03.集合! スターレンジャー対策会議②
どうやら龍司はスターレンジャーと交戦したらしい。スターレンジャーの強さは思った以上のものだったようだ。小幹部のアリ男がほぼ一撃だって。
でも……。私は、アリ男の姿を思い浮かべる。確か、怪人の中では、結構強い方じゃなかったっけ?
「アリ男って、小幹部だったわよね、確か。B・Bの部隊の……」
「ええ、そうよ。今、ケガの治療を行っているわ」
「アリ男って、そこそこ強くなかったっけ?」
私の質問に、B・Bが神妙な顔で頷く。
「そうね。怪人の中では強い方よ。特にパワーはずば抜けていて、全怪人の中でも上位に入るでしょうね」
「だがその攻撃を受けたスターレンジャーはピンピンしてたぜ。ということはだ、奴らに普通の攻撃は大して効かないってことだな」
龍司が顔をしかめる。
「それって、怪人並みの丈夫さってこと?」
思わず聞き返してしまう。
わかっていたことだけど、にわかには信じがたい。
「それだけじゃねぇ。パワーも怪人並みだ」
パワーも……。
龍司の言葉に皆がシンとする。
無理もない。今までそんなヤツらが現れたことはなかった。怪人はジョーカーの技術力の結晶なのだ。それに匹敵する力など、存在するはずがない。少なくとも皆はそう考えていたはずだ。
「そんなことありえるのかしら? ねぇ、カマキリちゃん?」
「……俺たちと同じように、肉体を改造しているのかもしれない」
「ありえるな。というより、それしかねぇんじゃねぇか? 普通の人間にあんな力出せるかよ」
龍司もカマキリソルジャーの意見に賛成のようだ。
「でも、肉体改造だなんて、簡単にできるものなの?」
つい疑問が口をついて出る。
実は気になっていることがあるの。私は、今までスターレンジャーの強さは、あのスーツのおかげだと思っていた。
でも、桃ちゃんのあのパワー。大の男を片手で軽々と持ち上げていた。
つまり、“スターレンジャーは変身しなくても強い"ってことなのよね。
……彼らは、一体どうやってあの力を手に入れたんだろう?
舞の記憶には、そういった描写がなかった。戦っているのはいつも変身後だったし。
「普通は無理でしょうけど、私たちという前例があるんだから、ありえないことじゃないわ。あとは、そうねぇ。ジョーカーの技術がどこかにもれたとか?」
B・Bの言葉にカマキリソルジャーが同意する。
「確かに、スターレンジャーが俺らと同じ怪人だという可能性はあるな。逆に本人ではなくスーツが特殊である可能性もあるが……。なんにせよ、高い技術をもった人間や組織は限られている。ジョーカーの情報網から探っていけば、ヤツらに辿り着けるかもしれない」
「はぁ? なんでそんな面倒なことをしなきゃなんねぇんだよ?」
龍司だ。あり得ないといった表情をしている。
「ヤツらを捕まえて吐かせればいいだけだろ。そもそも、よくわからねぇことをあーだこーだ言って何になるってぇんだよ。んなもん、ヤツらを捕まえてからじっくり考えりゃあいい話じゃねぇか?」
確かに捕まえられるなら、それが一番早いわよね。でも……。
「そうは言うけど、ドラゴンちゃん。アリ男が一撃でやられたんでしょ? 捕まえるとなると、殺すよりも難しいわよ。できそうなの?」
「俺たち大幹部や中幹部クラスなら、勝てねぇ相手じゃねぇ。……1対1ならな」
「5対1なら?」
私が聞くと、龍司が眉をひそめる。
「難しいな。自分の得意のフィールドに誘い込めれば話は別だが……」
「……それは、思った以上に評価が高いわね」
B・Bが目を丸くする。
驚くのも無理もない。だって、龍司は私たち大幹部か中幹部じゃないとスターレンジャーに勝てないって言ってるんだもん。しかも1対1の勝負に持ち込まないといけないって。
でも、龍司ってケンカ慣れしているせいか、そのへんの見極めがうまいの。だから、1対1じゃないと危ないっていうのはきっと正しい。
「じゃあ、数で攻めるか、ヤツらを分断させるしかないわね。でもいつ現れるかわからないんじゃあ、それも難しいわ。そもそも、あいつらどうやって私たちを見つけているのかしら?」
「……どっかから内部情報がもれてるんじゃねぇの?」
B・Bの疑問に、龍司がさらりと恐ろしいことを言う。
……私じゃないわよ、私じゃ。
「それなんだが、少し気になることがある。これを見てくれ」
カマキリソルジャーがスクリーンに映像を映し出す。
比呂田市を中心とした関東地方の拡大地図のようだ。所々赤い点がついている。
「これは、ヤツらが現れたと思われる場所の分布図だ」
分布図ね。
ふむふむ。こうしてみると、スターレンジャーが現れた場所は比呂田市に集中しているわね。
「比呂田市に集中しているな……」
龍司がつぶやく。
「ああ。それとこちらも見てくれ」
カマキリソルジャーが映像を切り替える。文字の羅列が映し出される。
これは、任務のリストかな? なるほど、スターレンジャーに邪魔された任務と、そうじゃない任務に分けて書いているのね。
で、これがどうかしたの?
「左がスターレンジャーに邪魔された任務、右が邪魔されなかった任務だ。何か気付かないか?」
えっ? 何かって……。別にそれぞれに共通点なんかなさそうだけど。
「まどろっこしいことしてんじゃねぇ。いいから、さっさと答えを言えよ」
龍司がイライラした声を出す。
そうよ、そうよ! 情報の出し惜しみはやめてよね。カマキリソルジャーってそういうところあるんだから。
「わかったわ! 邪魔されたのは、怪人が参加している任務ばかりってことでしょ!」
あっ、ホントだ。こんなの見ただけでわかんないよ。
よく気がつけたわね。さすがB・B。
「その通りだ。スターレンジャーは怪人が関わった任務にしか現れていない」
「……たまたまじゃねぇの?」
龍司が疑わしげに言う。しかし、カマキリソルジャーは首を横に振る。
「ヤツらがジョーカーの邪魔をしたいなら、重要な任務を狙うのが普通だ。しかし、ヤツらは怪人が参加していない任務については、ことごとく無視している。重要度関係なくな。それだけじゃない。どうもヤツらの行動には計画性を感じないんだ。行き当たりばったりというか何というか……」
「つまりカマキリちゃんは、スターレンジャーの現れ方から、内部情報がもれているわけじゃないって言いたいのね」
「その通りだ」
ふーん、なるほど。確かに、怪人がいる任務だけ邪魔してくるのはおかしいわよね。……スターレンジャーが怪人を倒すのは当たり前だと思っていたから、怪人がいない任務のことなんか考えたこともなかったわ。
「でも、それならどうやってヤツらは私たちの任務を探り当てているのかしら。怪人が関わった任務だけ現れるというところに、何か意味があるのかしら?」
B・Bの疑問に、カマキリソルジャーが答える。
「やつらはKT波を探知するレーダーを使って、俺ら怪人の場所を探っているんじゃないか」
……なるほど、KT波か。
KT波というのは、私たち怪人が発する特殊な波長の電磁波のことだ。ジョーカーではこれを応用して、怪人の居場所がわかるレーダーを開発している。ただ、狭い範囲でしか探知できないみたいだけど。
それに、私たち怪人が人間の姿をしている時は、KT波が微弱すぎて探知できないとも聞いている。それなら、比呂田市に住んでいる私たちの正体がスターレンジャーにバレていないのも、納得がいくわね。
ちなみに、昆虫化を抑える薬の製造場所では、このレーダーが設置されており、怪人たちが立ち入らないよう厳しく管理されている。
基本、薬の製造場所は秘密にされているし(私は知ってるけど)、怪人は立ち入り禁止となっている。怪人が反乱でも起こしたら大変だとでも思っているのだろう。
確かに、スターレンジャーはピコンピコンと鳴るレーダーを見て、“怪人発見!”なんて言ってたわね。今、思い出したわ。
「ふーん、KT波か。あり得ない話じゃないわね。でも、仮にスターレンジャーがKT波を探知するレーダーをもっているとなると、やっぱり内部情報のもれが気になってこない?」
B・Bがそう言うのも無理はない。KT波を探知するレーダーなんて、怪人のことを知っているからこそ作れるものだもの。
だけど私は知っている。スターレンジャーの元には、あの黒田博士がいるのだ。
黒田博士って言うのは、生化学の分野において世界的に有名な博士で、ジョーカーに捉えられて無理矢理怪人の手術に協力させられていた人物だ。数年前にジョーカーから逃げ出して、いまだに見つかっていない。
確か、彼は打倒ジョーカーを掲げ、スターレンジャーをサポートしていたはず。レーダーは彼の仕業ね、きっと。
「ああ。怪人の手術に携わった者たちを、一度調べてみるつもりだ」
……カマキリソルジャーなら、自力で黒田博士に辿り着きそうな気がする。面倒なことにならなきゃいいけど。
「で、結局スターレンジャーをどうするつもりなんだ?」
龍司がうんざりした顔をする。どうやら会議に飽きてきたようだ。結論も出てないしね。
「今回、上から下された命令は、スターレンジャーの目的と裏を探ることだ。気付かれないように奴らを探らなければならない。となると、やはり……」
カマキリソルジャーが私の方を見る。
……えっ?
「スパイダーレディ、お前にスターレンジャーの偵察を頼みたい」
わ、私?
KT波=KONTYU(昆虫)波
次回、日曜日に更新。
「集合! スターレンジャー対策会議③」




