いつか必ず倒す
それからも、あたしは何度もシンへ攻撃を仕掛けた。
アイアンカノンを撃ち込み、バスターソードを振るう。
シンはすべての攻撃を避けることもできたはずだ。
それでも、あえて隙を見せて攻撃を受けた。
あたしが指摘された動きを直せているか。
速度や威力が、どれだけ変わったのか。
自分の身体とHPを使って、一撃ずつ確かめているのだ。
「違う、違う。 バスターソードの握りが甘いぞ」
「……くっ」
「力を入れすぎだ。そんな握り方じゃ、剣に振り回される」
悔しいけど、言われたとおりにする。
柄を握る力をわずかに緩め、腕だけではなく、腰の回転を意識した。
「……はあっ!」
床を蹴り、大剣を横薙ぎに振るう。
さっきよりも、明らかに速い。
自分でも驚くほど滑らかに刃が走り、シンの脇腹を捉えた。
バシィ!
「そうそう! 今のはいいぞ!」
攻撃を受けながら、シンが満足そうに笑う。
「やっぱり俺、教えるの上手いな!」
「……自分で言う?」
「事実だからな! はっはっは!」
その後も、あたしは何度も攻撃を繰り返した。
一撃を入れるたび、シンのHPが少しずつ減っていく。
そして――。
ビーッ!
試合終了を告げるブザーが、体育館に鳴り響いた。
スコアボードの表示が切り替わる。
【毒毒カレン HP100】
【二宮シン HP0】
「おっ。俺のHPがなくなったな」
シンはスコアボードを見上げ、軽く肩を回した。
「よし、カレンの指導はこの辺にするか」
「…………」
「次はハヤト。お前の番だ」
「オレっすか? 了解っす!」
ハヤトが鞄を置き、マジックギアを装着する。
表記だけを見れば、あたしの勝利だった。
HPを1も失わず、シンのHPを0まで削り切った。
完全勝利。
だけど――こんなものは勝利じゃない。
シンは、あたしの攻撃をすべて避けられた。
わざと攻撃を受けて、威力を確かめていただけだ。
あたしは戦っていた。
シンは、教えていただけ。
最後まで、その関係は一度も変わらなかった。
「……クソ」
小さく呟き、バスターソードを消滅させる。
悔しかった。
屈辱だった。
あたしはこれまで、周りから何度も強いと言われてきた。
別に、その言葉に甘えてきたつもりはない。
一人でも練習した。
自分より強い相手を見つければ、何度も勝負を挑んだ。
悪かった動きを一つずつ直してきた。
その努力が結果につながり、大きな大会でも、それなりの成績を残せるようになった。
中学二年になってからは、さらに実力が伸びた。
全国大会へ出場する愛那や祐乃と戦っても、一方的には負けない。
二人と肩を並べる程度の力は身につけたと思っている。
あたしは強い。
それは、自惚れではない。
積み重ねてきた結果を見れば、自信を持っていいはずだ。
だけど――。
そのあたしの前に、どうしても越えられない壁が立っている。
――二宮シン。
何度挑んでも、まるで歯が立たない。
本気を出させることすらできない。
いつも余裕の笑みを浮かべ、あたしの攻撃を簡単にかわす。
わざと攻撃を受けながら、悪いところを一つずつ指摘してくる。
常に見下ろされ、舐められている。
子どもの相手をするように、手加減されていた。
それが、たまらなく腹立たしかった。
そして、さらに腹が立つことに――シンの指導者としての腕は本物だ。
言われたとおりに構えを変えれば、目に見えて動きが良くなる。
一人では何日考えても分からなかった欠点を、シンは一目見ただけで見抜いてしまう。
その指導を受けるために、あたしとハヤトは無理を言って、他校の部活動へ参加させてもらっていた。
実際、シンと出会う前に比べれば、あたしはずっと強くなった。
それは嬉しい。
もっと教わりたいとも思う。
だけど――教われば教わるほど、シンとの距離がどれだけ遠いのかも分かってしまう。
「……まだ、全然届かない」
握った拳に力が入る。
いつか。
いつか絶対に――。
手加減も、指導も、わざと作った隙も関係なく。
あいつの余裕に満ちた顔へ、あたしの攻撃を叩き込んでやる。
「……絶対、倒す」
聞こえないように呟いたつもりだった。
けれど、ハヤトの指導を始めようとしていたシンが、わずかにこちらを振り返る。
そして、楽しそうに口元をつり上げた。
「その意気だ」
「……聞いてたの?」
「声に出てたぞ」
「……忘れて」




