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Rival6「真っ白に輝く世界で愛を紡ぎます」

「うわぁ~、もしかしてこれ・・は雪なのか!」


 オレは子供が昂奮したように頬を紅潮させながらライへと問う。足の爪先から先に広がる煌々した真っ白な世界にオレの心は躍っていた。


「これは雪じゃないぞ。寒さも感じないし、ほら触ってみたら分かるだろ?」


 ライが腰を落として白い輝きに触れて説明する。オレもしゃがんでそれ・・に触れてみた。


「うわっ、フワフワしてる! 綿毛わたげみたいだ!」

「そうなんだ。この綿毛の集合体が雪のような景観を生んでいるんだ」

「凄いな、これは!」

「レイン、これを何処かで触った感じがしないか?」

「ん?」


 オレは首を傾げて考えてみる。 


 ――こんなフワフワな感じ初めてだけどな。


「ほらっ」


 そう言ってライはオレの手に抱いているリリーとリオに指差す。


「え? もしかしてリラウサか?」

「そうだ。リラウサはこの綿毛ロココを原料にして作られているんだ。そしてリラウサはこのボッシュで生まれたんだ」

「なんでそれをライが知っているんだ?」

「この間、視察でこの村に来た時に教えてもらったんだ」 


 ライの話によると、この村のある老人がこの綿毛ロココを利用してリラウサを作ったそうだ。それを持った村の子供達が首都へと訪れた時、とあるぬいぐるみ職人の目に留まった事で普及したそうだ。


「リラウサが大好きなオレの為に、リリーとリオを一緒に連れて来てくれたんだな」

「そんなところだ」

「マジ嬉しいよ!」


 リラウサの誕生がこんな長閑な村からだったなんて驚きだ。実はここがリラウサ誕生の村だという事は極秘らしいのだが、視察によって村人の願いを聞き入れて貰ったお礼に教えてもらい、何人かの騎士はお高いリラウサを手土産にもらって帰ったそうだ。


 ライはすぐにオレにこの村に連れて行きたいと思ってくれたみたいで、ここの領主と村長に話を通し、特例でオレを連れて来る許可をもらったらしい。オレは手に持っているリリーとリオをギュッと抱き締める。


 ループする前のリリーとリオがスロースに連れ攫われた時、ライの部下が見た風呂敷が動いていたというあの話、普通なら信じない話だろうけど、あれはリリーとリオからのSOSだったのではないかとオレは思っている。


 ――二人が本当に無事で良かった。


「リラウサを作った老人から教えてもらったんだけど、この先に村を一望出来る東屋からあるんだって。絶景らしい。そこまで一緒に行ってみよう」

「うん」


 ライはリオを片腕に抱き、もう片方の手でオレの手を握って歩き出した。真っ白な綿毛に囲まれている村はこの世のものとはかけ離れた不思議な世界に見える。


「見えた、あそこだ」


 少し高台となっている場所に屋根が付いた木造の東屋があり、そこまで足を運ぶ。そこからの眺めは圧巻だった。何処を眺めても陽を浴びた白雪のような美しい景観が広がっている。


「凄い、何処までも雪の世界が広がっている!」


 オレは大・興・奮・する! オレ達が住む首都ディジェムは滅多に雪が積もらない。だからこんな真っ白な景観はとても幻想的に見える。


「ライ、有難う。リリーとリオも喜んでいるぞ」

「それは良かった。実はリラウサと一緒にこの東屋から景色を眺めると、幸運を招くと話を聞いて、それでリリーとリオも連れて来てと言ったんだ」

「そうなのか?」

「今後、家族として皆一緒に過ごせるようにっていう思いが叶うといいなって思ってさ」

「え……」


 ――それってライは結婚後の事を言っているんだ! 

 

 ライのほんのりと頬を赤くしてはにかんだ表情に、オレの胸がキュンと高鳴った。


「リリーとリオを家族として見てくれて有難う」

「レインにとっての家族はオレの家族にもなるからな」

「ライ……」


 自然と唇が重なり合う。胸の内から温かさが溢れ出し、全身で幸せを噛み締める。ライから本当に大事にされていると実感する。けれどディープなチューをされると、オレはビクッと躯が跳ね上がった。


「ライ、ここは外だし誰か人が来たら」

「大丈夫だ。オレ達の為に今日ここは誰も立ち寄らないよう気遣ってもらっている」

「で、でも……」


 ――遠目から誰かに見られるって事もあるんじゃ! 


 そう言おうと思ったのに、ライの瞳に快感が灯っている姿を目にして理性が砕けてしまう。口を噤んだオレにライは満足げにオレの唇を封じた。甘やかな麻痺と共に心地好さが込み上げ、抗う意識を凌駕した。


 あっという間にオレは快楽の虜となって意識が舞い上がっていく。知らない地で倒錯的な気分に駆られているのに、いつも以上に敏感に反応してしまう。それにぬいぐるみとはいえ、リリーとリオに声を聞かれていると思うと恥ずかしい。


「ラ、ライ、リリーとリオが……」

「じゃあ、二人にはバッグの中に入っていて貰おうか」


 どうやらライはオレがリリーリオを持っていて行為に集中出来ないと思ったようで、二人をバッグの中に隠してしまった。これで集中出来るねと言わんばかりの妖艶な笑みをライは浮かべる。それからあれよあれよと真っ白な景色が桃色に変わっていった。


 滲むようにオレとライは溶け合って一体となっていく。最終的にオレは力を使い切ってグッタリとだれた。ダルイ筈なのに贅沢な倦怠感だ。それは紛れもない幸せなのだ、大切で愛しいライと法悦を共に出来た事が。


 ――これからもずっとずっと傍にいてくれ、ライ……。


.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+.。.:*・゜+



「全くあ奴等・・・は昼間から互いを貪り合って」


 無遠慮に人の色事を覗いていた無粋者はいつぞやの女神・・である。


 彼女は呆れ返っているものの、本当は胸を撫で下ろしていた。何故なら……。


「やはり何処かで綻びが出てしまうな」


 彼女の過去の失態・・・・・により、本来レイン・ディアが女性として過ごす生涯を男性として誕生させてしまった。女神はなんとか誤りを正したが、時折誤った出来事がしばしば起きてしまう。今回レインが死を迎える未来もまた綻びの一つであった。


 そんな誤った出来事を修正する為、女神は時を遡らせた。聡いレインであれば特に説明しなくても一人で解決するだろうと悠長に傍観していたが、再びレインが死にかけた時には肝が冷えた。


 予想外だったのはライノーが現れた事。彼はレインのように過去に遡ったと認識していなかった。だというのに予感の一つで己の未来を変えた。それもレインを思う愛が故なのか。彼の存在でレインは助かって正しい未来に戻る事が出来た。


 予想外といえばもう一つ。レインが大事にしているリラウサの二匹。リラウサには「心」が存在する。中でもレインのリラウサは特別。あれらは無意識の内に行動・・を起こす。それは女神でも驚くべき出来事。それもレインがあれらを大事にする想いからか。


 ――やれやれ自己責任とはいえ、まだまだレイン達を見守りそうになるな。


 超面倒くさがりな女神だが、二人を見つめている彼女の姿は愛おしむような笑みを浮かべていたのだった……。


ここまでお読み下さり、有難うございました✨最終話が短いのは18R部分をカットしているからです!! 完全版はムーンライトに掲載していますので年齢が達している方は覗きにいらして下さいませ✨


これにて完結なりますが、また時間が出来た時にはリラウササイドを書きたいなと思っています(●´ω`●)ノ気長にお待ち頂ければ、幸いです。

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