風にゆられて、川に向かいて
本日の天気は、まことにへそ曲がりでありました。
歩くのすら嫌になるほどの強風が吹き荒れたかと思えば、ふっと不気味に風がやみ、今度は肌にまとわりつくようなじめじめとした湿気が押し寄せる。
そんな定まらぬ空模様のなか、私の心のなかにぽつり、ぽつりと浮かんだ三つの句を、よしなしごとと共に書き留めておきます。
一句目
海風や カラスを乗せて 河下り
強風に煽られながら川沿いを歩いていると、ふと視界に入ったのは、流れに身を任せてくだる一艘の舟。その舳先だか屋根の上だかに、一羽のカラスがちょこんと留まっている。
吹きつける風は、すでにどこか海の匂いを孕んでいる。カラスよ、お前もこの風に嫌気がさして、舟をタクシー代わりに決め込んでいるのか。
自然の気まぐれに抗わず、ただ風と流れに運ばれていくその姿に、なんだか妙な可笑しみと、どこか悠々とした風情を感じたのであります。
二句目
船頭よ いずれを渡る 信濃川
カラスを乗せた舟を見送りながら、目を日本一の大河・信濃川へと転じる。
これほどの大風だ、水面もさぞや波立っていることだろう。そんななかを突っ切る船頭に向かって、「おいおい、この風の中で一体どっちの岸へ連れて行く気だい?」と、あえて軽口を叩いてみたくなる。
人生もまた、今日のような予測不能な強風に晒されることばかり。ならばいっそ、行く先は風任せ、船頭任せ。じたばたせずに大河の流れに身を委ねるのも、悪くない。
三句目
大風に 旗色あしき 舟揺られ
しかし、そう達観したふりをしたところで、現実は非情である。
ふっと風がやんだかと思えば、今度は息が詰まるような湿気が満ちてくる。再び吹き荒れる突風に、舟の旗はちぎれんばかりに翻り、波に揉まれてぐらりと傾く。まさに「旗色あしき」窮地。
歩くのすらつらい今日の天気に、翻弄される人間の小ささを突きつけられるような心地がいたしました。
だが、揺られながらも舟はまだ沈んではいない。この嫌な天気を耐え抜いた先に、きっと穏やかな水面が待っていると、そう信じたいものであります。
いつも応援ありがとうございます。
本日は、本作をリアルタイムで追いかけてくださっている皆様へ、すでに【完結済】となっている、私のもう一つの歴史小説をご案内させてください。
屋島の海に舞った紅の扇を射落としたことであまりに有名な英雄・那須与一。
もしも彼が「英雄になりたくなかった、一人のストイックな職人」として、ただただ一族の泥臭い生存を追い求めていたとしたら――。
■ 完結済『風を読む ―那須与宗隆 手塩の弓』
大冷山から吹き下ろす「那須おろし」は、飢えた者の肌を容赦なく削る。
後世、人々は彼を英雄と呼ぶでしょう。だが、彼が真に射抜こうとしたものは、名誉でも英雄の座でもありませんでした。それは明日の飯であり、引き裂かれた血族の再会であり、「那須の人間は、しぶてぇんだっぺ」と笑い飛ばす、終わりのない一族の生存そのものでした。
華やかな源平合戦の影で、弓という「道具」一つを武器に、時代の嵐を読み解き、八百年の未来を射抜こうとした一人の職人の物語です。
すでに最後まで一気読みしていただける状態になっております。「那須一族のしぶとさに勇気をもらった」と感じていただけましたら幸いです。ぜひこちらのURLから、那須の荒野の風を感じてみてください!
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