04.集合! スターレンジャー対策会議③
皆の視線が私に集中する。
「わ、私?」
自分を指さして、情けない声を出してしまった。
……いや、よく考えたらこれは好都合かもしれない。スターレンジャーのこと、他の怪人に任せるわけにはいかないし。
この任務、引き受けるべきね。返事しなきゃ、そう思ったその時――
「おい、本気でこいつに任せる気じゃねぇだろうな?」
龍司が鋭い声を出す。カマキリソルジャーが眉をひそめた。
「なんだ、ドラゴンフライヤー? 文句でもあるのか?」
「なんだじゃねぇよ。スターレンジャーは強いって言ってんだろうが。こいつには無理だ」
「今回はあくまで偵察任務だ。ヤツらと戦う必要はない」
「場合によっちゃあ、戦うことになるかもしれねぇだろ? こいつ戦闘はからっきしなんだぜ。しかも、色々と抜けてるしよぉ」
「ちょっと、抜けてるってどういう意味よ?」
聞き捨てならないわ、その言葉。
「どうって、そのまんまの意味だろ」
しれっとした顔で龍司が言う。
「失礼ね! 私は抜けてないわよ。任務だっていつもきっちりこなしてるんだから」
「いいや。お前は肝心なところでいつもミスをする。この間の任務だって、書類間違えてただろうが。バッチリだって言ったくせによ」
「あ、あれは書類が紛らわしかったんだもん。権利書なんて見たことなかったし。責任取って、ちゃんともう一度取りに行ったでしょ。そんなこと言うなら、りゅ……ドラゴンフライヤーだって」
「俺が何だよ?」
「ジョーカーの構成員を敵と間違えて、ケガさせたくせに」
「ありゃ、紛らわしい格好をしていた構成員が悪い。俺のせいじゃねぇ」
「りゅ……ドラゴンフライヤーが人の言うことちゃんと聞かないからでしょ。いつも先走って行動するんだから」
「うっせぇな。俺はくだらねぇ話を聞くのが嫌いなんだよ」
「大事な話も聞かないくせに」
「うるせぇ。どうだっていいだろ、そんなこと」
「よくないわよ。皆迷惑してるんだから」
「あ? 誰が迷惑してるって?」
「皆よ、皆」
「皆って誰だよ?」
「そりゃ……」
言い返そうと口を開いたその時、突然鈍い音が響き渡り、机が揺れた。
わ! な、なに?
思わずビクッと体をすくめ、音がした方を見る。
「お前ら、いいかげんにしろ。遊びじゃないんだぞ」
怒気を含んだ声。凄まじいまでの威圧感。
……やばっ。カマキリソルジャーがキレてる。
黙って姿勢を正す。
龍司はカマキリソルジャーを忌々しそうに睨んだ。
「ドラゴンフライヤー。スパイダーレディに任せられないというのが、お前の意見だな」
「……ああ。こいつ一人じゃ、戦闘になった時に対処できねぇ。だから俺がついて行く」
えっ、それって……。
「つまり、ドラゴンフライヤーが私についてきてくれるの?」
「ああ」
不機嫌そうな声。
……なんだ、心配してくれたのね。
それなのに私ったら……。
龍司の気持ちはとても嬉しい。でも……。
「やっぱり、私一人でなんとかするわ」
「はぁ? なんでだよ」
納得いかないといった表情をする龍司。
「だって、スターレンジャーは怪人を感知できるレーダーを持ってるかもしれないんでしょ?」
「それがなんだよ?」
「なら、ヤツらを探るのも人間の姿で行動する必要があるわ。怪人の姿になればすぐにバレてしまうもの」
「それは……そうだろうな」
「そうなってくると、ドラゴンフライヤーは能力のほとんどを使えないことになる。人間の姿じゃ、空も飛べないでしょ。スターレンジャーの偵察には向かないわ」
「……」
「私なら人間の姿でも能力を使うことができる。一人の方が気付かれにくいと思うの」
「だが、奴らに気付かれたらどうする? 5人を相手に逃げ切れるのか?」
5人相手か……。逃げるだけなら大丈夫だと思うけど、確かに不安ではある。
私はカマキリソルジャーの方を見る。
「ねぇ、カマキリソルジャー。今回の任務、中幹部を動かしてもいいの?」
「もちろん構わない。これは最優先任務だからな」
「なら、中幹部にも手伝ってもらうわ。私一人では手に余りそうだもの」
中幹部がいれば心強い。きっとなんとかなるだろう。
「ね、ドラゴンフライヤー。私一人でやるわけじゃないの。これなら安心でしょ?」
龍司は返事をしない。まだ難しい顔をしている。
「カマキリソルジャー。この任務、私が責任を持って引き受けるわ」
「……俺は最初からお前に任せるつもりだったが、ドラゴンフライヤーの言うとおり危険な任務だ。大丈夫か?」
確かに、スターレンジャーを追跡するのは危険ではある。でも、これは絶対に私がしなくてはならない。他の大幹部の連中に首をつっこまれると困るのだ。
「もちろんよ。任せておいて」
「そうか。なら、スパイダーレディ、お前に任せる。スターレンジャーから情報を引き出せ。戦おうとは思うな。ヤツらを捕まえるのは情報収集した後だ」
「わかったわ」
「おい、何勝手に決めてるんだよ」
「ドラゴンフライヤー、お前もわかっているはずだ。俺たちの中でスパイダーレディが一番、今回の任務に適しているということは」
「ドラゴンフライヤー、私は大丈夫よ。心配しないで」
龍司は何か言いたそうな顔をしたが、結局何も言わなかった。
「決定だな。この件はスパイダーレディに一任する。皆もいいな」
反対意見は出ない。龍司はむっつりと押し黙っている。
「それで、いつまでに調べればいいの?」
「早ければ早いほうがいいが、最終期限は次回の大幹部会議の時だな。その後に、元老院に結果を報告することになっている。やり方はお前に任せるが、無茶はするなよ」
ということは、だいたい一ヶ月くらいか。
「わかったわ。ちなみに、私の部隊を動かしてもいいわね?」
「ああ、構わない。だができるだけ他の任務に支障がでないように頼む。経過報告も忘れるなよ」
「ええ、わかっているわ」
「俺も、ジョーカーの情報網から何か手がかりがつかめないか探ってみる。怪人たちにも引き続き、スターレンジャーには注意するように指示をしておくつもりだ。それから、ヤツらに探知されてしまうかもしれないから、怪人化するときは慎重にな」
カマキリソルジャーの言葉に、私とB・Bが頷く。
龍司はまだふて腐れている。ビーはというと……寝ている。
「何か質問はあるか?」
誰からも質問はあがらない。
「次回の大幹部会議も全員出席するように。それからスパイダーレディは後で俺の執務室に来てくれ。伝えることがある。では、今日はこれで解散する」
カマキリソルジャーがビーを睨みつけながら、会議の終了を告げた。
◆◇◆◇◆
「龍司、さっきはごめんね。でも、私大丈夫だから」
会議が終わるとすぐに、龍司の近くに駆け寄って謝る。
「……」
む、無言。
やだ、そんな恐い顔しないでよ……。
「えっと、その……」
何かしゃべらなきゃと思うけど、うまく言葉が出てこない。
「あのね、龍司……」
どうしよう?
彼はまごつく私を見て、大きくため息をついた。
「……お前、本当に大丈夫なんだな?」
仏頂面で聞いてくる。声も低い。
「う、うん! 大丈夫! 任せて!」
……声がちょっとうわずっちゃった。
「何かあったら、俺に言うんだぞ。わかったか?」
「うん。困ったことがあったら、すぐに龍司に相談する」
「……なら、いい」
どうやら少しは納得してくれたらしい。
もう、大丈夫かしら?
……さっきよりはマシだが、まだ機嫌が悪そうだ。
「で、お前どうするつもりなんだ?」
どうすると言われても……。正直、何も考えていない。ノープランである。
「それは、これからじっくり考えるつもり。あの、龍司」
「ん、なんだ?」
「私の知らないところで、スターレンジャーと戦ったりしないでね」
「はぁ? なんだ、いきなり?」
「だって、ヤツら危険なのよ。5人に囲まれたら、いくら龍司だって」
必死で言う私。龍司は怪訝な顔をする。
「……これからスターレンジャーと接触するのは俺じゃなくて、お前の方だろ?」
「そうだけど……。でも、なんだか嫌な予感がするの」
「嫌な予感ってなんだよ?」
それは……。
「嫌な予感は、嫌な予感よ。それ以外に言いようがないわ」
「……」
「な、なに?」
なによ、その目は。
「……お前、俺に何か隠してるだろ?」
「えっ、なにが?」
「とぼけんなよ。お前がそういう態度をとるときは絶対何かあるんだ」
「なんのことよ?」
すっとぼける私。龍司の目が険しくなる。
「そんなごまかしがこの俺に通用すると思っているのか? いいから、さっさと白状しろ」
「いいがかりはやめて。何も隠してなんかないわ」
「へぇー……」
冷ややかな視線。うっ、まずい。
「私カマキリソルジャーに呼ばれてるから、もう行くね。とにかく、スターレンジャーには気をつけてよ」
それだけ言うと、クルリと身をひるがえし、部屋の外へと向かう。
「あ、おい! まだ話は終わってねぇぞ」
……無視!
「おい、こら! 待てって言ってんだろ! 綾!」
なおも後ろから声をかけてくる龍司を無視して、私は逃げるようにしてその場を去った。
次回、木曜日に更新。
「不穏! 裏切り者の動向」




