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毒舌ダウナー少女の鋼魔法  作者: たなお
ロクでなしの最強魔法使い
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14/55

カレンvs最強

「《ぶっ飛べ、鋼の弾――アイアンカノン》!」


 両手を勢いよく突き出す。


 手のひらの先に銀色の魔法陣が展開され、その中心から鋼鉄の砲弾が撃ち出された。


 先ほどよりも速い。


 真っすぐに空気を切り裂き、シンの胸元へ迫る。


「いい速度だ」


 シンはそう呟くと、目を閉じた。


 避ける素振りすら見せない。


 アイアンカノンが、シンの身体へ直撃した。


 ドゴンッ!


 衝撃音が体育館に響き、銀色の粒子が周囲へ弾け飛ぶ。


 直後、スコアボードの数字が切り替わった。


【二宮シン HP85】


「当たったぞー!」


「鉄面皮女、やりおる!」


「ついに、あの男へダメージを与えた!」


 マドンナ親衛隊が一斉に歓声を上げる。


 だけど、あたしは喜べなかった。


「……ちっ」


 舌打ちしながら、シンを睨む。


「あんた……わざと受けたでしょ?」


「当然だろ」


 シンは胸元についた埃を、片手で軽く払った。


「今の攻撃なら、目を閉じてても避けられる」


「……くっ!」


「でも、さっきより速度は上がった。そこはいいな」


 シンはスコアボードを一度見上げる。


「ただし、威力が足りねえな」


「……15も削ったけど」


「いつものおまえなら、5は多く削れただろ?」


 シンは人差し指を立てた。


「俺に当てることばかり意識して、発射までの動作を小さくした。そのせいで、魔力を圧縮することを疎かにしたな」


「……速く撃てって、前に言ったじゃん」


「速く撃てとは言った。弱く撃てとは言ってねえよ」


「……無茶言わないでよ」


「速度と威力を両立させろ。それができなきゃ、格上には通用しないぜ? ――特に俺には」


 正しい。


 正しいからこそ、腹が立つ。


 速さを優先すれば威力が落ちる。


 威力を高めようとすれば、発動までの隙が大きくなる。


 その両方を成立させなければ、シンにはまともな一撃すら届かない。


「次だ」


 シンが、指先でこちらを招く。


「……言われなくても」


 あたしは右手へ魔力を集中させた。


「《出でよ、大剣――バスターソード》!」


 銀色の粒子が集まり、鋼鉄の大剣を形作る。


 柄を両手で握り、そのまま床を蹴った。


「はああああっ!」


 シンとの距離を一気に詰め、右肩から大剣を振り下ろす。


 けれど――。


「はい、ストップ」


「――なっ!?」


 刃が届く直前、シンがあたしの右腕をつかんだ。


 たったそれだけで、全身の動きが完全に止まる。


 振り下ろそうと力を込めても、大剣はぴくりとも動かなかった。


「この姿勢は駄目だ」


 シンはあたしの腕を押さえたまま、淡々と指摘する。


「踏み込んだとき、上半身が前に流れてる。腕が伸びすぎだ」


「離して……!」


「それに、脇が開いてる」


 シンは空いている手で、あたしの脇腹を軽く叩いた。


「前にも注意しただろ。大剣の重さに腕を持っていかれるな。脇を締めて、身体全体で振るんだ」


「……分かってる」


「まあ癖を直すのは時間がいるからな。次までに頑張って修正しろよ」


「……くっ」


「ほら、力抜け」


 シンがあたしの腕の位置を少し下げ、構えを修正していく。


「肘はここだ。腰を先に回して、その動きへ腕をつなげるんだ」


 戦いの最中だというのに、完全に指導へ切り替わっている。


 あたしは本気で攻撃している。


 なのに、シンにとっては、危険な攻撃ですらない。


 避ける必要もない。


 受け止めて、姿勢を直し、欠点を説明する余裕まである。


「……あたしは、本気なんだけど」


「ああ。知ってる」


 シンは平然と答えた。


「屈辱か? ここまで手も足も出ないと」


「……あたりまえじゃん!」


「――なら俺を超えてみろ。今じゃなくていい。いつか、俺を倒せ」


 シンが腕を放す。


「もう一回だ」


 あたしは大剣を握り直した。


 手のひらに、じわりと汗がにじんでいる。


 シンにとっては指導。


 あたしにとっては全力の勝負。


 その差が、どうしようもなく悔しかった。

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