CEO(国王)との謁見、あるいは伝説資産の棚卸し
電脳世界の王都、玉座の間。ファンファーレが鳴り響く中、カプセルから転送されたばかりの田所は、眩しそうに眼鏡を押し上げました。
其の一:クライアントの与信管理
「おお、勇者よ! よくぞ参った。この世界を魔王の恐怖から救ってほしい!」
豪華な椅子に座る国王の叫びに、田所は跪くどころか、懐から「非接触型資産スキャナー」を取り出し、玉座の金メッキを計測し始めました。
「(……いけない。この『国王』という名の管理ユニットにおいて、感情という名の『ノイズ』が閾値を超えている。さらに、この玉座……表面の摩耗が激しく、資産価値が**全損(大幅ダウン)**している。これは経営基盤における重大な脆弱性だ)」
「お客様……いえ、国王様。静粛に。現在、あなたの依頼内容を『業務委託契約』として登記しておりますが、報酬の支払能力および、魔王という名のバグに関する詳細な仕様書がロストしています。まずは、この国の財務諸表をホールドさせてください」
「何を言っておるのだ勇者よ!? さあ、これを受け取るがよい、伝説の剣だ!」
其の二:伝説装備の「不良在庫化」
国王が差し出したのは、古びた、しかし神々しい光を放つ聖剣でした。田所はその剣を指先一本で受け取ると、ため息をつきました。
「(……全損だ。この『聖剣』という名のアセット、刃こぼれが302箇所。さらに、神の加護という名の『非科学的なバグ』により、メンテナンス性が著しく低い。これは、現場で運用するにはリスクが高すぎる不良在庫だ)」
田所はどこからか取り出した「業務用グラインダー(電脳版)」を起動しました。
「お客様、ご安心ください。伝説という名の『過剰な装飾』は、私が今すぐデリートいたします。実用的な『包丁』と同等の切れ味まで、目下、研磨中であります!」
「ぎゃああ! 聖なる輝きが削り落とされていくぅぅ!!」
其 三:不揃いな「人的リソース」の配属
「勇者様! 私たちも共に行きます!」
そこへ現れたのは、露出度の高い鎧を着た女戦士と、杖を振り回す見習い魔導士の二人組でした。田所は彼女たちを頭からつま先までスキャン(査定)しました。
「女戦士さん……。あなたの防御力という名の『セキュリティ』は、その露出面積により40%以上ロストしています。魔導士さん……。あなたのMP消費率は非効率の極致、まさに『電力漏れ』です。……貴島さんという名の優秀な物理攻撃ユニットがいない今、あなた方を**『試用期間中の非正規雇用』**として暫定ホールドいたします」
「ひどい! 私たちはこの国の精鋭よ!」
「いいえ。精鋭とは、一ミクロンの無駄もなく数値を登記された個体のことです。さあ、魔王という名のバグを捜索する前に、まずはあなた方の『有給休暇(HP回復)』の消化状況をシステム上で強制ホールドいたします。休まない労働は、ヒューマンエラーという名の全損を招くからです!」
其 四:魔王城への「最短ルート登記」
田所は王宮の壁に、巨大なガムテープで「工程管理表」を貼り付けました。
「国王様。魔王討伐というプロジェクトの納期を、これより3営業日以内に設定いたします。伝説の装備という名の『予備パーツ』を回収しつつ、魔王の所在を目下、大捜索して参ります。……あ、そこの兵士さん。玉座のホコリが目立ちます。私の誠実さが許しませんので、掃除機を生成して清掃を登記いたします」
「勇者よ……。お前、本当に魔王を倒す気があるのか……?」
「いいえ。私は倒すのではなく、魔王という名の『不適切なデータ』を、この世界から完全にシャットダウンするだけでございます」
今回のリザルト:王宮の権威および聖剣の伝説的価値の全損
結局、伝説の聖剣は田所によって「100均の万能ナイフ」のような無機質なデザインへとリフォーム(研磨)され、国王はショックで寝込みました。田所は、泣き叫ぶ女戦士と魔導士を「台車(電脳版)」に乗せ、魔王城の方角を指差しました。
• 現在のパーティー: 田所(勇者/管理者)、女戦士(運搬担当)、魔導士(照明担当)
• 保有資産: 研磨済みの聖剣(実用性重視)、業務用ガムテープ(電脳無限在庫)
• 現在のステータス: 出口という名のログアウトポータルを目下、大捜索中。
「魔王さん……。あなたの不法占拠、私の誠実さが許しません。今すぐ立ち退きの準備をホールドしてください」




