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毒舌ダウナー少女の鋼魔法  作者: たなお
早朝のタッグバトル
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19/52

リベンジしても、あたしは負けた

 あの敗北から、しばらく経ったある日。


 あたしは、一つの噂を耳にした。


 とんでもなく強いコーチがいる――と。


 廃部寸前だった弱小マジッカー部を立て直し、たった一か月で《マジッカーフロンティア福岡県代表戦》を制する選手を育てた。


 その選手の名前は――菅原愛那(すがわらあいな)。


 あたしが予選一回戦で敗れたあの女を、愛那は決勝戦で倒していた。


 あたしがどうしても勝てなかった相手を倒し、大会を優勝した選手。


 そして――その愛那を、わずか一か月でそこまで育てたコーチ。


 気にならないわけがなかった。


「……会ってみたい」


 気づけば、あたしは他校である県立洛咲(けんりつらさき)中学校へ向かっていた。


 そして、そこで愛那に勝負を挑んだ。


 結果は――引き分け。


 最後の最後まで、お互いのHPを削り合うギリギリの戦いだった。


 勝てなかった。


 けれど、負けもしなかった。


 その試合を見ていた男がいた。


 二宮シン。


 愛那を育てた、噂のコーチだ。


『面白い戦い方するじゃねえか』


 それが、あいつとの出会いだった。


 それから、時間がある日は洛咲中へ通うようになった。


 シンの指導は――悔しいけど、すごかった。


 ただ練習量を増やすわけじゃない。


 あたしの長所を残したまま、悪い癖だけを潰していく。


『カレン、お前は一発の威力を意識しすぎだ。さっきの《アイアンカノン》だが、発動までに無駄がある』


『……わかった。絶対直す』


 試合は必ず録画された。


 一つ一つ動きを止め、足の位置、身体の向き、魔法を撃つタイミングまで確認する。


 無駄な魔力の使い方を直し、消費を抑えながら威力を上げる。


 得意な鋼魔法は、さらに磨かれた。


 苦手な部分は、一つずつ潰され、自分でも分かるくらい、強くなっていった。


 もっと――もっと強くなれる。


 次にあの女と戦ったら――。


 今度こそ勝てる。


 そう思っていた。


 そして、再びその機会は訪れた。


 《マジッカーフロンティア》全国大会への出場権を賭けた大型バトルロイヤル。


 そこであたしは、"あの女"と再会した。


 以前、予選一回戦であたしを倒した女だ。


 ずっと忘れられなかった相手。


 今度こそ……今度こそ、勝つ!


 二宮シンに教えてもらい、あの頃より、ずっと強くなった。


 だから――もう負けない!


 そう思っていたのに……


【毒毒(ぶすどく)カレン HP0】


「…………」


 まただ。


 また、届かなかった。


 あれだけ練習したのに……あれだけ強くなったのに……!


 また――"あの女"に負けた。


 そして、その大会で最後まで勝ち残ったのは、あたしでも”あの女”でもなく――


『優勝――夏目祐乃(なつめゆうの)選手!』


 歓声の中心で、小さな少女が笑っていた。


 夏目祐乃。


 彼女もまた――二宮シンの指導を受けていた選手だった。


 ◇ ◇ ◇


「――っ!」


 あたしは勢いよく目を開いた。


「はあ……はあ……」


 息が荒い。


 額には、うっすらと汗が浮かんでいた。


 見慣れた天井の自分の部屋。


 大会会場ではない。


「……夢か」


 枕元の時計へ目を向ける。


 午前6時。


「……早」


 あたしらしくない時間だ。


 普段なら、こんな時間に目を覚ましたところで、すぐ二度寝している。


 なのに悪夢を見た朝だけは違う。


 頭の奥に、あのときの悔しさがこびりついている。


 胸がざわついて、眠気なんてどこかへ消えてしまう。


「……だる」


 もう一度、布団を頭までかぶった。


「……寝よ」


 目を閉じる。


 10秒……20秒……100秒……


「…………」


 眠れない。


 頭に浮かんでくるのは、あの女に負けた瞬間ばかりだった。


「……あー、もう」


 勢いよく布団をめくる。


 ベッドから降り、着替えを手に取った。


 こんな気分のまま横になっている方が、よっぽどだるい。


「……練習する」


 誰に聞かせるでもなく呟いて、あたしはマジックギアを手に取った。

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