第52話 出なかったな
岩場で休憩していると、後ろの方から「あっ!」と言う極小さな声が聞こえた。
不思議に思って立ち上がり後ろを確認すると岩場の後ろの草木が揺れていた。輝明達が通り過ぎて行ったのかもしれないと思い、そろそろ先に行こうぜと提案する。
二人に呼びかけ、何故か気になる後ろを見ると、岩の天辺には手形の血が付いていた。
俺は山に入ってから一応霊力のサーチは掛けていた。しかし、この場所に霊やら邪やらが来た事は確認されていない。
弱すぎて気付かなかったのか、強い奴がその力で霊力を隠していたのか。前者である事を祈りつつ、後者の可能性についても考えてしまい、久々に寒気がした。
この血については二人にはばれないように結界を張っといてその場からはなれた。
―――輝明
ふふふ・・。
期は熟した・・。
よし、三人和んでる雰囲気、ぶち壊してやるぜ・・・・。
この火の玉で!!
「(拓也、行け!!)」
「(おうよ!!)」
小声で会話し、指示を出す。
(この計画が成功すれば三人は酷く驚くは・・・・ず・・・
・・・・あれ?
肝心の三人は?)
この後、拓也に計画の失敗を報告し、消火して三人をおったのだった。
―――勇
休憩の後も祝詞の怖がるような事万歳だったが、途中でいたずらを仕掛けようとする拓也達を見つけ、祝詞が怒り狂った物の、輝明がとっさに拓也を盾にしたために拓也以外の被害者はいなかった。
神社の狛犬の目が動いて見えたり(リアル)、お参りしたら泣不動縁起にある疫病神の一つ(多分貧乏神)が見えたり(リアル)。祝詞は全て拓也達のギミックとしてしか見ていないから大丈夫なのだが、いつばれるか怖いし、一応浄化しておいたけど、疫病神自体は消えてないし・・。
今日は面倒ごとが多かった・・・。
―――麓
「さて、結局本物は出なかったな」
「人を極限まで怒らせといてよくそんな言葉吐けるな・・」
拓也は麓に着いた瞬間残念そうに呟いた。
こいつは見て無いだけで確実に2つはあったぞ。
「アレは全部嘘・・アレは全部嘘・・・幽霊なんていないぃ・・・」
隣で幽霊のようにブツブツ呟く祝詞が見たのはたぶん本物であるが、祝詞は拓也に狛犬の目を動かしたり、貧乏神を出現させたりなどできないとわからないのだろうか?
まあ、気付いてないなら、ないにこした事は無いのだが、正直腕を掴まれるのはもう窮屈だ。
「で、もう解散で良いのか?そろそろ道路に戻れなくなるぞ」
麓から道路まで約100メートル。近くに家があるわけでも無く、街頭も無いため100メートル先に見える光のみが頼りだ。
しかも、この道は結構すべりやすいから危険である(受験生の願掛けで人気。失敗したらドンマイとしかいいようがないが・・・)。
「そうだな、そろそろ帰るか」
太郎の一言で帰る事が決定。
縦一列になって(道が狭いから)道路に向かう。
道路まで後20メートル程になった所で異変が起こった。
「何か寒くない?」
「確かに」
「そうか?夜だけど今は夏だぜ?」
祝詞と輝明が寒いと言い出したのだ。拓也が言うように気温自体は通常どうり。だが、周りに靄が掛かって来た気もする。
夏に誰も厚着しているわけが無く、上着を貸すと言う事はできるわけも無い。仕方ないので二人には我慢してもらう。
道路に到着するとその靄は一気に晴れ、薄く白くなっていた視界もはっきりして来た。
「さて、チャリ置いたとこもすぐそこだし、明るいし、安心できるって最こ・・・」
『バタッ』
拓也が何か言ってるときに二つ倒れる音が聞こえた。
それは先ほど寒がっていた祝詞と輝明だった。




