表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
116/120

エピローグー1

 エピローグの始まりになります。

「スペイン青師団は、まずは第二陣か」

 アラン・ダヴー少佐は、先程、アイゼンハワー将軍の最終承認を得られた南方軍集団の作戦内容を想い起こして、駐屯地でため息を吐きながら、そう呟いて、想いを巡らせた。


 1942年5月初め、南方軍集団、通称ラテン民族軍集団は、各国の軍首脳部が集った作戦会議の末に、最終的な作戦計画の詰めを済ませ、アイゼンハワー将軍の最終承認も得たのだ。

 ダヴー少佐は、表向きアラン・ハポンと名乗って、スペイン軍司令部の一員として、その作戦会議に参加して、最終的な作戦計画の内容の詳細までも知っていた。


 本来から言えば、少佐なので、そこまで知る立場にダヴー少佐はないのだが。

 当然のことながら、フランス語に堪能なことから、半ば通訳として、更に、豊富な実戦経験に裏打ちされた優秀なスペイン軍の軍人として、ダヴー少佐は作戦会議への参加、発言を許されたのだ。


 なお、言うまでもなく作戦会議の場では最年少参加者であり、それを見とがめたフランス軍士官からは、

「流石にサムライの子と言うべきか。あの若さなのに名前負けせず、作戦会議の場に出席しているとは」

 と称賛とも、陰口ともつかない噂が流れた。

 ちなみにこの作戦会議に参加したダヴー少佐以外のフランス軍士官は全員が30歳代半ば以上であり、20歳代半ばのダヴー少佐は飛びぬけて若いといえた。

(もっとも、ダヴー少佐はスペイン軍の一員として、作戦会議の末席に連なったのであり、彼らとは立場が違うとも言える。)


 暫く想いを巡らせた後、ダヴー少佐は、フランス外人部隊のある士官を訪ねることにした。


「悪戯も程々にすべきでは」

 フランス外人部隊の士官、ルイ・モニエール中尉は、元上官のダヴー少佐に半ば忠告した。

 駐屯地の哨兵が、自分の顔を知らないことをいいことに、ダヴー少佐は、

「スペイン軍のハポン少佐だが、モニエール中尉に私的にお会いしたい」

 と名乗って、面会を求めたのだ。


 勿論、ダヴー少佐の正式のスペイン軍の身分証明書は、アラン・ハポンの名が入っており、官職姓名を偽っている訳ではない。

(それに細かいことを言えば、ダヴー少佐は、フランス軍ではあくまでも大尉である。

 スペイン軍に出向して、スペイン軍内で少佐に戦時昇進した身の上なのだ。)


「ちょっとした悪戯ですよ。目くじらを立てないでください」

 そうダヴー少佐は、ルイ・モニエール中尉こと、ナポレオン6世に言った。

 そう言われると、相手は元上官である。

 一体、誰が自分を訪ねて来たのだろうか、と首を傾げながら面会に出てきたモニエール中尉としては、苦笑いで済ませるしかなかった。

「一体、何事かね」


「いえ。いよいよ、対ソ欧州本土侵攻作戦が発動される直前に、かつてのことを想い起こして、どう思われるのか、お伺いしたくて訪ねてきました」

「かつてのことか」

 それだけで、二人の間に想いは通じた。

 かつて、フランスはロシア遠征に失敗した。

 今度は、どうなるだろうか。


「私がモスクワを目指さないから成功するだろう、何とかなると言っては皮肉が強すぎるかな」

「それは初代に対して、きつい皮肉ですな」

 ナポレオン6世の言葉に、ダヴー少佐は思わず笑いながら言った。 

 ナポレオン1世のロシア遠征の失敗の一因が、モスクワ攻略にこだわり過ぎたことだ、というのは有名な話であり、ナポレオン6世の言葉は、それを踏まえたものだった。


「かつてと違い、英米日が味方しているのだ。それで何とかなると信じよう。それにしても遠大な目標を目指すことになるな」

「ええ、確かに」

 二人は想いを巡らせた。

 ロシア遠征では無かった、対ソ欧州本土侵攻作戦。

 史上空前の侵攻作戦は、どのような結末になるだろうか。

 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ