プロローグ: 星に願いを
初作品です。どうかお手柔らかにお願い致します。
原因不明の不治の病ということだった。
ここ最近の体の不調……主に足や手などが徐々に動かしづらくなっていたのだが、まさかね。
医者は俺を筋萎縮性側索硬化症とかいう筋肉が段々と痩せていく病気だ、と言っていたがそれは違うだろう。
一見して体に異常はない。
筋肉は一切痩せてない。
しかし動かせなくなっていく。
神経にも異常がない。
でも衰えていく。しかも全身の筋肉がほぼ同じ位の割合で機能低下を起こしているらしい。形状に一切の変化もないのに。
治療方法も分からず、大学病院の医者は頭を抱えていた。
対照的に俺は落ち着いていたが。
そんなに冷静なのはもしかして:脳機能の低下?とも思われたがそんなことはない。
毎日、本も読めている。看護師の介助あってこそだが。
今では電子書籍のフリックすらできない。ベッドの上に死体のように寝転んだまま寝返りも打てやしない。
思えば今までの人生25年間は大変だった。
借金残して蒸発した義父に浮気相手と心中した義母。
ああ、俺は養子ね。孤児院出身。義親の親戚も音信不通。
頼れる人はいなかったけれど、なんとか頑張って高校卒業して即就職、それから身を粉にして働いた。 2回ほどリストラされてもめげなかった。
そして3社目の勤め先で安定して働けるようになった矢先にこれ。
しかも昨日電話があって、クビ。入院したのを報告した時に新種の難病ですなんて言っちゃったのがまずかったかな。でも俺みたいな地雷人材、普通は切るよな。
こんな感じで生きてきて、そして余命宣告されてもピンとこなかった。
数少ない友人は悲しい顔をしながら、俺だったら自殺するなんて言ってたっけ。
でも俺は自殺だけはしなかった。
なんでだろう。
勿論死にたいなあなんて漠然と思ったことはあったけれど。それでもネットで練炭自殺について検索したり、電車のホームで黄色い線の向こう側に行ってみたりとかはしなかった。
それってやっぱり、誰よりも生への執着があるからかね。
生きてれば、なんでもとは言わないけれどなにか出来る。死んだら何も出来ないよ。
誰の言葉だっけかな。
そんなことを思いながらベッドに横になっている。もう深夜2時だ。
さっきから落ち着かない。それは決して股間にある我が息子の位置が気持ち悪いからだとか、最近自家発電できていないからとかではない。
なんだか眠れない。
病室の窓から夜の星空を見上げる。
幸いにして都会の病院ではないため、満天の星を臨める。
首だけはまだ辛うじて動かせてよかった。といっても視界の下らへんは俺に繋がれた無数のチューブとかが占拠しているのだが。まあ仕方ない。自発呼吸も厳しいしな。
毎晩カーテンは閉めないでくれ、と入院初日に言っておいたかいがあった。
今ではイエス・ノーを指先の静・動で意思表示するということになっていて、こちらから質問や頼みごとは不可能だ。
集団部屋ではなく個室だったのも俺に運が向いていた。
まあ世界で初めての症例らしいからな。感染症ではないが何かあると大変だから、ということで隔離だ。そこらへんは病気に感謝感謝。
ふと一筋の光が空に走った。流れ星だ。
いや、1つじゃない。
2つ目。3つ目。どんどん増える。なんだこりゃ。
こんな流れ星の大群見たことない。流星群だ。すごい。綺麗だ。
だから俺は願ってしまった。
流れ星が流れて消えるまでに願い事を3回唱えれば叶うというアレ。
それを試してしまった。どうせ死ぬならやってもやらなくても変わらない。ならば、と。
死にたくない。死にたくない。死にたくない。
どうせ死ぬなら、なんて思っているくせに。矛盾している。
この2時間後、俺の心肺機能は完全に停止した。




