ぼっち
あれから一週間が経った。
俺は一人冒険者ギルドの片隅で鍼灸治療をしている。
冒険者相手に疲労回復、腰痛、筋肉痛なんかが多い。
あとは町の住人の肩こり、腰痛、眼精疲労に頭痛なんかの治療もしている。
昔はほとんど治療に来る人なんていなかったが徐々に冒険者の中から疲労回復の治療に来る人が増え、その疲労回復に来る人の中で腰痛の人を治したところそこから他の治療も多くなってきた。
今日も薬師の方が眼精疲労で薬の色合いがわかりにくくなってきたので治療して欲しいと言ってきていたし、商人では長い間馬車に乗って移動するのは腰への負担が大きいらしく腰痛の方も多いようでここ最近はこの街による大きな理由は俺の鍼治療だという商人が現れ始めたぐらいだ。
そしてアカリ達はサダさんのパーティーとともに森の調査をしているのでここ五日ほおどあっていない。
森の中の調査のために野営しながら広範囲を調査すると言ったきり戻って来ないのだ。
正直普段うっとおしいサキやマフユの相手をしないで済むとセーセースルヨ。
いつも騒がしいから治療の仕事をしている間でも俺の横で「これ何に効くの?」「ねぇもう治った?ねぇねぇ」とうるさいのだ。
ただ普段から防具や武器のメンテナンスは俺が一手に引き受けているのが心配だ。自分たちでもできるように教えてはいるものもし今度俺がメンテするときに変な癖がついてたらどうしようか??サキならメンテをサボるんじゃないかと気が気出ない。
できればそろそろ持ってきて欲しいものなんだが……
いや決してぼっちが寂しいわけではないんだよ?
メンテしときたいんだよね。決して話し相手がいないことが寂しいってわけではない!!
少々そわそわしているのは最近冒険者の仕事をしていないからだ。アカリ達に会ってないことに不安は感じていないよ?
おそらく戦闘感?が鈍っていると怖いんだよ…たぶん。ほら一様俺も冒険者だし?メインはみんなの体調管理と装備のメンテでほぼほぼ荷物持ちだと言っても過言ではないが俺だって戦える。
それにしてもそろそろ補給に戻ってきてもいいと思うんだけどなぁ。
俺がそんなことを考えながら冒険者ギルドの隅っこから入り口をぼんやりと眺めているとサキがひょっこりと顔を出した。
おぉ!帰ってきたじゃん!!
やっと帰ってきたか!!ウンウン。装備のメンテしっかりしないと!!
いやぁいつもはうざったいサキでも今は嬉しい。いや寂しかったわけじゃないんだよ?
親しい人と会えるのは嬉しいものだ。あれ?でもなんでサキだけ?補給に戻ったとか?
いやいやそんなバカな!装備のメンテは大事だよ!!
アカリは?マフユは?サツキは?イクミは?
サダさん達の武器もたまには見とかないといけないと思うんだよな。
どこ?ねぇどこ?なんでサキだけなの?
もしかしてサキがアホすぎるから一人突っ走って帰ってきたとか?
いくら頭のネジが足りないからって一人でそんなことはないよな?
どこだろうか?
サキはギルドに入ってキョロキョロと辺りを見回すと俺を見つけて近寄って来る。
「ムーツキーン!!」
なんだろう?呼び方が変わったようだ。むかつく。
「久しぶり〜〜今日はみんなに頼まれて補給に来たら〜〜」
いつになったらこのおかしな口癖を治すのだろうか?
ってみんなに頼まれて補給だと??おいおいどうしたことか?
こいつ一人で補給だと?飛んだ冒険をしたもんだ!!
俺だったらまずありえない人選……いや!まてよ、こいつのこの性格をみんなが考慮しないわけがない。
しかも俺を探してたようだし何かあったのか?
なんだろう?考えろ!考えるんだ!!
とりあえず補給物資に何が必要なのか聞いて準備しながら考えることにしよう。
補給物資はほとんどは食べ物であとは装備のメンテ用の砥石やら油やらも含まれている。
もしかしてメンテ要因が足りないなんてことはあるのだろうか?
今の状況はどうなっているんだろうか?
サキに今の調査状況を聞いてみる。
「う〜ん。今はね〜黒い人と鬼ごっこしながらズバババ〜ンってしてるら〜。あとね〜魔物がね〜多くってね〜かくれんぼしながらわ〜って感じなんら〜」
こいつ何言ってんだ?もうそろそろしっかり喋って欲しいもんだ。
さて解読品いいといけないな。黒い人はたぶん怪しいと思われる人なんだろうが服装が黒いのか黒人のような人なのかってところだろうか?かくれんぼは尾行ではないだろうか?
怪しい人を見かけて戦ったけど魔物が多いから逃げられて追跡中ってところだろうか?
「あ!そうだ!!そういえばね〜領主様のね〜とこにいたね〜魔物もいたら〜。チューチュー」
ほぅほぅなるほど。ということは森の異変ってホーンラットの件と関わっていることはほぼ確定ってことでいいのかな?
となると領主様のとこに報告に行くべきなんじゃないだろうか?
「あとね〜ムツキにね〜このこというように言われてたら〜」
「どのこと?」
「ネズミ〜〜チューチュー」
はぁ疲れる。
えーっとネズミの件を俺に話せと言ってたってことは領主のとこに報告に行けってことだよな?
こいつをこっちによこしたのは俺に面倒見ろってことなんだろうな。あとは尾行に向いてないから邪魔者扱いされたってのが有力だな。とはいえ補給物資の買い付けも頼まれてることからみんなのもとに向かわないと行けないと。
優先順位は領主様に報告がサキじゃないだろうか?マジックバックがある以上まだまだ物資はあると思う。どんなに合成に消費していたとしてもあと一週間ぐらいはどうにかもたせれるんじゃないかな?
となると急いで領主様に報告して兵を集めるのがベストなんじゃないだろうか?
サキは他にも何か情報を持っているんじゃないかな?かなり今期のいる作業になるだろうが頑張って解読しようか。
解読を開始します!!
「えっとね〜初めは森の中にいるゴブリンとか狼とかを退治してたら〜。んでね〜草原の方からも森から出る魔物を食べに来た魔物がわ〜って来たから一旦二手にわからてガーーーってしてね〜アカリが探偵ごっこの邪魔されて怒ってたら〜あ!これ『しゅひげーむ』ってアカリにいわれてたんだった!!今のなし!今のなしだからね!!『しゅひげーむ』を守らないとアカリに怒られるら〜」
え〜っとその後もしばらくこんな会話が続きまして……とりあえず馬を借りて領主様に報告に向かうことにした。
サキにもそのことを伝えて同行するようにいうと「は〜い」と元気よくしたがってくれた。
頭大丈夫か?なんかどんどんアホになってる気がするんだが気のせいだろうか?