17-17.重機娘とデート(4)直轄地を繋ぐ通路掘削中
だんだんと、終活の時期が近付いてきます……
※基本土日祝日更新です。
スペランカーレベルに心の弱いおっさんの、とっても残念なお話です。おっさんが興奮しても凹んでもすぐに倒れてしまうお話なのです。生温かく見守っていただけると助かります。
題名が加齢臭で宣伝は終活で中身はパンツの話。こんなのどうやって収拾つけるんだよ!と思う方も多いかと思います。それは至って正常な判断かと思います。
面白いかつまらないかは読者様が判断することですので判断できませんが、一応、加齢臭も終活もパンツも繋がった話を最後まで投稿する予定です。お付き合いいただけるととても嬉しいです。
そんなものを俺が見てたら、いかにも、俺のお墨付きみたいじゃないか!!
『おい、ちょっと待て』
【ふふ。だいじょうぶよ。私はちゃんとできるから】
いや、心配してるのは、できるかどうかじゃ無い。やった結果どうなるかだ!!
「テーラ、指示を頼む」 リーディアが言う。
「いや、待て」
もちろん、俺の言葉は無視される。
グリアノスに直接伝える。
『おい、ちょっと待て』
ところが、それも無視して、無言のまま、グリアノスが密行路に向かっていく。
テーラとグリアノスは無言でやりとりできるようだ。
そして、いきなり、グリアノスが密行路を掘りまくる。
”ザザザ”
『おい、やめろと言って……、ぐわっ!!』
凄い勢いで、土が飛んでくる。
駄目だ、一度離れる。
リーディア達のことだ、実行してもいきなり非常事態みたいなことにはならないと思うが……
いや、信用できん。そう思ってると、やっとグリアノスの返事が来た。
【約束したの。掘ってあげるって】
約束したから、俺が止めても従わないってことだろう。
諦めて見守ることにする。
離れて見ると、なんと言うか、凄い既視感がある。俺は知っている。こういう生き物を。
スケールがおかしいが、俺の世界で、犬、イヌ、ワンちゃんとか、わんこ、そんな名前で呼ばれてたやつだ。
うーん、何というか、俺の知っている犬そのものだ。
前足で掘りまくる。
ウサギとかは、前足で掘って、後ろ足で土どかしてってのを連続でやれるのだが、竜は前足しか使わないようだ。
そういや、犬ってどうやって穴掘るんだっけか?
とりあえず、見た目は、子犬が穴掘ってるようで、遠目にはかわいらしい。
ガスガスと音は凄い。ブルドーザーとかより、巨大な耕運機って感じだ。
「トルテラ様、あの竜はいったい?」
ダルガンイストの兵だ。密航者の監視をしている兵だろうか?
ダルガンイストの兵なら、スワーレンとかリーディアに聞けよ、と思いつつも答える。
「俺も知らないんだが、リーディアが竜に何か頼みごとをしたようだ」
ラハイテスの名前を出すと後々面倒なことになりそうなので、リーディアの名前を出す。
どうせ共犯なので問題無い。
それはそうと、端から見ると俺がやらせてるように見えるのか!
「竜が人間の頼みを聞くのですか?」
いや、そんなこと聞かれても、俺も知らないのだが。
「今回は特別だ」 テキトーに答える。
「竜に頼みごとができるのですか!」
なんだその大げさな反応は、と思いつつも、まあ、俺も頼めば出てくるものだとは知らなかった。
「流石はトルテラ様です。竜王と呼ばれるだけのことはありますね」
ジャックが、また勝手に俺のハードル上げをしている。
「そうですな。まったく、このお方は驚くことばかりで。はは、愉快、愉快」
ダイターンまで!!
この二人は俺の敵だ。
言い返そうとするが、さっきから、なんかムズムズする。尻尾がくすぐったい。
後ろを見ると、子供が触ってた。
「僕も尻尾が欲しい」
男の子だ。この世界では、小学生くらいの年齢になると男の子は保護(隔離)される。
なので、そこらに小学生から高校生くらいの年の男の子は居なくなる。
このくらいの歳の子だと、まだ男の子も一緒に家で暮らしている。
子供相手に夢の無い返事をする。
「これか。椅子に座れないから不便だぞ」
そう言って、尻尾の先だけクルクル動かして見せる。
尻尾は、硬くて左右にしか振れないが、先っちょだけは自由に動くのだ。
「動いた!」
子供たちが反応する。
「尻尾があるのは神様だって言ってた」
尻尾有るのが神様? そんな話は初めて聞いた気がする。
「神様はどうやって神様になったんですか?」
年の割にずいぶんしっかりした言葉を使う子だなと思った。
見た目は普通の子だが、ちょっと育ちが良かったりするのかもしれない。
神様になった理由……たぶん、ヤツのせいだろう。
俺に残念ポーズを見せに来るあの残念な女だ!
そのまま子供に聞かせるわけにも行かないので、ソフトに伝える。
「良くわからないけれど、勇者を選んだからかな?」
実際、本当によくわからないので、そう答える。
そもそも、俺は神様になりたくなかったんだけどな……
「勇者はどうやって選ぶのですか?」
ああ、そういえば、子供というのはこういうものだった。
いや、多くの子供は、そうでもないのだが、たまに、”どうして、どうして”と聞きまくる子供がいるのだ。
たぶん、生まれた時からそういう特性を持っている子なのだと思う。
子供相手の会話というのは、けっこう難しいものだ。
だだっ子タイプも面倒だが、延々どうして系も難しい。
延々”なんでなんで”と聞かれないように、一生懸命考えて答える。
「一緒に盾を取りに行ったんだ。
一緒に盾を取りに行きたいと思える子が、勇者なんじゃないか?」
男の子が、何かひらめいた風の顔をした。
マンガだったら、電球マークが付くやつだ。
そして言う。
「マグ、一緒に盾を取りに行こう」
女の子といきなり約束してる。
おお! こういうのが、お年頃になったころ、甘酸っぱい思い出になったりするんだよな。
ここで余計なこと言って、子供の夢を壊さない方が良い。
男の子と女の子を見て、俺は、ちょっと良いことをした気分になった。
ところが、そのお子様向けの言葉に、他のやつが引っかかってた。
見ると、リーディアが油の切れたロボットのように、カクカクになっている。
他の女……いや、テーラとブロソススワーレンは、ギップリャーって感じだ。
凄く嫌な予感がする。
まずい、俺はまたやってしまったのか!!
すると、リーディアの目から滝のように涙が溢れ、何か訳の分からないことを言い出す。
「わらしはあだたが……」
なんで、リーディアが釣れるんだよ!!
どう考えたって、お子様に対するリップサービスだろ!! そのくらい気付けよ!!
ヘレンとジャックも泣いている。
こいつらは現実を知らないから、話を真に受けてしまったのかもしれない……が、リーディアは、子供向けのアレンジを真に受けるなよ!
リーディアは、いきなり大泣きする残念系のやつなのだ。
それより、まずは、お子様だ。
「後ろにいると、尻尾で跳ね飛ばしちゃうかもしれないから、俺の後ろは気をつけて。
できれば、もう少し離れていてくれるかな」
お子様を尻尾で吹き飛ばしてしまうと、まずいので、離れていてもらう。
「神様が”俺”だって!! カッコイイ」
”俺”ってのは、子供から見るとカッコイイのか。
俺が神様になったのは勇者を選んだから……なのだろうか?
選ばなければ尻尾は生えなかった?
リーディアを見ると、すごくイイ顔をして、ポーズをとったので、俺はげんなりした。
男の子が唐突に言う。
「ママが良い子にしてれば尻尾が生えるって言ってた」
困った。俺にそんなこと言われても……
俺には子供はいなかったから、子供の扱いには慣れていないのだ。
上手い言葉が見つからず、テキトーに答える。
「じゃあ、俺は良い子だったのかもしれないな」
「やっぱり良い子にしてると生えるんだ」
うーーん。俺は良い子が過ぎて尻尾が生えてしまったのだろうか?
「も、申し訳有りません」
慌てて母親が回収しに来る。
なんか偉そうだなと自分で思いつつも、
「いや、気にする必要はない」 とか言ってしまう。
それにしても、母親、若ぁ!!
幼稚園児くらいの子供の親が、大学入りたてくらいの勢いだ。
赤ちゃん抱っこしてる子なんて、エスティアたちより若かったりする。
実際何歳かは知らないけど、俺には中学生に見えるんだよ!!
それはともかく、1つわかったことがある。
今までイベントごととかで、特別席が多いから気付かなかったが、長時間じっとしてると、子供は尻尾を触りに来るのだ。
子供が触りに来るくらいだから、やはり気になるものではあるのだろう。
尻尾の生えた人間は俺しか居ないというのに、どうして皆、そんなに平然としていられるのだろうか?
それと、尻尾カッコイイか?
いやいやいや、そんなことより、こんなとこ掘っちゃって、ほんと、どうするんだよ!
リーディアに聞いてみるか……と思い目をやるが、まだ駄目だ。
泣きやんではいるが、リーディアは、ジャック、ヘレンと共に、精神が別の世界に行っているようだ。
ブロソススワーレンも、涙を浮かべて見守っている。コイツもかよ!
まともそうなラハイテスに聞いてみる。
「そろそろ教えてくれても良いだろう。ラハイテス、これは何だ?」
「はあ、ランデルは現在飛び地です」 ラハイテスが答える。
ようやく話す気になってくれたようだ。
ランデルが飛び地で、ここを掘る。
わかった。ランデルは連合側と密にしたいという意味だろう。
ラハイテスは続ける。
「ダルガンイストは要塞。流通路には向きません。
城下町との流通路を確保しなければなりません」
なんで、そこで城下町が出てくる?
「城下町が関係あるのか?」
ラハイテスが困惑した表情を見せる。
「トルテラ様の本拠地だと伺って……」
俺は、ピンときた。
なんか、すごくまずいことが起きている。
「ラハイテス、何の飛び地だ?」
「はぁ、トルテラ様の支配地ですが……何か……」
何かじゃねーよ!!
「おい、俺は、無職の老人だって知ってるよな。
それに、俺は、何事もなく平和に過ごしたいって望んでるって知ってるよな?」
「無職なのは神に職業が無いと言うだけの話です。
人々があなたをなんと呼んでるか知らないのですか?」
「なんか知らんが、よく神様扱いされるよ。
あと先代勇者とか大鎧とか。俺はそういうめんどくさいのは嫌いなんだよ!」
「今は竜王。連合領からランデルまでを含む、広大な領域の実質的な王です。
さらに竜まで従えています。今まさに、竜を使役しているではないですか!」
「俺は使役してねーよ!! 俺は無職の老人なんだよ!!
支配地なんか、知らねーよ!!」
「酷い。まるで領地には興味無いのですね。領主がそれでは領民が悲しみます」
「俺には領地なんか無いだろ」 そう答える。
それでもラハイテスは続ける。
「直轄地が城下町とランデルです」
「どうだ。面白いだろ」 リーディアだ。
知らぬ間に現世に復帰していたようだ。
俺には面白くないことばかりが目白押しなんだが。
「なるほど。話に聞いた以上に重症ですな」 ブロソススワーレンも参入してきた。
「ははは、愉快、愉快。まあ、あまりに簡単に手には入るものには、興味を持つ必要もありませんからな」
くそう、こんな横山三国志に出てきそうなやつにまで。
脳筋とか宴会王みたいのが、寄ってたかってバカにしやがって!!
俺はもう、横浜に帰りたい気持ちでいっぱいになってきた。




