第29話 なら俺を殺してくれ
「そんな事があったのか。しかし、それを聞くと人間が悪者のように感じてきた」
「確かにそうだな。管狐にそれしか道が無かったわけじゃないと思うけど、こうなったもとが人間だもんな」
俺たちは管狐に共感の意を示す。
「でもおかしくないですか?妖怪って長く生きすぎた動物とかがなる物じゃなかったです?」
確かに。
妖怪などは寿命を迎えてもなお生き続け、それこそ100年程は生きなくてはなることはできないと言われている。
この管狐だと、霊や邪と同じ生まれかただ。
この生まれ方で生み出された妖怪は聞いたことが無い。
「妖怪どもの集まりみたいな奴に行ったときも言われたよ。まあ、それっきり行ってないけどな。まあこんな話してもしょうがねえ。同情するならこの縄を解きやがれ」
「すまないがそれは無理だ」
「何でだよ!お前らはまた俺の自由を奪うのか」
「俺たちはあくまでも人間を守るために存在する。お前の考え、悲しみには共感できるが、お前が人間を傷つける可能性があることは否めない。その可能性をみすみす放すわけには行かないんだ」
こいつを逃がしたら、今度こそ人間を皆殺しにするだろう。
そんな事させたりはしない。
「なら俺を殺してくれ」
「それもさせない」
「何でだよ!それじゃあ俺はどうすればいいんだよ!!」
この言葉に俺の中の何かが切れた。
「お前の中の答えはそれしかねえのかよ!!もう昔のことだろ!殺すことも出来ない、死なせて貰うことすら出来ない。だからどうしたよ!!人間と仲直りしようとは思わねえのか!」
「お前らがそんな事言えるか!お前ら人間が俺たちを殺したんだろ!!」
「だからそれが昔のことなんだよ。俺たち人間がお前や仲間達に酷いことしたのは知ってる。俺たちがさっきみたいなこと言えた義理じゃねえってのもな。だけど、今のこの国の人間は戦なんかしねえし、お前みたいな奴には人間以外の動物でも同情するようないい奴ばかりなんだよ。お前らの考える人間じゃねえんだよ。そんな奴ら殺しても何にも何ねえだろ」
「だからって今頃・・・」
「今すぐ考えを変えなくてもいい。だが、お前が人間にもう一度だけかけてやろうという意思があるなら俺と契約しろ。いつでも切れるように本当の方法ではないがな」
「・・・・少し考えさせてくれ」
「なあ、勇。お前、その顔からは考えられないような迫力出てたぞ。恐いって言うかなんか何時もの顔とのギャップで笑っちまったぜ」
薫がまだ少し笑ってる感じの顔で話しかけてきた。
「何が言いたい」
「いや別になんでもないぜ。ただ、あの台詞言ってるときの勇少しカッコ良かったかなってね」
「そうか?なんか、矛盾だらけで言ってる自分でも意味分からなかったんだけど」
「そうか?まあそれより、管狐はどう決断すると思う?」
そうだな。契約してくれるとありがたいんだけどな・・・。
でも、どうなるかな・・・。
「私は契約してくれると思いますです」
「うわっ!・・何だ葵か。いきなり出てくんなよな」
「私はさっきからそこにいましたですが何か?です」
なんか葵がものすごいオーラを発して怒ってる。
「ま、まあそれは置いといて。どうしてそう考えるんだ?」
話をそらされた上に、矛先が自分に向けられ渋々といった感じに振りかざし始めた右手を下ろす。
「だってさっき考えさせてくれって言ってたです」
「それがどうかしたのか?」
「その台詞を言った後は大体承諾するものなのです」
「「それだけ!?」」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こんな馬鹿げた会話を少し離れて見ていた管狐はまだ悩んでいた。
先ほどから自分の中にいる多くの魂。つまり、事件の当事者と会話している。
『どうする。賭けてみるか?』
『あの言葉は自分の思っていることを率直に語っただけだ。だが、私はああ言う意見も好きだ』
『しかし、人間の言葉に耳を傾けるなど・・・』
一匹が言った言葉を遮り、管狐という他の狐とは少し違った魂がその言葉を遮る。
『みてみろ、あの少年達の住む世界は、あんなにも平和なのだ。賭けてみる価値はあるだろう』
この一言で全ての魂の意思は固まった。
「勇とやら。その誘い乗ることにした」
この後、俺は期限付き契約を行い勇の仲間となった。
そのあとは一人の女・・・胸の小さな赤髪の・・・・・薫といったか?
そいつが、ふかふかの長椅子に寝転がり寝始めてしまい、他のものも疲れたと言う事でその場はお開きとなった。
これからどうなるかは知らんが、期待しているぞ人間ども。
―――――世界の書
・・・邪
負の感情を持った霊の集まり。霊単体とは違い、人の形をしておらず、ドロドロとした物に見える。そして、昇天したあとも邪が与えた呪いや物理的なダメージなどは残る。邪や邪神にはランクがあり、3段階で表される。邪の上からははっきりした判断力が存在し自分の残留思念から何をするべきかを知っているため、無駄な行動は余りしなくなる。
―――――理の書
・・・邪(邪気より)
人に害を与えようとする心。悪意。
病気を起こす悪い気。悪気。
物の怪。じゃけ。




