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守らなきゃいけないものが、できました

それから、数ヶ月が経った。


畑は、静かに息づいていた。土の下で膨らみ続ける命。葉は青く広がり、風に揺れている。


――もう少しで、収穫。


誰もが、その日を待っていた。


だが、その日の朝はどこかおかしかった。


やけに――鳥が騒がしい。甲高い鳴き声が、空を裂くように響いている。


ノエルは窓の外を見上げた。群れが、落ち着かない様子で旋回している。


「……変ね」


その背後で、ガランが低く呟いた。


「鳥が騒がしい……」


一歩、外へと出る。視線を遠くへ向ける。


「――魔獣が、移動している可能性があります」


空気が、張り詰めた。


「今日は外出を控えてください」


静かだが、有無を言わせない声だった。


「念のため、騎士団にも連絡を入れます」


ノエルは、畑の方角を見る。緑が、風に揺れている。


「……じゃがいもの様子、見に行きたかったのに」


ぽつり、と零す。


隣で、ルークが小さく頷いた。


その日は、何事もなく過ぎる――はずだった。


夜。


屋敷の扉が、激しく叩き開けられた。


「――ノエル様!!」


荒い息。土と血にまみれた姿。


トアだった。


「村に……!」


言葉が、途切れる。


「村に、魔獣が――!」


空気が、一瞬で凍りついた。


ガランがすぐに前へ出る。


「怪我人は?」


「戦ってる……!」


肩で息をしながら、叫ぶ。


「でも……あんなの、勝てっこない!」


震える指が、外を指す。


「あいつら……畑の方に行こうとして……!」


ノエルの心臓が、強く跳ねた。


「みんな……行かせないように、止めてる……!」


――あの畑。


みんなが、食べる分を削って。未来を託して、埋めた場所。


(……あれは)


(みんなの、命だ)


次の瞬間、ノエルは走り出していた。


「ノエル様!!」


背後でガランの声が響く。


「待ってください!」「危険です!」


だが、その言葉は届かない。


風を切る音。鼓動だけが、耳の中で響いている。


頭の中にあるのは、ただ一つ。


(守らなきゃ)


(あの畑を――)


夜の闇を裂いて、ノエルは村へと駆けた。


その足は、もう止まらない。


――これは、“与えられた力”ではなく、“選んだ覚悟”だった。

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