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加齢臭と転移する竜 (内容まとめ:おっさんが異世界に終活をしに行く話なのですが、なぜか『ほのぼの』と言われています)  作者: 黒長 二郎太
27章.横浜編7 妻の形見3

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27-2.足長おじさん捕獲される(8)

挿絵(By みてみん)


時間が止まった?


いや、俺の”頭の中が加速”している。


『貯金の使い道は思い出したか?』


貯金……斬新だな。なんか、お告げ的な感じなのに貯金の使い道。

なんか、SFとかファンタジー感が足りない。


「唯ちゃんの学費なのか?」


『事実だ。学費はお前が出した』


「いつの間に。どうやって?

 なんで俺は覚えてない?」


『ベスを使った』


「ベスって何だ?」


『お前の使いだ』


ますますわからん。


「そのベスが、どこの誰だか知りたいんだが」


返事はない。

なんて中途半端な。


…………

…………


頭の加速が解ける。


頭で止まっていたアレが、背骨を伝って、尻で破裂した。

”バチーーン”

また尾骨だ。


「痛たたたたたた」


「また?」

「ごめん、あたたたた」


ほんと、またかよ……とは思うが、フラグが連発した。


……で、ベスって誰だ?


「痛っつ」

まだ、尾骨に、ジーンとする痛みが、残っている。


尻尾(しっぽ)?」

「え?」


そうだ、まずい、尾骨痛は尻尾が生える前兆か?


尻を確認する。

「生えてない。良かった……」


いや、良くない。

小泉さん(洋子)は、”尻尾(しっぽ)”と言った。


さりげなく聞いてみる……

「なんで、尻尾なんだ?」


「尻尾の神様?」


「うぇっ?」


何故それを! なんで知ってる?

思い出そうとするが、思い出せない。

ぜんぜん記憶に無い。

俺は、何を話したんだ、いったい。


「俺、尻尾の神様の話……したかな?」


「ベスが」


うぇ? いきなりベス。


小泉さんも、”あの声”を聞いたのか?

あの声の主が、俺と小泉さんを引き合わせた?

何のために?


栫井(かこい)は、恐る恐る聞く。

「ベスが(学費を持って)行ったのか?」


すると、洋子が答える。

「ベスが(尻尾の神様のことを)言った?」


※誤字ではなく、話が全く噛み合っていません


「ジン君!!」


小泉さん(洋子)の目に、一瞬にして、涙が溢れる。

俺は何を? フラグが立ったから?


思い切り、抱き着かれた。

思いきりだけど、音で現すと”ぽふ”

凄い弱そうな衝撃だった。いや、弱そうで衝撃的だった。

弱そう? 俺は、女の子に、抱き着かれたことがある?


柔らかいけど、とても華奢な体つきだった。

シャンプーの匂いがした。


頭がクラクラする。飲みすぎ?


なぜか小泉さんは大泣き。


ぜんぜん意味が分からないし、ベスが誰なのか、わからない。

小泉さん(洋子)は、ベスを知っているようだ。


そして、この弱そう感と、抱き着き攻撃には覚えがあるような?

俺は、凄くヘボ弱い、妖怪のようなものに、抱き着かれたことがあるような既視(デジャブ)感がした。

妖怪だけど女だった気がする。

妖怪なのに性別があって、女なのか?


異世界には妖怪が居るのだ。


「小泉さん(洋子)、周りの人、見てるから」

小泉さんは思い切り大泣きしてて、なんか周りの人の視線が痛くて、俺は死んでしまいたい気分になってくる。


頭のクラクラが回復したけど、動けなかった。

小泉さんがずっと抱き着いて離れないのだ。


俺と小泉さんは、たぶん、同じやつに操られて再会したのだと思う。


小泉さんは、あの声の主から、何を聞いていたのだろうか?

あの声が本当なら、俺が”足長おじさん”らしい。


まあ、実際に俺の貯金は無くなっているので、何か用途があるはずだ。

でも、何となくわかった。小泉さんの言ったとおりだった。

俺は、異世界に行く前に何かをした。


行く前? そうだ、時間が……

時間を確認してガッカリする。

俺は今日こそは、終電までに帰ろうと思っていたのだ。


でも、今日は、名残惜しい気がする。


「送って行くよ。約束だから」

小泉さんは頷く。


名残惜しい。同窓会の日、小泉さんも、こんな気持ちになったのだろうか?

※ぜんぜん、ならなかったです。


乗り換えを調べて驚く。事態はもっと深刻だった。

小泉さん(洋子)の家の、最寄までの終電も逃してた。


「最寄り駅まで、もう行けないけど、行けるとこまで行くか」


「ジン君。もう電車無くなっちゃった」


俺は、とにかく、小泉さん(洋子)を、家まで送り届ける義務がある。


珍しく、男らしく答える。


「大丈夫、俺がちゃんと家まで送ってくから。

 行けるとこまで行って、あとはタクシーだな」


「……そうだよね」


あれ?


ちょっと待て、今のは、今日はどこかで泊りって意味だったのか?

いや、そんな訳はない。


ダメだ、人間、”理性が大事”だ。


あ、あれ? 小泉さんにずっと抱き着かれて、電車無くなったって、

ドキドキを通り過ぎて、なんか、これ、動悸じゃないか?


まずい、何故か倒れそうだ。ぐふっ、ダメだ、倒れちゃだめだ。


俺には、確実に、小泉さんを、家まで送り届ける義務がある。

この電車逃したら、タクシーで帰ると万単位になってしまう。


小泉さん(洋子)は、ちっとも急ぐ気無しで、人攫いのように、抱き抱えて、なんとか電車に乗った。

栫井(かこい)君、力あるね」

力あるねじゃねー!!!!


小泉さんが抱き着いて離れない。周りの目が怖い。


なんか、俺は、過去にも、こんな妖怪に憑りつかれたことが、あるような気がするのだ。

ぐふっ


そして、睡魔が。

性的な意味じゃ無くて、睡眠的な意味で、小泉さんと一緒に寝たい。

俺はどういう訳か、異世界から帰って来てからと言うもの、夜一人で寝るのが寂しいのだ。


と言うか、抱き着かれると、俺は寝てしまう。失神なのか?

俺はこんな抱き枕が欲しい……


ぐふっ

だが、何としても、家までは送り届けないと


そうだ。唯ちゃんに嫌われてしまう。


俺が足長おじさんだと、”お母さんを金で買った極悪人”みたいじゃないか。

あれ? そもそも、元の足長おじさんの話って、見方によっちゃ、女の子を金で買ったみたいなもんじゃないか?


俺の場合は、

”がはは、娘の学費は出してやる、かわりにお前が体で返せ”みたいな。


うーん。金の絡む話はいかんな。


実際、世の中、そう言う例は、いくらでもあるのだと思う。


……………………

……………………


妙に、早く着いた。俺も途中、寝てたのかもしれない。


「降りるよ」


小泉さんは無言だった。


ここから先、電車は無い。歩く距離でも無いので、タクシー。

タクシー乗り場は行列で、ずいぶん待たされる。


皆同じ境遇だ。終電逃して、ここで終わってしまった。


桜木町から、うちまでと同じくらいかかった。

小泉さん(洋子)の、家まで着いた。


これで、任務は完了。


「着いたよ」

「うん」

「泊っていって」

「いや、ほら、唯ちゃんに悪いし」

「悪くないから」


そんなやりとりをして、駅まで逃げてきた。


そして、ここにはドリンクバー有りの24時間営業の店が無い……

また、ピエロのハンバーガー屋で過ごすか……と思いつつ、何故か手には缶コーヒー。


バス乗り場の椅子に座って、時間を潰す。


命預ける……凄い約束したもんだ。

小泉さん(洋子)、約束の内容覚えてるかな?


やっぱり、小泉さん(洋子)、俺のこと心配してくれてたんだな……


同窓会で再会する前、正直、俺は、生きて行く気力が無かった。

両親が亡くなったとき、俺はもう、俺に課せられた、全ての義務を果たしたと思った。


同窓会には、最後の未練を捨てるために行ったのに、小泉さんを、お持ち帰り……とは、ちょっと違うけど、結果的に、お持ち帰りになってしまった。

俺は、二日酔いで、起き上がるのもつらかった。


わざわざ送ってくれたのだ。

たぶん、俺がこの世界を去るつもりだったことに小泉さん(洋子)は気付いたのだ。

20年ぶりに会った小泉さんに見抜かれるとは。


そして、あの部屋を見られてしまった。

命を預ける……あんな約束までしてしまって……


でも、俺は謎のベスと言う人物を介して、ちゃんと小泉さんを支援していた。

そして、結局、小泉さん(洋子)に、捕獲されてしまった。


缶コーヒーを飲み終わったので、立ち上がって伸びをしながら、ピエロのハンバーガー屋に移動する。

”ガン”

そのとき、何かに頭をぶつけた。ガンっと、結構な音がした。


何も無いところで、頭をぶつけた。周りを見るが、特に当たるものは無い。天井?

駅下の通路で、決して天井は高くは無いが、頭が当たるような高さじゃない。


何に当たったのだろう?


----


『お父さん。長い首が素敵です。はやく、お話ししたいです』


その声は、栫井(かこい)の耳には届かない。

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