腑に落ちた
「てか二人の問題とか偉そうなこと言っといてガッツリ反応しちゃったごめん。一意見ってことにしといて」
「ううん、ありがとなんか吹っ切れた。マークスさん、今お城に行ったらハルト様に会えますかね?」
スッキリしたら昨日逃げたの気になってきちゃった。
「あ~、仕事って言っても自分の分じゃないから良いんじゃないかな。送って行こうか」
「え、ちょっと桜いきなりすぎ。食べ歩きは?買い物は?」
「それはオレがあとで付き合うで良い?折角勢いづいてるんだからハルトのためにもこのまま行かせてあげたいな」
ごめん千花。ブラックホールなマークスさんは千花が堪能してきておくれ。
「我儘ばっかで甘えてごめんね」
「そこはどうでもいいんだけど。んじゃまぁ、青春しに行ってらっしゃい」
三人でまた馬車に乗り込んで、案内されて久々のゴージャス部屋に辿り着いた。
部屋の前で二人と別れ、中で待つことにする。
一応ノックしてから入ろうとしたら、扉が開いてハルト様が出てきた。
「あれ、サクラ?」
「どうも…休んでたんですね」
うぅ、顔に熱溜まる。スッキリしたところで意識してしまうのは変わらないみたいだ。
手を引かれてソファに座り、ハルト様も当然の様に横に来る。
「あの、昨日逃げちゃったのでお話をと思いまして…押し掛けましたすみません」
「うん」
にこにこ手を握りこまれながら返事された。これ絶対反応見てやってんだろな。
赤面はもう諦めて、話だけはちゃんと出来るように深呼吸を繰り返す。
「俺もサクラに帰ったらちゃんと言っておこうと思っていたことがあって」
深呼吸しまくってたらハルト様が先に口を開いた。
「本当は花を買って帰りたかったんだけど」
そう言いながらハルト様は立ち上がって、引き出しから何か取り出して戻ってきた。
「石に見覚えはある?」
ハルト様の手から出てきたのは指輪だった。見覚えとかないな。
「全然…」
「はは、そうか。これはサクラを召喚する時に使った指輪の石だけを取って、新しく作ってもらった物。最初はそのまま渡すつもりだったんだが、二人で共有出来る思い出以外はもう必要ないだろう?」
「結構前に話したやつですか」
ハルト様、俺は覚えてる~とか全然言わなくなっちゃったな。
「そう、だけどあの指輪がサクラを連れてきてくれたのは事実だから、全部新しくするより軸として使いたくて。それで、これを持って帰って改めて今日プロポーズするつもりだった」
「へぇっ?」
「昨日サクラが出て行ったあと俺も考えてみたら、サクラにちゃんと求愛したことがなかったなと」
え、あれで?
びっくりして眉間に皺寄せたら、親指でグリグリされた。
「初日に婚姻を迫ったけれど、その後はただ気持ちを吐き出していただけだ」
顔を撫でていた手が私の頭の方へ移動して、すっかり慣れた手つきで髪を内側から梳かされる。
髪の毛を耳にかけて、そのあとまた手に戻ってきた。
「天宮桜さん、結婚してください。」
絡められた指に力が入る。
「俺には桜が全てで、心から愛してる。これからの人生を俺と共に歩んで欲しい、一生かけて二人の思い出を作っていきたい」
「……フルネーム覚えてたんですね。一回だけしか話してなかったのに」
「忘れるわけがないよ。今まで以上に穏やかに、これからもずっと一緒に時を過ごしてくれないか?」
ゴージャス部屋でのキラキラ笑顔は眩しすぎて全部クラクラする。
「……あの、そのずっとはどこまででしょう」
「ん?」
「さっき話そうとしてたことなんですけど、どうも私来世がひっかかってたみたいで。ハルト様が好きだって認めちゃったら来世まで巻き込んじゃうような気がして…来世とか全然わかんないけど、勝手に前世で約束とかしちゃったらどうなの?って。記憶だってないだろーに」
ハルト様は真顔になって、少し考え込みだした。
「…桜は俺が好き?」
「.…はい」
「好き?」
ここは勇気を出すべきところだ。
大きく息を吐いて横を向いて見上げて、いつもハルト様がしてるみたいにちゃんと目を見る。嘘とか誤魔化しとかしないハルト様の瞳は、いつでも真っ直ぐ気持ちが伝わってくるから。
一緒に過ごしてきた日々を思い出しながら、絡めとられるような視線から目を離さないようにしながら、口を開いた。
「ハルト様が好きです」
途端にハルト様は顔を綻ばせ、お得意のうるうるな表情を私に向ける。
「それならそれだけで良い、来世は来世でまた口説き直すよ。俺は忘れてたってどうせまた桜を愛するけれど、きっと今の俺と同じように、前のサクラとごちゃ混ぜにはしない」
「そっかぁ…うん。そこは信頼してます」
同じこと繰り返す人じゃないのはよく分かってる。
「桜が好き、大好き。好きだって言ってくれて嬉しい。俺の妻になってくれる?」
「はい」
返事をしたと同時に、ハルト様の瞳から涙が零れた。
「わ、ハルト様」
びっくりして上に伸ばした手を掴まれて、そのまま胸元まで持っていかれる。
「嬉しいだけ…」
紅潮した顔が色っぽい。私が顔赤くしたってこんな色気出ない。
腰にさっきと反対の手がまわされて、綺麗な滴と一緒に、何度も触れるだけのキスが降ってくる。
くっついて、離れて、また触れて。唇に唇が合わさる度に、少しずつ気持ちが落ち着いていく。
涙が落ちてこなくなったころ、ぬるりと口の中にハルト様の舌が入ってきた。




