人が人を変える。
教室はいつも騒がしく、生温く、居心地が悪くて苦しみさえ感じた一人の女子は廊下へ出ていった。
ここ2週間、その女子、ひかるは同じことをしている。
退屈で仕方ない日々から抜け出したい願望だけはあるのに、何も出来ないやるせなさをひかるは感じられずにはいられなかった。
四月某日、ひかるはまだクラス内で人見知りをしていたために周りがどんどん仲良くなっていくことで居場所が消えつつあった。
クラスでのグループLINEができた噂は聞いたが、まだ誰ともLINE交換ができておらず、ただ面白くもない日々がうんざりするほど続いていたのだった。
でも、この日は違った。
友達があまりいないのに理由もなく適当に作ったTwitterのアカウント、そこに隣のクラスの男子からフォローされていたのだった。
それが、航だった。
この先の三年間で関わるかもな、とフォローバックするや否やダイレクトメッセージが飛んできてそれはもうひかるは引いた。
(チャラいな…何者だよ?)
ただでさえ中学生の頃に沢山のゴタゴタで人間関係が疎かになり、できるだけ避けて生きてたひかるなので警戒しかしなかった。
でも、次の相手の一言で印象が変わったのだった。
「ひかるちゃんは何組?」
なんで印象が変わったか
それはひかるだけにしかわからないが
友達にすら下の名前を呼ばれなかった子だから、下の名前を呼ばれたことに嬉しさを感じたのだった。
(何この人…優しい!)
なんだ、そんなことか。
と思うかもしれないが、これはひかるにとっては大きいことだった。
しかも隣のクラスだった。
話をしてみれば、中学の頃の友達よりも話が通じた。しかも長く続いた。
そうして二人は、この2日後にはLINE交換もしていた。
ひかるが高校入学して初めてのLINE交換だった。
LINE交換してから、同じ時間の電車にいた事が判明した。
お互いに顔を知った後で、ひかるは毎日のように駅で航の姿を見た。
今まで関わった友達とは比べ物にならないくらいに優しい航に関わったことで、ひかるは人と関わることを覚えたのだった。
気付いた時には、航とのLINEが日々の楽しみになっていた。
同時に、中学の頃の友達が想像できないくらいに、ひかるは変わったのだった。
五月の頭、たまたまひかるはバイトが終わって、航は学校帰りで偶然にも駅で会う機会があった。
航は背丈が170センチなく、ひかるは160センチと少しあり、あまり見上げることはなかった。
航の照れた笑顔は、ひかるは今でも忘れていない。
LINEでは色々なことを話した。
その割に直接話すことはあまりなかった。
お互いクラスが違うのもあるし、友達付き合いがあったからだろう。
五月後半、ひかるはついに気付いたのだった。…航に恋したことに。
そこからひかるは変わった。
自虐を辞め、自分を大切にすることにした。




