変わらずのタオル姿なので、湯沸かしはルルとガスパールがやる。
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湯沸かしで、2人きりになると、ルルシアが切り出す。
「お父さん。私、あの人を夫に貰いたい」
ガスパールが言う前にルルシアが言う。
こうなってしまえば仕方がない。
ルルシアは竜と関わらせないように、ルルシアの生みの母”キャゼリア”のところに行かせるはずだったが、会ってしまった。ルルシアは、あの老人を好いている。
今から”キャゼリア”のところにやっても手遅れなら意味が無い。
だが、あの神様はルルシアを妻にするつもりがあるのだろうか?
歳の差を気にしていたように見えたが、ルルシアのことは気に入っているようにも見えた。
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「お湯の用意ができました。あと2杯沸かしてます」
「おお、ありがとう」
毛布は濡らせないので、隠すものが無くなるのだが、ルルが近くから離れない。
「ルルが居ると、ちょっと体拭きにくいんだけど」
「どうして?」
ああ、はやり、こんな小さな女の子に、“裸を見られたくない“というのは言ってはいけないのかもしれない。
俺が困っていると、救いの声が。
「ルルシア、しばらく家に入ってよう」
ガスパールを見ると。ルルを誘導してくれた。
俺はガスパール(テリオス)に感謝した。
いいねボタンを連打したい気持ちになった。
これで安心できると思ったが、家の中からルルが覗いてる。
珍しいのはわかるが、俺はあんまり見られるのは好きではない。
後ろ向いて拭くが、なんか、なぜんぜん奇麗になった感が無い。
体を擦る布は、もっとザラザラのやつが良いが、そんな都合の良いものは無い。
ここの布は乾いているときは引っかかるような感じで着心地悪い割に、濡れると今度は引っかからなくなる。体を洗うには向かないのだ。
風呂は、横浜スタイルでないと落ち着かない。
シャワーでも良い、十分な量の湯があって、体全体をバババーっと流せる量の湯が欲しい。
あと石鹸。
なんか背中届かないし。
と思ってるとルルが来る。
「背中拭ける?」
「うおっ」
慌てて、マル秘エリアをガードする。
「いや、一人で拭けるから」
この世界では、気配察知で、直接見えていないものも感知することができる。
ところが、他のことに気を取られている時に、近くで動くモノには気付きにくい。
灯台下暗しと言うか、少し離れたものの方が気付きやすい。
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ルルは、老人がせっかく裸になったのに、見るチャンスが無く、背中に手が届かなそうだったので、出てきたのだが、見たかったところがガードされてる。
念力で手をどかしたい気持ちになる。
ルルは追加の湯を持ってくるついでに、体拭きを手伝いに来たのだ。
「私が拭いてあげる」
「大丈夫だから」
「私も体拭けるから」
むしろ、断る方が難しいので諦める。
「じゃあ、背中、背中だけでいいから、背中だけだぞ!」
大事なことなので何度も言う。
「うん」
ルルは、はじめは腰のあたりを拭きながら、なんとかガードを外す方法が無いか考える。
だんだん、まじめに拭くが、高い位置になるにつれ、水が腕を伝って落ちてくる。
腕まくりしても、どんどん服が濡れてしまう。
そこでルルは思いつく。そうだ、服を脱いでしまおうと。
「ちょっと待ってね、濡れちゃうから」
そう言うと、ルルは、よいしょと服を脱いだ。
幸い下着は付けていたが、ワンピースなので、パンツ一丁。
「うわああああ」
老人が縮こまる。
「どうしたの?」
「脱ぐなよ!」
「だって、濡れちゃうから」
「いいよ、じゃあ、自分で拭くから」
「私が背中拭く!!」
ルルの意志が固いので、恐れつつも、我慢する。
ルルは不服だった。
喜ぶかと思ったのに、喜ぶどころか、丸まって目を瞑ってしまったのだ。
それじゃ、写真に残す気が無いと言っているようなものだ。
※ルルはカメラの機能を勘違いしています
イライラしたので、ゴシゴシ擦る。
ただ、当の老人の方は、そのくらい力を入れてくれた方が都合が良い。
なので、とにかく事故が起こらず、無事終了することを祈った。
“目を瞑っていれば、なんとかなる“
そう思ったが、ならなかった。
老人が背中を丸めているので、高さは下がったものの、首の下あたりを拭こうとしたとき、ルルの体が、老人の背中にピタっと密着してしまった。
目を瞑って、必死に耐えているところで、背中に、人肌の感触がペタっと来たら……当然アウトだ。
接触面に意識が集中してしまう。凄く温かくて、柔らかくて……
「うわあぁ!! やめ、やめ、」
「なんで? 嫌なの? 私、昨日体洗ったから汚くない」
汚い? 汚いから嫌がったと思ってる??
俺が困ってる理由がわからないからか!!
「そういう意味じゃなくて、俺は……」
老人は動悸とかを通り越して、目の前真っ暗になる。
平衡感覚も無くなって、そのまま横にべとっと倒れる。
その瞬間、ガスパールが支えようとするが、重さに負けて、倒れる。
ルルが裸になったあたりで、心配になって見ていたのだ。
とりあえず、まずは、大事なところが見えないように、毛布を掛けた。
……が遅かった。
ルルはもう見てしまった。ものすごく集中して見てしまった。
ムフーーー!(鼻息)
※ルル、ハイパー化。肺活量2倍(通常時比)
見てしまった、だから、妻にならなければならない。むしろ、既に妻である。
ルルは何故かそう思った。




