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毒舌ダウナー少女の鋼魔法  作者: たなお
ロクでなしの最強魔法使い
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ロクでなしの最強指導者

 床に倒れていたマドンナ親衛隊の一人が、よろめきながら起き上がった。


「イ、インチキだ! 我々が負けるなど、絶対にあり得ない!」


 シンは腰に手を当て、鼻で笑う。


「負け惜しみとは傑作だな! 自分が雑魚だと認めた方が、いっそ楽になれるぜ!」


「ぐぬぬぬぬ……!」


「わははははは! 悔しいか、雑魚! ほら、もっと悔しそうな顔を見せてみろ!」


 シンが悪役みたいな笑い声を響かせていると、体育館の奥から2人の女子生徒が近づいてきた。


「コーチ。勝負はもう終わったんですから、煽るのも限度がありますよ」


 落ち着いた声でシンを注意したのは、あたしより少し背の高い女の子だった。


 もともと黒い髪を、さらに深い漆黒へ染めている。


 その中に一本だけ入った銀色のメッシュが、歩くたびに光を反射していた。


 凛とした目つきに、堂々とした立ち姿。


 その姿を見た親衛隊員の1人が、仮面を押さえながら身を乗り出した。


「あ、あいつは――間違いない! マジッカー全国大会、福岡県代表! 菅原愛那(すがわらあいな)だ!」


「菅原愛那だと!?」


 親衛隊員たちが一斉にざわめく。


「令和22年度の福岡県代表決定戦を制した、あの選手か!」


「決勝戦で、熱い戦いを繰り広げたという!」


「……詳しいですね」


 愛那は少し困ったように眉を下げた。


「有名人は大変だな、愛那!」


「ま、まあ……コーチのおかげですよ。知名度を持てたのは……」


「はっはっは!俺に感謝しな」


 シンは愛那の頭をぽんぽんと叩く。 


「そ、そういうところです」


 愛那は頬を赤らめるとそっぽを向く。


 その隣から、もう一人の少女が小走りで近づいてくる。


「でも、やっぱりコーチは強いね!」


 小柄な茶髪の女の子だった。


 柔らかそうな髪を揺らしながら、倒れている親衛隊員たちとシンを交互に眺めている。


「12人もいたのに、全然ダメージ受けてないもん。ボクも、コーチくらい強くなりたいなー!」


 明るく笑うその顔を見て、別の親衛隊員が大声を上げた。


「ああっ! あの少女も知っているぞ!」


「今度は誰だ!?」


「先日、生配信された全国大会出場権を懸けた大型バトルロイヤル! その優勝者――夏目祐乃(なつめゆうの)だ!」


「な、夏目祐乃!?」


「参加者全員を押しのけ、最後まで生き残った爆属性(ばくぞくせい)魔法の使い手!」


「えっ! ボクのこと知ってくれてるの?」


 祐乃は目を輝かせ、嬉しそうにその場で跳びはねた。


「ありがとう! もっと頑張るね!」


 祐乃は相変わらず明るい。


 全国大会への出場を決めた直後だというのに、変に気取る様子もない。


 愛那と祐乃。


 2人とも、あたしと同じ14歳だ。


 同年代の中でも、全国で名前を知られるほどの実力者。


 その2人が当たり前のようにシンのそばへ並んでいる光景を見て、親衛隊員たちは完全に混乱していた。


「な、なぜだ……?」


「なぜ、全国大会へ出場する選手が2人も、こんな中学校にいるのだ!?」


「しかも、2人ともこの男をコーチと呼んでいるぞ!」


「まさか偶然ではあるまい!」


「なぜって―――?」


 シンは愛那と祐乃の肩へ、馴れ馴れしく腕を回した。


 愛那は露骨に嫌そうな顔をし、祐乃は楽しそうに笑っている。


 シンは親衛隊員たちを見回すと、当然のことのように言い放った。


「そりゃあ――俺が育てたからに決まってんだろ」


「「「な、なんだってえええええええええっ!?」」」


 マドンナ親衛隊が一斉に飛び上がった。


「全国大会出場選手を、1人ではなく2人も育てただと!?」


「選手として強いだけではなく、指導者としても超一流……!」


「先ほどの言葉は、単なる大言壮語ではなかったのか!」


「当然だ」


 シンは愛那たちから腕を離し、得意げに胸を張る。


「こいつらが強くなれたのは、本人たちが努力したからだ」


 愛那と祐乃へ、一瞬だけ穏やかな視線を向ける。


「俺は、そいつらが持ってる才能を見つけて、進むべき道を教えただけだよ」


 親衛隊員たちが感動したように息を呑む。


 さっきまでの下品な笑い方が嘘みたいに、その姿は立派な指導者そのものだった。


 しかし――。


「まあ、まだまだ雑魚だから、うっぷん晴らしに丁度良いんだよな。昨日もいじめまくってスッキリしたぜ」


「「「やっぱりロクでもない男だったあああああああっ!」」」


「こんな強い選手たちを、さっきまで雑魚扱いしていじめていたのか!?」


「ば、化け物だ……!」


 マドンナ親衛隊達は全員、引き気味にシンを見る。


「俺にやられっぱなしが嫌だからって抵抗してくんだよ。だから返り討ちにしてやんの。もうこれが最高に気持ち良い!」


「さすがに図に乗り過ぎですよ、コーチ!」


 愛那の怒鳴り声が、体育館に響き渡った。

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