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悪意

<王都、ニコラウス卿の屋敷の庭>


 元ギフテッドの5人はコネのある貴族の屋敷に来ていた。


「何の用だ、こんな朝早くに」


 茶髪のロン毛をオールバックにした中年の男が言う。後ろには金髪の鋭い目をした若者を連れていた。


「朝からすみません、メンバーが負傷しまして治療のお願いにきました」


 北条王冠が言う。


「ふむ――」


 貴族の男が腕を失くしたマイク・オーガンとリュ・シオンを見た。


「やだね、面倒くさい」

「そんな! 私たちは<ギフテッド>ですよ、その言い種はないでしょう」


 北条王冠が食い下がった。


「この方たちですか噂の<ギフテッド>というのは」


 貴族の後ろにいる青年が言う。


「はいイグニ様。目をかけてやっていたのですが見込み違いだったようです」

「ふふ、神より与えられた才能――ギフテッドですか、ふふふ、はーはっはっは」

「ハハハハ」


 二人が顔を見合わせて笑った。


「何がおかしい!」


 マイク・オーガンが怒鳴る。


「イグニ様、この女たちいいと思いませんか? 前から目をつけていたのです」

「いいですね〜今宵の宴に使いましょうか」


 貴族の男と金髪の青年が黒い笑みを浮かべた。


 危険な雰囲気に、ギフテッドの5人が陣形をとる。

 それを見て貴族の男と青年も剣を抜いた。


「おいおい、貴族のおっさんが何やる気出してるの? 死ぬよ?」


 マイク・オーガンが言う。

 それを受けて貴族の男が不敵に笑う。


「くくく、冥土の土産に教えてやろう、本当の才能というものを」


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


〈トレビアン亭〉


 翌日ノエルは思いきってシャインにカイとの関係を聞いた。


「カイは女だよ、言わなかったっけ?」


 シャインが言う。ノエルは口をあんぐりと開けて驚いた。


「聞いてないよ。そういう一番大事なところは最初に言ってよね」

「そんな大事かなぁ」

「大事なの! ていうか彼女がいて私にあんなこといったの『俺んとこ来ないか』みたいな」

「う、まあ」


 シャインはプリプリしているノエルにたじろきながら言った。

 ノエルが溜め息をつく。


「ダブルでショックだわ~」

「まあまあ、昔から憧れだったお店を手に入れたんだし機嫌直して」

「誤魔化されないんだからね」

「……」


 シャインは何で助けたのに怒られないといけないんだという気持ちになったが、言ったら絶対に喧嘩になるのでやめた。



 それからしばらく、トレビアン亭の扉が乱暴に開けたれた。

 血相を変えた山田鬼斬が入ってきた。戦った時から終始落ち着いていた彼がこんな取り乱しているのをシャインは初めてみた。


「心音が……皆が……僕は何もできずに逃げることしかできなくて、ふぐぅ」


 鬼斬おにぎりがシャインたちの前で泣き崩れた。


「落ち着いて鬼斬、ゆっくり何があったか話して」

「どうしたの?」


 ノエルや他の者も集まってきた。


 がたがたと震えている鬼斬に温かいスープが出された。シャインとノエルが鬼斬のテーブルの対面に座る。聞かれると不味い話かもしれないのでノエルは店は休みにして従業員たちには席を外してもらった。


 鬼斬の説明を聞くと、貴族たちと戦いになりまずマイクが一撃で真っ二つになりシオンが瞬きする間に殺されたとのこと。


「あんな、化け物たち――シャインさん、心音をどうか助けてください」


 山田鬼斬がシャインに懇願する。


「そう言われても」


 シャインは同情する気が起きなかった。自業自得だ。


「もうシャインさんしか頼れる人がいないんです」


 ただ鬼斬という人物の目を見ると人を襲ったのが信じられないくらい真摯な目を持していた。シャインは鬼斬に心を動かされた。


「どんな負け方だったかもう一度詳しく教えてくれないか?」

「は、はい。マイクが貴族の男の剣を剣で受けたら頭から一刀両断されました――」

「相手の剣は?」

「普通のロングソードに見えました」


 相手の能力かもしれないがマイクは片腕しかなかったので受けきれなかった可能性もある、シャインはそう判断した。


「もう一人は?」

「シオンが司祭服をきた男と対峙したと思ったら、斬られて殺されていました」

「意味が分からない」

「僕も分かりません。瞬きしていたら斬られていました――」


「分かった! 時間を止めたのよ!」


 ノエルが叫んだ。


「おいおいそんな――」


 否定しかけてシャインが口を閉ざした。


 絶対にないとは言えないが、個人のMPで時間なんて止められるものなのか?

 マジックアイテムかもしれない。


「可能性はあるな」

「でしょ!」

「お願いしますシャインさん」

「分かった、しかし昼間は目立つから夜いこう」


 一生ついていきますと鬼斬が感謝の念を示した。

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