第43話 ホントに自分の持てる最高速でいったんだよ!
8月13日朝10時
「ただいま~」
駅からバスで実家に帰り、挨拶をしながら実家のドアを開ける。
「あら、お帰り。早かったわね」
「時間に余裕を持ってあっち出たからね」
「そう。で、朝ご飯は?」
「駅で食べてきたから大丈夫。あと、これからすぐ出かけるから」
「友達の所?」
「ああ、もう4ヶ月会って無いからね。親の次にはあいつらに挨拶せんと」
俺が中学卒業後、静岡の高校入学した。愛知から通うのは金銭的にも時間的にも利便性的にも、得策とは言えない。であるから往々にして静岡の方に移り住む事になったのだ。
しかし、この週は盆。
地獄の釜の蓋が開くだかの盆。
祖先の霊魂が地上に帰って来るだかの盆。
誰かは言う。
「お盆休みくらい実家に帰れよ!!」
と。
4ヶ月も留守にしていたのだ。
実家に帰ったのだから友人の家に行くのは当然の事だ。
「じゃあ、いってきます。昼も多分食ってくるから」
「分かったわ。じゃあ、いってらっしゃい」
そうして、俺は家を出た。
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俺は肝試しについての約束の訳、そこに至るまでの事の次第を必死に祝詞に説明している。
「だから、その事は本当に悪かったと思ってる。あそこで俺がブレーキを離すタイミングを0,3秒早くしていればあんな不安定な状態でカーブに差し掛かる事は無かった事は、もう十分に反省してます!!」
「わかんないわよ!その場に居合わせたわけでもないのに敗因なんか知らないわよ!!大体なんで小数第一位まで確りはかれるの!?意味分かんない!!」
「ホントに自分の持てる最高速でいったんだよ!マクラーレンはあんまり使ってなかったから運転難しかったんだよ。大体あいつはラストゲームに最高の車使いやがって・・・」
「まず、私は宿題が終わってないの!行く時間なんて割けないわよ」
「それはそんなに威張っていう事じゃないぞ」
俺だって反省はしている。ここ最近は勝率60パーセントに近かったもんだから勝てると思って少し賭けて見たんだ。ただそれだけだ。
そこで勝負受けないとどんな勝負吹っかけてくるかも分からない。完全に俺が不利な物を突いてくるだろう。そこら辺の事に関してはあいつは鋭いから。
「本当にすまなかった。許してくれ」
土下座で謝る。
そして、祝詞が数秒考え込む。
「分かった。じゃあ、これについてはまた何かやってもらうから。いつになるかは分からないけど絶対一つ言う事聞いてもらうから」
「・・ああ。分かった」
断られ、また前のようなやり取りが数回繰り返される物と思っていた。
しかし、考えた答えと実際の答えが違い、数秒詰まってしまった。
実際嬉しい。これ断られたら拓也に何言われるか・・いや、何されるか分かったもんじゃない。
だが、信じられない。祝詞がこの様なイベントに参加するなんて事自体。
俺は契約内容を思い出す。
・・・・確か、宿題の答えを見せる代わりに肝試しについて来て貰うんだったよな。
で、ついて来ると。
そして・・・・何か言う事一つ聞けと・・・。
「おい!俺が払う対価増えてんぞ!」
「私にとってはそれくらい厳しい事なの!それ以外の条件は飲まないわ!!」
「うっ!」
それ以外の条件を飲まないと言われてはどうにもできない。さっきも言った通り拓也に何されるか分かったもんじゃないから。
「・・仕方ない。・・・出来るだけの事は頑張って見ます・・・」
「それならよろしい」
終始、主導権を祝詞に握られた交渉は幕を閉じた。
『ピーンポーン。ピーンポーン』
そして、それと同時に家のインターホンが鳴り響いた。
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