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第6章ー16

 実際、この当時、様々な討議の果てにベルリンに置かれた欧州方面の連合国軍最高司令部では、各国の思惑が入り乱れていた。

 ある程度は補給等の観点から、国別にまとまっての軍集団を編制するという方向は決まったのだが、その軍集団をどのように編制するかで、また各国が揉めるという事態が引き起こされていたのだ。


「取りあえず、プリピャチ沼沢地の北と南で大きく部隊を分けよう」

 アイゼンハワー将軍は、1942年3月初めにそう提案し、論争に疲れた各国の将軍連も、その提案に納得したのが、第一の転換点となった。


(ちなみにプリピャチ沼沢地とは何かだが。

 ドニプエル川の支流プリピャチ川が流れる一帯は、大雑把に言って南ペラルーシと北ウクライナを隔てる広大な湿地、沼沢地を形成していた。

 また、それによって、南ペラルーシと北ウクライナ間の軍隊の迅速な移動は、極めて困難なものになっていたのだ。

 そして、この一帯が通称としてプリピャチ沼沢地と呼称されていた。)

 

 ソ連欧州本土に侵攻するために、約1000万人の兵力を集めたとはいえ、それだけの兵力が1か所にまとまって、モスクワ等を目指すようなことをしては、戦力の有効活用とは言い難い。

 ある程度は、兵力を分散させて、広正面からソ連欧州本土への侵攻作戦を展開する必要があった。

 そして、どこを目標として行くかだが。


「最終的には、ウラル山脈以東のシベリアにソ連を押し込めよう。言うまでもなく、カザフスタン等はソ連から離脱して独立させるし、北樺太や外興安嶺山脈以南は、日中が確保する。そうすれば、ソ連は遺された国力から言っても、降伏せざるを得なくなるだろう」

 これが、アイゼンハワー将軍ら、連合国軍最上層部の基本的な考えだった。


 とは言え、それは余りにも遠大な最終目標であり、その前のいわゆる中間目標等も定める必要がある。 

 そして、大議論の末に、大雑把にまとめられたのが、北方、中央、南方の3個の軍集団を形成し、それぞれが目標に突進していき、ソ連を崩壊させるという大方針だった。


 まず、北方軍集団だが、中間の最大目標とされたのは、レニングラードだった。

 バルト三国の独立、解放を果たしつつ、レニングラードを占領、その後、更にアルハンゲリスク等を北方軍集団は目指すことになった。


 次に、中央軍集団だが、中間の最大目標とされたのは、言うまでもなくソ連の首都モスクワだった。

 ミンスク、スモレンスクを占領して、ペラルーシを解放した後、モスクワ占領を目指す。

 その後は、更にウラル山脈以西の占領を目指して、中央軍集団は突進していく予定だった。


 最後に、南方軍集団だが、中間の最大目標は、スターリングラードとされた。

 これはボルガ川水運を断ち切り、バクー等のカフカス地方の油田地帯とソ連を切り離すことで、ソ連の継戦能力を奪おうということから目標とされたものだった。

 キエフ、ハリコフ等を占領して、ウクライナを解放した後、スターリングラードを目指すのだ。

 その後は、更にアストラハン等まで進軍し、ソ連を構成している中央アジア諸国の独立、ソ連からの解放を南方軍集団は目指すものとされていた。


 この方針については、各国の将軍達も同意していた。

 実際、ソ連を打倒する基本方針としては、極めて異論をつけにくい方針である。

 レニングラード、モスクワを陥落させれば、ソ連の政治的象徴が失われたとして、ソ連の国民の継戦意思を失わせることになるだろう。

 また、ソ連を構成する民族国家の完全分離独立が達成されれば、ほぼソ連は降伏するだろう。

 それでも、ソ連が屈服しないならば、シベリアにソ連を押し込めようというのである。

 この大方針は、各国政府上層部も承認していた。

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