越後の春の 散歩道
大河と汐風の街を、腰をさすりながら歩く「新潟市が、政令指定都市の中でも人口減少が厳しい」そんなニュースを耳にすることがあります。確かに、街を歩けば空き家が目に入ったり、かつての活気が懐かしく思えたりする瞬間もあるかもしれません。けれど、30分も歩けば日本海に出られるこの街には、数字では測れない「豊かさ」が今も変わらず流れています。そんな新潟の初夏を、私の拙い句とともに歩いてみませんか。…堤防で 花火思いし 空の碧…信濃川の堤防に立つと、ふと夏の夜の熱狂を思い出します。でも今は、吸い込まれるような昼間の青空(碧)が主役。かつての記憶を抱きながら、今の静かな空を見上げるのも悪くありません。…指をみて 数えできたぞ 春景色…足元を見れば、名もなき草花や柔らかな陽光。指を折りながら「あ、ここにも春が」と数えて歩くだけで、心に少しずつ灯がともります。…薫風や 薄れる白の 飯豊山…橋の上から遠くを望めば、飯豊連峰の雪が少しずつ解け、夏の準備を始めています。緑を揺らして吹く風は、冬を乗り越えた私たちへのご褒美のようです。…海鳥が 汐風運ぶ 八千代橋…萬代橋を渡り、八千代橋にさしかかると、風の香りが変わります。川の匂いから、少し塩気を帯びた海の匂いへ。海鳥が連れてくるその風は、この街がずっと刻んできた長い年月を教えてくれるようです。…山蒼し 風押されゆく 大河かな…目の前には日本一の大河、信濃川。滔々と流れる水に、吹き抜ける風さえも押し流されていくような圧倒的なエネルギー。この流れを見ていると、「消滅する街」なんて言葉がどこか遠い国の話のように思えてきます。…散歩道 顔赤らげて 童ゆく…ふと横を見れば、一生懸命に歩く子供の姿。初夏の光を浴びて頬を赤くしたその足取りは、この街の新しいリズムそのものです。…そよ風や 腰にはひびく 帰り道……なんて、格好いいことばかり言っていられません。一時間以上も歩けば、帰り道は腰にずしりと疲れがきます(笑)。でも、この「ひびき」こそが、自分の足でこの街を歩いた証拠。新潟は、派手な観光地ではないかもしれません。でも、空の色、川の音、そして道ゆく人の体温を、こんなにも近くに感じられる街です。ぜひ、一度遊びに来てください。特別なものは何もないけれど、指を折って数えたくなるような美しい景色が、あなたを待っています。




