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第6章-27

 ちなみにスカパ・フローには、仏海軍も大艦隊を送り込んでいた。

 旗艦が戦艦リシュリュー、他に戦艦ジャン・バール、ダンケルク級戦艦2隻も随伴している。

 勿論、空母ベアルンや、少し珍しい所では水上機母艦コマンダン・テストもこの場にいるし、それを護衛する巡洋艦や駆逐艦にも事欠かない。

 世界第4位の海軍に相応しい威容を、この場において示していた。


「クレマンソーやガスコーニュの建造を中止するべきでは無かったかな。伊海軍の戦艦群を見ると、つい後悔の念が湧いてくるな」

 リシュリューの艦橋で、この場にいるフランス艦隊の総司令官であるダルラン提督が呟いた。

「確かにヴィットリオ・ヴェネト級戦艦4隻に、リシュリュー級戦艦2隻、ダンケルク級戦艦2隻で、まともに戦うことは困難ですが、最早、時代は空母の時代ですよ。だからこそ、建造中止になったのでしょう」

「まあな」

 参謀長のジャンスール提督の言葉を、ダルラン提督は肯定するしかない。


 伊のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦に対抗するために建造していた、仏のリシュリュー級戦艦の3番艦クレマンソーや4番艦ガスコーニュが建造中止になったのには、様々な理由がある。

 例えば、対ソ欧州本土侵攻作戦優先の為に、建造費用が捻出できなくなったのも一因ではある。

 だが、最大の理由は、空母の増勢が喫緊の課題である、と仏海軍の幹部の多くが考えたのが、最大の理由と言えた。


 実際、ダルラン提督も、ジャンスール提督も、クレマンソー等の建造推進か、建造中止かの会議の席においては、そう考えて、建造中止に票を入れた側だった。

 その代償として、日米の協力により、ベアルンの代艦ともなる3万トン近い大型空母2隻を、仏海軍は数年後に建造、保有することになっている。

 そうは言っても。


「ヴィットリオ・ヴェネト級戦艦を見ると、その決意が揺らぐのは、海軍軍人のさがかな。それに他の国々の戦艦も集っている」

「そうかもしれませんね。私も決意が揺らぎそうです」

 ダルラン提督とジャンスール提督は、そう会話を交わした。

 その二人の視界の片隅には、米海軍の空母と戦艦を主力とする大艦隊が入っている。


「戦艦「大和」を旗艦とする日本艦隊は、明日、入港予定とのことです」

「ご苦労」

 米海軍の艦隊総司令官であるニミッツ提督は、通信士官からの報告に応えた。

 ちなみにニミッツ提督は、旗艦の戦艦サウスダコタの艦橋上にいる。

 その指揮下にある戦艦は、文句なしに各国の艦隊の中で量的に最大の規模を誇っている。


 ロンドン軍縮条約で保有を認められた11隻の戦艦の全てがこの場にいる。

 そして、軍縮条約破棄後に建造された10隻の内6隻がこの場に集うことに成功していた。

 ノースカロライナ級戦艦2隻、サウスダコタ級戦艦4隻である。

 6隻とも16インチ砲9門を搭載しており、仏のリシュリュー級戦艦や伊のヴィットリオ・ヴェネト級戦艦より質的な優位を誇る。


「後4隻、アイオワ級戦艦も、この場に揃えたかったな」

 そうニミッツ提督は、内心で想った。

 軍縮条約破棄から第二次世界大戦勃発に至る歴史の流れ、更に大和級戦艦の情報を入手した米は、ノースカロライナ級戦艦2隻、サウスダコタ級戦艦4隻、アイオワ級戦艦6隻、モンタナ級戦艦6隻という18隻の戦艦群を整えるつもりだった。


 だが、対ソ戦や空母建造優先の方針が打ち出されたことから、モンタナ級戦艦建造は全面中止、アイオワ級戦艦も6隻が4隻に減らされてしまった。

 時代の流れとは言え、内心では戦艦の建造を続けたい、特に、大和級戦艦と互角に対抗できるモンタナ級戦艦は建造すべきである、という想いは拭えない。

 しかし、現実は。

「仕方ないか」

 ニミッツ提督は呟いた。

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