小説を書き始めた頃詠んだ句です。
卯月の風に誘われて――越後散歩道の回想
今年から小説を書き始め、日々の散歩道でふと指を折っては、言葉を紡いでおります。
学生の頃に少しばかり手ほどきを受けた俳句も、今ではすっかり作法を忘れ、ルールも知らぬ素人句ではございますが、拙作の間に吹く一陣の風となれば幸いです。
早いもので、俳句を添えた投稿も今回で十七回目を数えることとなりました。
今回は、あの日歩いた道のりを振り返り、五つの句と共にその情景を認めてみたいと思います。
新潟の春は、いつも足踏みをしながらやってまいります。
三寒四温。暦の上ではとっくに春だというのに、見上げる空にはまだ、あの冬特有の重く鈍い雲が低く張り出している。
冬雲の 低く居座る 卯月かな
散歩道を歩けば、風の冷たさに首をすくめ、つい「寒い、寒い」と独り言が漏れてしまいます。
鳴きどりが 寒い寒いと 急き立てる
灯油の値段に溜息をつき、食卓の米を惜しむような、少し窮屈な現実。
けれど、ふと目を向けた河原には、そんな私の憂いを吹き飛ばすような景色が広がっておりました。
溜息の 糧を惜しめど 花は咲く
そこには、寒さに負けじと咲き誇る花々と、我先にと声を競い合う鳥たちの姿。
命のエネルギーが、春の陽光とともにあふれ出しています。
百鳥の 声競い合う 花畳
そんな鮮やかな情景に誘われるように歩を進めると、不意に小さな女の子が「こんにちは」と声をかけてくれました。
その愛らしい笑顔に、冬の寒さで固まっていた心がふわりと解けていくのを感じます。
こんにちは 凍てし心に 稚児の風
冬の名残に震えながらも、確実に春はここにある。
鳥の声に導かれ、可愛らしい出会いに心温められた、卯月のある日の散歩道。
私はまた、この町で巡り来る春を、愛おしく思うのです。
いつか、この風土を舞台にした時代小説を書きたい――。
そんな願いを抱きつつ、歩みを止めずにおります。




