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25.決定! これからの方針

「お前って結構図太いよな……」

「そう?」


 先程、スターレッドにもらった機器を確認する。

 なんだろう、この文字。見たことないし、ネットで調べても出てこない。


 でも、これは今日の唯一の戦利品なんだから、大切にしなきゃね。

 念のため、機器を糸に包んでおく。こうすれば盗聴対策にもなるのだ。


「結局、何も話が進まなかったね」


 スターレンジャーの正体も目的もわからずじまい。

 スターレッドは協力してもいいって言ってたけど、なんかうさんくさいし、黒田博士のことも薬のことも言い出せなかった。

 おまけに、ジョーカーのことを調べるという宿題までできてしまったのだ。


「そもそも勢いでなんとかなると思ってたのがよくなかったんだわ。やっぱりこういうのはちゃんと考えて行動しなきゃダメね」


 知り合いだってことに甘えてたのよね。正体をバラさなかったから、ほぼ初対面同士の会話になっちゃったし。


 私がウンウンと頷きながら反省していると、龍司が何か言いたげな表情で私を見た。


「何? どうかした?」

「いや、別に。勉強になってよかったな……」

「うん……?」


 お疲れかしら? 今日は、大変だったものね。


「それにしても、彼ら一体何者なのかしら?」

「お前の友達なんだろ」

「それはそうなんだけど、どうしてジョーカーのこと知ってるんだと思う?」

「ハッタリって可能性もあるぞ」

「そんな風に感じた?」

「いや……。嘘を言っているようには見えなかった」


 そうよね。逆に私たちがジョーカーのこと知らないのを驚いているようだったし。


「だが、その割には俺らのことはよくわかってねぇようだったな……」

「スカウトとか言ってたもんね」

「ああ。だいたい、レーダーでちまちま怪人を倒して回っている時点で、ジョーカーのこと大して知らねぇはずなんだ。なのに、あいつらのあの口ぶり……。一体何なんだ?」


 龍司の言うとおりだ。スターレンジャーはジョーカーが四羽グループだってこと、きっと気付いていない。知ってたら、こんな面倒な方法とらないもの。

 それなのに、ジョーカーの目的やら首領やらは知っているような口ぶりだった。正直、意味がわからない。ちぐはぐっていうか……。


「あいつら、誰の命令で動いているんだろうな?」

「誰の命令って?」

「お前の話が本当なら、奴らは高校生なんだろ? なら、裏で手を引いている人間がいるはずだ」

「それは……そうね」


 同意しつつも疑問に思う。


 スターレンジャーの裏にいる人物。そんなの黒田博士以外にいるのかしら?


 “星座戦隊スターレンジャー”の冒頭部分を思い出す。


 ある日突然、キラキラ輝く光が星野紅一たちの前に現れ、告げる。


 ――君たちは星に選ばれた戦士だ。この星がジョーカーのせいで危機に瀕している。彼らの魔の手からこの星を救ってくれ――と。


 その光に導かれ、彼らは不思議な力を手に入れ、スターレンジャーとしてジョーカーと戦うことになるのだ。


 キラキラ輝く光……。さすがにそれはないわよね。あまりにも現実離れしているもの。


「あいつらがいくらお前の友達で、お前に対して好意的であったとしてもだ、裏にいる奴がそうでなかったらどうしようもねぇ。それはわかっとけよ」

「……うん」


 紅一君たちが誰かの命令を受けて動いているとしたら、確かに彼らの一存では私に協力できないだろう。


 なにはともあれ、彼らの協力を得るためには、ジョーカーについて調べなくてはならない。

 ジョーカーの目的、できれば首領の正体も……。


「ねぇ、龍司。私、ジョーカーのこと調べようと思うの」

「まぁ、当然そうなるよな」

「それでね、それで……」

「なんだ?」


 不思議そうな顔をする龍司。

 私は勢いよく、彼の前で両手を合わせた。


「お願い! 私を手伝って」


 事前に龍司には釘を刺されていた。

 話し合いも全然うまくいかなかった。

 でも、ここであきらめることなんてできない。


「私やっぱりあきらめきれない。まだできることがあると思うの。でも私一人じゃ……。今日思ったの。龍司がいてくれてよかったって。龍司なら、私が間違ったらちゃんと止めてくれるもの。だから、その、私を助けてほしいの」


 いつも迷惑をかけているという自覚はある。危ないことに巻き込んでいるという自覚も。

 でも、私には龍司の助けが必要だ。


「……」


 彼はしばらく黙って私を見ていたが、なんてことのない調子で切り出した。


「いいぜ、別に。最後まで付き合ってやるよ」

「ホント?」

「何だ、今さら。いつも付き合ってやってるだろ?」

「それはそうだけど、今回のは内容が内容だから……。命がけだし」

「それこそ今さら、だろ? 命がけがなんだ。俺ら、ジョーカーの大幹部なんだぜ?」


 龍司が不敵に笑う。その自信満々な様子。

 思わず笑顔になる。


「……うん! ありがとう、龍司」

「おう」


 気持ちが軽くなるのを感じる。

 龍司がいてくれてよかった。


「それで、これからどうする気なんだ?」

「とりあえず、スターレンジャーが言ってたことを調べようと思ってる」

「ジョーカーの目的、できた理由、首領の正体か……」

「うん。今まで、ジョーカーはそういうものだと思って深く考えたことはなかったけど……」


 私、ジョーカーは四羽グループが私腹を肥やすために作った組織だって思ってた。

 やっていることと言えば、薬の密売、武器の密輸入。人体実験に紛争地域への軍(怪人)の派遣。どう考えても私利私欲で悪事を働いているようにしか思えないもの。


 でも、もしかしたらそれは間違いだったのかもしれない。


「奴らが言うように、俺ら大幹部でさえ何一つ知らねぇのは異常なことかもしれねぇな」


 それはそうかもれしれない。でも、仕方ない部分もある。だって、知ったところで組織を抜けれるわけじゃないんだもの。考えるだけ無駄だと思ったの。


「知っているとしたら、元老院の奴らか……」

「カマキリソルジャーはどうかしら?」

「どうだろうな? あいつも大して知らなさそうだけどな」


 カマキリソルジャーは怪人達のトップだけど、権限はほとんどないもんね。四羽商事で働いてはいるけど、自ら希望してここにきたわけじゃないし、重要なことは知らされていない可能性が高い。


「……お前の親はどうだ? ジョーカーの研究者だったんだろ? 何か聞いてないのか?」


 龍司がふと思い出したように尋ねる。

 私の親ね……。


「それが、小さい頃に死んじゃったから、何をやっていたのか詳しく知らないの。よく覚えてないし……」

極楽(ごくらく)博士なら何か知っているかもしれねぇが……」

「アイツと話すのは絶対に嫌! 龍司もやめといた方がいいわよ、不快な気分になるだけだから」


 極楽博士は怪人の生みの親。すべての元凶。ジョーカーの不幸生産機だ。


「俺なんかは会ってももらえねぇよ……。仕方ねぇ。とりあえずジョーカー内で情報収集してみるか。昔からいる怪人はもしかしたら何か知ってるかもしれねぇ」

「一番昔からいる怪人は私よ!」


 何を隠そう、私は初期の怪人手術の成功例なのだ! ジョーカー歴は一番長い。


「お前、何も知らねぇだろうが」


 龍司がすかさずツッコむ。

 ……仕方ないの、子どもだったから。


「スターレンジャーの方から探っていくという手もある。あいつらの正体、俺に言うつもりはねぇか?」

「言わない。だって、龍司、スターレンジャーと手を組むの反対なんでしょ」

「まぁな。そういえば、お前のことは奴らにバレてねぇんだよな?」

「うん、大丈夫だと思う」


 スターレンジャーには、スパイダーレディの正体が生富綾ってことはバレていないはずだ。


「なら、そっちから奴らを探れ。それと、言うまでもねぇことだが慎重にやれよ」

「わかってる。気付かれないよう注意するわ」


 でも探るっていっても難しいのよね。

 あまりつつくとやぶ蛇になりそうだし。


「俺はとりあえず秋舘(あきだち)に聞いてみようと思っている。ジョーカー内の情報は全てあいつに集まるからな」

「秋舘に聞きに行くのなら私も一緒に行くわ。アイツに用事があるの」

「秋舘に用事? プライデー関係か?」

「まぁ、そんなとこ。アイツのとこに行くときには、私にも声かけて」

「それはいいけどよ。あまり感心しねぇぞ。人の秘密を売るのは」


 ちょっと! 私がそんな悪趣味なことするわけないでしょ。


「違うわよ。私は記事を提供しに行くんじゃないの。抗議しに行くのよ!」

「また変な記事載せられたのか? あいつ本当にどうしようもねぇな」

「まったくよ。一度シメておくべきだと思うわ」


 私の個人情報をどこから仕入れたのか吐かせないとね。

 大幹部をなめるとどうなるか、わからせてやるわ!


「おい、大丈夫か?」


 私が怒りに燃えていると、龍司が不安そうな顔をする。

 不穏な空気を察したらしい。


「もちろん大丈夫よ! 私はスターレンジャーを、龍司はジョーカーを探る。首領の正体は下手に探らない方がいいわね。危険だもの。お互い無理はせず、慎重に行動する。それでいい?」

「おう」

「スターレンジャーに対しては、とりあえず保留ね。彼らのこと、ジョーカーには黙っててくれるんでしょ」

「ああ、今のところはな」

「よし! 今後の目処もたったし、今日は帰って寝る! これが一番ね」


 早く帰って、ベッドの上に倒れ込みたい。


「俺もさすがに今日は疲れた……」


 龍司の声は、かつてないほど実感がこもっていた。


◆◇◆◇◆


(スパイダーレディとドラゴンフライヤーが裏切り……)


 彼は部下からの報告に驚きを隠せない。


 一体どういうつもりなのだろうか? 

 “裏切り者には死を”、ジョーカーの掟を知らないわけではないだろうに。


(どちらの発案だ? ドラゴンフライヤー、いやスパイダーレディか……?)


 ドラゴンフライヤー。あの男は、ああ見えて慎重なところがある。それにスターレンジャーを頼るなど、彼の性格上ありえないだろう。

 だとしたら、スパイダーレディの方か。確かに、彼女の最近の行動には不審な点があった。ジョーカーに隠れて何かをやっているようだ。


 スパイダーレディが動けばドラゴンフライヤーも動く。あの二人の行動は、いつもワンセットだ。今までの経験上、間違いない。


(あいつも苦労するな……)


 ついドラゴンフライヤーに同情してしまう。


 スパイダーレディはこれまでも突飛な行動をして、周囲をかき乱すことがあった。後始末をするのはいつもドラゴンフライヤーの役目だ。今回も、おそらくスパイダーレディに振り回されているのだろう。


 それにしても、今回のスパイダーレディの行動には違和感が拭えない。スターレンジャーと協力……。よくもあんな連中を信じる気になったものだ。それとも彼女は自分の知らない情報を何か掴んでいるのだろうか?


(……さて、どうする?)


 これはまたとない好機か? それとも……。


 彼は一人、考える。

次回、日曜日に更新。

「追憶! 思い出の中に」

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