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第6章ー25

 似たような想いを、日本海兵隊の面々もしていた。

 上陸作戦は、海兵隊にとっての本懐ともいえる作戦である。

 対ソ欧州本土侵攻作戦において展開されるバルト海上陸作戦の内容が、少しずつ明かされるにつれて、日本海兵隊の多くの面々が、胸の高まりを迎えきれなくなっていた。


「どこに上陸作戦を展開するか、はまだ秘密ですが、興奮してなりません」

「今から興奮していては身が持たないぞ」

「分かってはいますが」

 防須正秀少尉は、土方勇中尉から半ば忠告を受けつつも、興奮を迎えきれないようだった。


「5月になったら、具体的に乗り込む輸送船等が分かるだろう。そして、目的地に向かう。実際の現地情報が明かされるのは、その頃になってからだろうな。余り早く明かしてしまうと、敵に察知される危険もそれだけ大きくなる」

「確かにその通りですね」

 土方中尉と防須少尉は、そんなやり取りをした。


「それまでは、懸命に訓練等に励んで、いわゆる急いで待つ、しかない訳だが。部品等の補充は大丈夫なのか、話せる範囲で話してもらえないか」

「思ったより状況は良いですね」

 土方中尉の問いかけに、防須少尉は明るく答え、詳細を話した。


 ドイツやチェコスロヴァキアの工業基盤は、連合国の航空隊が実施した戦略爆撃により、かなりの損害を受けたのは事実である。

 また、人員の被害もかなりのものがあった。

 だが、その一方で。

 いざという際に、物資や人員の確保(もっとも、それが難しいのだ、という反論が起きる部分でもある)さえ、できれば、すぐに工業の復興ができるだけの準備も、工業地帯だけあって整っていたのだ。


 そのために、日本等が依頼した部品等の生産を、現地のドイツやチェコスロヴァキアで請け負うことは、決して不可能どころか、食うためにむしろ喜んで、というのが現地の実態だった。

 それによって、日本軍は故障しやすい部品の一部等を現地調達することが可能になっていた。


「一部と言えば、一部ですが、やはり、気分が違います。製品の質も、大っぴらには言えませんが、国産より良いかもと思うくらいですね」

 最後に付け加えられた防須少尉の言葉に、土方中尉は苦笑いした。 

 防須少尉の言葉の裏、本音では、日本製よりドイツ製の方が良い、と言いたいのが、うかがえたからだ。

 それはそうだろう、日本は孜々営々と努力を続けてきたとはいえ、米独等と比較すれば、製品の質はやっと追いつけた、と言ったレベルだ。


「ところで、そんな大上陸作戦を展開するとなると、支援もかなりのものがないと困る、と思うのですが、どんな支援がくるのでしょうか」

 防須少尉は、少し不安があるようだ。

「さあな。父なら詳細を知っているかもしれないが、父は口が堅くて自分にも教えてくれない。それに、前にも言ったが、まだ、耳を澄ませるだけにしておけ」

「そうですね」

 防須少尉の返答を聞きながら、土方中尉も想いを巡らせた。

 どんな支援が、この上陸作戦に際してはあるのだろうか。


 上陸作戦を断行するとなると、海上兵力、大艦隊による支援があるのが、半ば当然だが。

 世界の五大海軍国、米英日仏伊の五か国が、ソ連欧州本土侵攻作戦に協力することになっている。

 この五大海軍国の戦艦、空母が、この史上最大の上陸作戦支援のために全て集うのでは、という半ば妄想じみた噂話がひそひそと話されるようになっている。


 幾ら何でも、と土方中尉自身も想うのだが。

 一部の軍艦好きの面々からすれば、想像するだけでも血沸き肉躍る光景らしい。

「米国のテネシー、英国のフッド、日本の扶桑と三国を代表していた戦艦が集うだけならともかく、海軍軍縮条約破棄後の新型戦艦まで集っているとなると」

 ある士官は真顔で言う有様だった。

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