第22話 お前はメインディッシュだ
管狐が妖力を集めて、九尾になった。
俺はそれを見越して対策を練るつもりでいたのだが、一歩及ばず、先に九尾になってしまった。
「クソッ!!」
九尾になり、一つの固体としての能力が上がった管狐は予想通り積極的に攻撃を仕掛けてくる。
こちらは、葵の龍としての・・・本来の姿での具現を行うために、長刀をペンダントに戻しているため、避けることしか出来ない。
攻撃式や防御式で余計に霊力を消費したくないので、移動しながら霊力を込めている。
「ヒャアハハハハハ!!!さっきまでの威勢はどおした?ん?ハハハハハハハハ!!俺様の力におびえて声も出ないってかあ!!!」
九尾の狐は邪悪な笑いを発しながら攻撃を仕掛けてくる。
そして、管狐の攻撃におびえて声が出せないというのはあながち間違いではない。
陰陽術の攻撃基本式と呼ばれる零番から十一番までの式だけでなく、応用を行ったと思われる式までも使ってくるのだ。
こっちとしては分が悪い。
早めにあいつを使わないと・・・。
そう思い、元々青式十番を詠唱・霊力消費なしで行うための札を三枚あるうちの二枚を霊力に戻し、その霊力もペンダントに流し込む。
だが、
「くそっ!!これでも足りねえのかよ!!」
『勇様!!前に九尾!!攻撃してきますです!!!!』
その声を聞き、保身のために一枚残っていた札を使い青式十番を発動させる。
『フン!!』
九尾の狐はその九本の尻尾で、その押し寄せる波を弾き、鎮め、さらに、尻尾や口から吐いた狐火で進路をふさぐ水を蒸発させた。
「な・・・なんだと・・」
札からの発動によりある程度威力は落ちるものの、こうも簡単にあしらわれる代物ではないはず。
しかし、九尾の狐はそれを一瞬でねじ伏せた。
そして、九尾の狐は今度は俺に向かって狐火を飛ばしていた。
「危ない!!鎌鼬!!!あの炎を吹き飛ばせ!!!」
『御意』
薫が放ってくれた鎌鼬のおかげで狐火は完全に消えたが、その後すぐに鎌鼬は霊力の枯渇で消えてしまった九尾の狐は薫をにらみ、そこに駆けて、狐火の攻撃ではなく、あえて体当たりで攻撃をした。そして九尾の狐は呟く。
『お前はメインディッシュだ。俺の力でその眠らされた力を解放させてから戦ってやる。だから今は大人しく寝てな』
『勇様!!』
「ああ、分かってる」
薫の本当の力を解放させたら国一つどころじゃない。アジアが破滅するかもしれない!
それだけはアジアのためにも薫のためにもやらせはしない!!
そうして、自分の残りの霊力のほとんどをペンダントに込め、もう少しで葵が龍として具現するというとき、九尾が狐火を放った。
とっさの反応で避けることはできたが、その爆発に巻き込まれ、ペンダントは飛んでいき、そして俺は気絶した。




