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3DAYS  作者: 来生尚
6/20

2DAY・4

 儀式が終わって部屋に案内され、誰かが来るかもしれないから緊張して椅子に座っていたものの、廊下を人が通る気配すらない。

 食事です、と使用人と思われる女性が食事を持ってきてくれたきりだった。


 一人っきりでいる時間が長くなると、どうしても意識は自分へと向かっていく。

 ちゃんと、祭宮のウィズとは話せていただろうか。作法はあれで間違っていなかったのだろうか。

 いくら考えても答えが出てくるはずもないのに、そればっかりが気になる。

 いっそ誰かがダメなところを教えてくれたら、どんなに楽なことだろう。

 ああ、神殿でもっと色んな事を聞いておけばよかった。

 今更ながらに、そんな後悔で一杯になる。

 神殿にいる時は、何でこんなに怒られなきゃいけないんだろうって、最初から出来るわけもないのにって、教えてくれている神官たちに腹を立てたりしたけれど、全部自分自身のためだったんだって身にしみてわかる。


 いつも、そうだ。

 わかるのは後になってから。

 その時は感情に流されて、大事なことがわからない。


 でも、あと2日しかない。


 水竜も祭宮のウィズも、自分の道は自分で選べと言っていた。

 水竜の巫女になるのが当然だと思っていたのに。

 なることに対する不安はあるけれど、ならなきゃいけないと思っていたのに。

 今巫女様から水竜の言葉を聴いた時には深く考えたりしなかったけれど、ウィズの言葉を聞いて、自分できちんと考えて結論を出さないといけないんだって思った。


 後になってから、後悔しないように。

 自分でちゃんと決めなきゃいけない。

 感情に流されず、冷静に。


 祭宮のウィズの「辞退して結構です」と言い切った言葉は重たくて、お前なんかいらないって言われているような気さえしてきて、やっぱり自分じゃだめなんだって自己嫌悪した。

 最初神殿に呼ばれたときの高揚感は一瞬だけで、その後はずっと自分の至らなさに情けなくって、どうしたらいいのかわからなくって逃げ出したくなる時もあった。


 あなたは特別なんですって言われて、すぐに信じられる人間がいるのだろうか。

 少なくとも私は信じられない。


 自分の中の何が、他の人より優れているというのか。

 人よりちょっと自信があるのは、パンを作ることくらい。

 だけれど、それも物心ついた時からお店を手伝っていただけのこと。


 自分が特別だと、信じられるものが欲しい。


 それが努力して得られるものじゃない場合には、どうしたらいいんだろう。


「またいつものところに戻ってる」

 いつも神殿で考えていたことと、全く同じことを考えている自分に気が付いて呟いてみる。

 言葉にしてみると、妙に気持ちが冷めてくる。

 大きく溜息をつき、左に大きくとられた窓から外を見ると、外の景色はまるで別世界のように静かに穏やかに木々が揺れている。

 風に揺れる木の葉に目を奪われていると、少しずつ気持ちが落ち着いてくる。

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