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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
27章.横浜編7 妻の形見3

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27-4.樹海観光(2)

挿絵(By みてみん)


ピエロのハンバーガー屋に居ると、小泉さんは、やはり二人でやって来た。


静かなので、声が聞こえる。


「あそこにいる、大きい人でしょ」

「大きい?」

「違うかな?」


「あ、いたいた。大きいって程大きいかな?」

「大きいよ」


なんか、大きい言われるとデジャブ感がある。

おれは、そんなにでかくない。


それはそうと、こんな時間にこんな場所で、しかも酔っぱらい。

この状況で初対面はいかがなものかと……は思うものの、強襲されたので仕方が無い。

そのあたり、理解してもらえるだろうか?


「母がお世話になってます。はじめまして。娘の唯です」


おお!大人だ。


俺のイメージでは、小泉さんには、いつまでも高校生のイメージがスタンドのように張り付いていて、脳内ではその姿が再生されるのだが、娘さんはその姿よりずっと年上なのだ。


とりあえず、きっと娘さんからは、毎週遊び歩いているのは、俺が悪いように見えてる気がするので、謝っておく。

俺はむしろ、さっさと帰らせようと思って頑張っているのだが、理解してもらうのは難しいように思う。


「ごめんね、毎週、飲みに連れ出して。早く帰ろうとしてるんだけど」


「いいの」洋子が答える。


いや、俺は唯ちゃんに謝っているのだ。


実際見ると大きかった。……身長ではなく、年齢的に。

俺には子供はいないが、子持ちの知り合いはもちろん何人も居る。

でも、まだ、ほとんど学生(就職していないの意味)だ。


「もう成人してるもんな」


栫井(かこい)は、成人と言ったが、洋子から見るともっと上だ。

「私が結婚したくらいの歳だから」


確かにそうだ。

小泉さん(洋子)は、同級生の中でも、結婚は早い方だったと思う。

俺は、そのときは知らず、あとから、もう結婚したと聞いただけだったが。


いいな。俺も、この歳の頃の小泉さんに会いたかったな。

まあ、贅沢が過ぎると言うものだ。

俺には、今の小泉さんでも十分輝いて見えるのだが。


「やっと捕まえた。

 今までありがとう。ジン君の残りの命は私が預かっておくから。

 どこかに消えてしまおうとか思わないで」


唯ちゃんとは、初対面なのに、わざわざこのタイミングで、そういうこと言うか!と突っ込みを入れた。

俺の心の中で。


俺は、お母さんが、俺なんかと仲良しだと思われると、小泉さんが娘さんに、幻滅されてしまうかもしれないと思って心配しているのだ。


「で、どうしたんだ、わざわざ2人で(こんな時間に)」


「ジン君、ベス知ってるでしょ」


ベス……俺の使い。らしいが、俺は実は全然知らない。

ので、こう答える。


「いや、よく知らないけど……

 記憶には無いけど、会ったことがあるらしくて」


「そう…………

 まあいいわ」


なんだ、今の間は……


しかも、唯ちゃんの反応も変だ。


そして、急に話題が変わる。どうやら、これが本題っぽい。


「来週は、ドライブに行かない?」


いきなり来週なのか。それに、俺は車は持っていない。


「ドライブ?」


「唯が免許取ったから」


ああ、なるほど。そういうことか。


そこで、ピコーンと閃いた。

あ!アレか、タカアシガニか! ヤドカリの大様だ。

俺は、そんな、”大王ヤドカリ”なんか、わざわざ時間と金かけてまで、食いたくない。

近所の飲み屋で、”お客さん、今日は珍しいもん入荷したんですよ”……のノリで食べるなら別だが。


「タカアシガニ食いに行くのか? 予約とか必要だと思うけど。

 急だし、ちょっと遠いかな」

遠回しに、タカアシガニを歓迎しない気持ちを伝える。


「タカアシガニ? 好きなんですか?」 唯が訊く。

「いや、あんまり好きじゃ……ヤドカリだし」

「ヤドカリ?」

「ジン君、タラバガニをヤドカリだって言うのよ、酷いでしょ」


「ああ……」


唯は、何となく理解した。カニの話にならないように切り離す。

「いえ、食べ物では無くて、観光に……」


「タカアシガニじゃ無いのか。どこに行く?」


「(免許)取ったけれど、ペーパーなんです」


唯は就職してから免許を取った。

取ったは良いが、乗ったことが無かった。


「じゃあ、あんまり遠出はやめといた方がいいな」

そう思い、埼玉方面を思い浮かべる。


ところが、小泉さん(洋子)が、突然言う。

「樹海。行ったこと無いんでしょ」


なるほど、わざわざ、この時間にここに来たのはそう言うことか。

樹海……ドライブが目的じゃ無くて、樹海に行くのが目的か。


「ジン君行きたがってたでしょ」


「まあ、小泉さん(洋子)と一緒に、行きたかった場所じゃ無いんだけど……」


「私も興味あったので」

唯ちゃんまで。


「でも、いきなり行くには、けっこう遠いよ」


うちの方からは、案外近い。都心を通らずに済むし、今は圏央道がある。

俺が車持っていたころには、圏央道は無かった。

なので、(圏央道を)走ったこと無いが、交通事情はだいぶ改善している。


「それとも、タカアシガニが良い?」

「いや、俺はタカアシガニは」

「私も、タカアシガニは、あんまり」

「静岡の方だし。いつが旬なのか知らないし」

「樹海の方が」

「樹海にしよう」


よくわからないが嵌められた。

断れないじゃないか。

なんかよくわからないうちに、樹海にドライブに行くことになってしまったのだ。


タカアシガニは回避できたが、樹海……それに、さっきのベスの話……何か変だ。


『そうじゃ、でかした。お父さんを樹海に連れてくるのじゃ』


その声は誰にも届いていないのだが、オーテルは大はしゃぎだ。

いくら長寿の竜とはいえ、誰とも話が出来ないと暇だ。

干渉できないので、暇つぶしのイタズラもできない。

※けっこうしてますけど


========


「泊ってきなさいよ」


と言っても、もうすぐ電車動く。このタイミングでわざわざ泊りと言うのも。


「いや、いいよ。もうすぐ、電車動くし」


もう、始発までたいした時間は無いのだ。


始発まで付き合ってもらった。


…………

…………


「母も元気になって、感謝してるんです」


唯ちゃんは良い子だった。


結局、今日も、小泉さんを家まで送って、帰れなくなった。

そして、俺は、知らぬ間に、小泉さん(洋子)と、付き合っていた。


まあ、中高生とは違うけど、大人でも、俺が交際のお願いをすると、断られて、俺は樹海に行きたくなるものだと思っていた。


だが、世の中は不思議なもので、知らぬ間に付き合っていたりデートしていたりするのだ。

俺は、飲み友達以上の関係になるとは思っていなかったので、ちょっと頭の中整理しないと。


あれ? これって、俺に尻尾が生ええて、パンツ脱げなくなるフラグか?

そうしたら、やっぱり絶望して樹海に行きそうだ。


========


樹海というのは俺にとって特別な場所だ。

きっと、行くことが決まっている場所なのだ。


ドライブに行く。富士の樹海まで。


意味が分からん。普通、”せっかくだから、富士の樹海に行ってみようぜ?”

とはならないと思うのだ。しかも、唯ちゃんまで一緒に。


でかいヤドカリ食いに行くはずが、樹海観光に変わってしまった。

いや、ヤドカリよりはずっとマシだが。

でも、どっちにしろ遠すぎる。


埼玉からだと、東京を抜けるので、大変だ。

もちろん東京を通らずに行く方法もあるが。普通に行けば中央道は利用する。


滅多にあっち方面に行くことは無いが、俺は20年位前、車を持っていた。

当時は山中湖くらいまでは、よく行った。

昔、バーベキューをしたキャンプ場を思い出す。

小泉さん(洋子)が来たら嬉しいとか期待していった。


俺は酔い潰れて、酷い目に遭ったのだが、あれがあったからこそ、小泉さんと、同窓会で再会できたのかもしれない。

そんな、特別な場所でもある。


横浜からだと、山梨には東京を通っていくので、俺は、東京の隣が山梨だと思っていた。

ところが、それは間違いだったのだ。


当時は圏央道が無かったので、16号を北西へと向かった。

まず、横浜から町田に入る。町田は東京だが、”山梨行くのに東京を通る”と言うときの東京は、町田のことではない。

すぐに相模原に入るからだ。逆に言うと、俺は神奈川県横浜市から、神奈川県相模原市に行くために、東京都町田市を通過する。


そして、しばらく相模原を走って、再び町田に入る。

ここが東京だ。町田市と言っても、ここより北は、東京本土と地続きだ。


町田は飛び地では無いものの、主要な交通経路は、町田駅付近を出ると相模原に入る。

公共機関やメジャーな道を使って町田駅周辺から、神奈川を通らずに東京に行くことはできない。

なので、緊急事態発令で、都道府県を跨いでの移動を制限するとか言われても町田付近の人は無理だ。

そもそも駅から1mで隣の県とかそういう世界なので、徒歩でも無理だ。


が、同じ町田市でも、相原駅のあたりは、神奈川県を通らずに東京に行くことができる。

ただし、町田街道の周囲だけが町田市なので、町田市は幅1kmも無い。

すぐに八王子市に入り、山越えをする。


そして、山を越えたら山梨だと思っていた。

ところが、山の反対側は山梨ではなく神奈川だったのだ。


平成の合併で、もともと津久井郡だったところが、相模原市になった。

ずっと山梨だと思ってたのに相模原市になった。

元から神奈川だったが、相模原市に入るまで、俺は山梨だと思ってたのだ。


なので、俺が山梨のキャンプ場だと思ってたことろが、相模原市のキャンプ場なのだ。


つまり、俺は、横浜から、町田、相模原、町田、八王子、相模原、で、山梨方面に行っていた。


なんか、凄い騙された感じがする。


今日は、そのルートは通らない。

唯ちゃんの運転なので、埼玉から。埼玉から、樹海は遠い。

俺は途中で拾ってもらう。


でも、なんで急に樹海なのだろう?


「前(助手席)いいよ。道にも詳しいだろうし」

「いや、後ろで……」

「小泉さん、助手席行ったら?」

「じゃあ、このままで良いじゃない。けっこう広いし」


確かに広い。

小型車なので、そんなに広いわけは無いのだが、今の車は、小さくても広い。

昔は、車は機動性と豪華さが重要だったのに、今では、軽でも快適だ。


昔の車は、中型車でも、後部座席は拷問だった。

※拷問レベルなのは、若者向けのスポーツカーの話で、ファミリーカーは、そこまでは酷くないですが、

 現在の軽の方が遥かに快適なレベルでした。


「これでいい?」

「いいわ」


本当に、後ろ二人なのか。なんか変だな。


「じゃ、出ますよ」


唯ちゃんは、割と運転は平気そうだった。

今時は運転の難易度も下がっているのだろうか?


そして、すごいのが燃費が良い。

昔の車は、走るほど貧乏になって行った。

乗らないと勿体無い、乗ると燃料代が、でも、乗らないと勿体無い。

……手放すか……というわけで、俺はすぐ手放した。

2年くらいだったか。


走りだすと、唯が言う。

「ありがとうございました。足長おじさんだって」


ああ、やっぱり、あのとき、わざわざ来たのは、”足長おじさん”の話を聞いてだったか。

だが、俺は、その話は、あまりよく知らないのだ。


「ああ、それが、俺にはよくわかって無くて」


貯金の使い道が分からず、不思議に思ってはいた。

さらに、謎のお告げと、どうやらベスが貯金を渡したという話を聞く限り、

俺がその”足長おじさん”っぽいということがわかっているだけで、俺の記憶には無い。


「お尻押さえて、フラグだって」 洋子が言う。


ぬう。それを言うかと思うが、あの時お告げがあったことを話しておく。


「尻尾のお告げが届いたから俺だったのかと思っただけで、

 実は証拠は見つかってないんだ」


「尻尾のお告げ?」


お告げがあると、尻に電撃が来るので、俺的には尻尾のお告げなのだ。

「お告げが来るとき、尾骨にバチーーーンって来るから。

 でも、お告げで聞いただけで、まだ証拠が無いから、本当はわからないんだけど」


「ベスが持って来た時は、凄く驚いて。

 でも、それよりずっと前から、ベスは、いろいろと助けてくれたんです」


なんで、自動的にベスと俺がセットになるのだろう?

疑問に思いつつ話を聞く。


「小学生の時私のところに来て、”飼わないと不幸になる”って言ったんですよ」

「飼う?」

「はい」


飼うって言うくらいだから、ベスは動物か。

「ベスって犬?」


「ええ? 知らなかった?」

これには洋子も驚く。


『犬では無い。ベスと言う生き物じゃ』

※誰にも聞こえていません


分岐に差し掛かる。

「そこ、河口湖方面だから」

「はい」


俺は、ヤドカリの親分、タカアシガニを食いたいと思っては居なかった。

だから、タカアシガニの選択を避けた。

ところが、なぜか、唯ちゃんの運転で樹海に行くことになった。


俺は、樹海には、何か特別な思いがある。

樹海と【トート森】は繋がっているような気がする。


【トート森】というのは、俺が以前行っていた異世界にある森の名前。


ピンポイントで樹海を指定してくるということは、小泉さん(洋子)にも、関係のあることなのだろう。


この場合、真実を知るには、”富士の樹海”に行く必要がある?


でも、俺の場合、先客見つけて、通報して第一発見者になったりとか、そっちの危険があるような……

だが、行かなければならないのか?


タカアシガニはそんなに食べたくない。

でも、だからと言って、”じゃあ、仕方がない、富士の樹海にでも行ってみるか”となるのは不自然だ。


高速を降りる。けっこう店が多いので驚く。


「おなかすいたー」


唯ちゃんは育ち盛……いや、今育つと横方向だ。

唯ちゃんは、まだ若いから、新陳代謝が活発なのだろう。


あんまり奥地まで行くと、店が無いかもしれないので、昼食を食べておいたほうが良さそうだ。


予想外に栄えていた。

河口湖までは昔何度か来たことがある。

こんなに食べ物屋があった記憶が無い。

富士山の麓だから、もっと小さな町しか無いと思っていた。


良かった、これなら、好きなものが食べられそうだ。

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