第6話 今回は警察見逃してやるよ
7月14日昼屋上
「なあ、勇~。祝詞ちゃんの嫌いなものとか知らない~?」
昼飯を一人で食べてるときに拓也が聞いてくる。
いや、別に周りから拒絶されてる訳ではないぞ。断じて。
拓也はさっきまで用をたしに行ってたし、太郎は毎日のように昼時に告白を受けるのであまり一緒に食いたくないだけだ。
祝詞は・・・多分女友達と一緒だろう
「ん?なんで?」
「祝詞ファンクラブの会合で次までに弱点を調べて来いと言われたんだけど全く弱みを見せないからさ~」
「そういうのは自分で何とかしろ」
「無理。ここ3日間ストーキングしてみたけど全く見えないもん」
よし、電話だ。もち警察に。
「誰にも言うなよ。でないとお前と祝詞ちゃんが一緒に住んでること言いふらすぞ!!」
携帯を取り出した俺に拓也が行ってくる。
実は俺が祝詞と同居していることはこいつと太郎くらいしか知らない。
だってファンクラブとか怖いじゃん。
「しょうがないな今回は警察見逃してやるよ」
「今回は!?次は電話するのか!?ガチで!!」
「冗談だよ。って次もあるのか!?」
「多分」
「おい!!」
まあここらで話を進めよう。
「・・・で祝詞の嫌いなものだって?」
「おう」
「幽霊とか、怖い話とか。あと、お化け屋敷もだめだな。あいつ、なんか気配を感じるらしくて駄目なんだとか。時々、はっきり見えるらしいぞ」
正直に本当のことだけをいった。すると
「そうか、怖いもの系が駄目なのか。じゃあ夏休みは皆で肝試しをするぞ。もち、祝詞ちゃんも混ぜて!!」
ビシッと言う効果音とともに拓也は言い放った。
「何でだよ!!」
「もし見えて怖がってキャ~とか言って俺に飛びついてきたら最高じゃん」
このあと、拓也は一人トリップ状態に陥った。
「勝手にやってろ!!」
もし本当に霊がいたら、退治するのは俺になる。
たとえ弱すぎてすぐ消滅するような奴も。
こんな自分から仕事を増やすようなことはしたくない。
ましてや祝詞にもさせるなんて。
7月15日夜8時
夕食後、祝詞と姉さんが食器などを洗っている。
姉さんとは俺と祝詞を引き取ってくれた家の女性で(男性なわけない)陰陽師バリバリ現役で俺なんかじゃぜんぜん歯が立たない強い人。俺に陰陽師の存在を教えてくれた人でもある。
名は花戸井守。24歳。綺麗な人。
花戸井家は神社をやっており、その巫女でもある。巫女の仕事は特に与えられず、大晦日や正月くらいしか仕事が無いのでよくいなくなる。(陰陽師の仕事で)
霊力を数値化する術式があるのだが、それで測ってみると霊力の最大許容値が15347。
普通の人が大体20。1万越えするのは大体4~50年かかると言われている。
しかし、守さんは陰陽師を始めてから19年でそれを成し遂げた。
つまるところものすんごく強い。日本内陰陽師トップ10に入るくらい強い。そんなランキング無いけど。
「そのランキングなら諜報部によって発売されとるぞよ。ほれ」
え?あるの?
あ、本当だ。
じゃなくて人の思考を勝手に読むな!!
「すまんすまん。ちなみに正確に言うと守は毎回女性部門1位。総合部門3位じゃぞ」
反省してるのか?こいつは。
「まあまあ。ところで勇や、ちょっと散歩に出かけんか?」
思考を読むときは都合にいいものしか聞こえんのか!!
はぁ。疲れる。
まあいいや。
この声はじっちゃん。
花戸井義男。
神社の住職で、現在では執行部は引退し諜報部として陰陽師を続けている。
しかも、陰陽師総合管理委員会という陰陽師内の取締役の会長をしているらしい。
もしそうならここにいていいのだろうかと時々疑問に思う。つまり、働けと。
まあ、今は会長という立場にもかかわらず働こうともしない自堕落な生活をおくっているが、執行部をやっていた頃は最強と謳われた(うたわれた)陰陽師。
今は守より劣るが、現役の頃は守の2倍くらい強かったらしい。まあ、つまるところ雲の上の存在。
勇の師匠。神社の住職をしている。
「ん、分かった。すぐ準備する」
男二人で夜の公園へ向かう。




