1-9:同じ症状
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9話:同じ症状
ガタン...ゴトン...
今は馬車で王都へ向かっている途中だ。父と母、それと傍仕え&御者としてニーナが、それと護衛が5人だ。
この護衛はハイデルブルグ家に仕えている者たちだ。【職業】は【護衛士】。
最初は騎士なのかと思ったが、騎士と名乗れるのは上級貴族の部下にならないとダメらしい。
【職業】の本質は変わらないが、呼び名は変わったりするんだと。
例えば、【戦士】は一般、【護衛士】は下級貴族、【護衛騎士】は上級貴族、【王国騎士】は国軍、【近衛騎士】は王族に仕える際に呼ばれるそうだ。
【戦士】の中には【剣士】や【槍士】、【弓士】、【盾士】、【魔法士】といった戦闘に特化した【士】があるが、それらを総じて【戦士】と言っている。
そういえば昨日、両親にこの馬車を見せて乗ってもらったところ、かなりの高評価だった。
「アレン!凄いな、この馬車は!」
「そうね!痛みも少なくて、長距離の移動も苦じゃないわ」
父も母もこの馬車の性能に驚いているようだ。スプリングの効果は抜群だ。
2人からは何故、この馬車が作れたのかという疑問が出たが、いろいろ考えてみた結果ということにした。
2人も今さらオレが動いた結果に対して驚くのは止めたようで、変なモノでないかぎりは自由に作ってみろということになった。
ただ、この馬車については他の貴族たちに売り込むべきだという話になった。レシピは作ってあるから、いつでも売れる用意はできているけど。
これを機に男爵家直下の商会を作ろうということになった。代表者兼開発者はオレと言う事で。
ただし、実務関係に関しては父の実家である商会から何人か寄こしてもらうことで落ち着きそうだ。もちろん商会の人間が不正などを行った場合は厳正な処分を下すことを忘れない。
値段設定だが、レシピ1枚で金貨10枚が妥当だろうということだ。ちなみに金貨1枚は日本円で約10万円だから100万ということだ。
これが高いのか安いのかわからなかったが、通常の馬車が金貨5枚程度だというからその倍の値段ということになる。
それでも振動が少ないから売れるだろうと父は言っている。そこらへんは父に任せることにした。
王都に向かう途中、他の貴族領を通過したり、邸に泊まらせてもらったりするときには、その領地の貴族に、この馬車のことを宣伝させてもらった。
他の貴族もレシピを売ってほしいというということだった。一応最初に王家へと献上することになるから、帰りしなにレシピを売るということで話は落ち着いた。
ハイデルブルグ家を出て一週間、ようやく王都へと到着した。いくら馬車といっても馬を走らせているわけではない。
遠かった。いくら振動問題が解消されても時間がかかっちゃ尻も痛くなる。床ずれしそうだったよ。帰りも同じ時間が掛かると思うと辛い。
王都には地方から貴族が来た時のために、邸が用意されており、その内の一つの邸に泊まることになっている。
「アレン、王城には今日着いたことを報告した。近日中には登城するからそれまでは自由に街を見て構わない。ただし護衛は連れていけよ」
「街にはいきますが護衛は必要ありません。ムギとソラがいますから」
「...わかった。だがくれぐれも気を付けるのだぞ。いくら精霊が付いているからといっても、王都は我が領よりも人が多くいる。中には良からぬことをする人間もいるからな」
「はい!」
早速オレは街に繰り出した。さすが王都、うちの領と違って人の数も街の賑やかさも段違いだ。
ただ、文明に関していてばあまり変わらない気がする。神様が言っていたように発展は遅れているというか停滞している感じだ。
これはいわゆる、進化よりも安定を取ったということだろう。文明が進化するには時間もお金も掛かるからな。
でもこれなら、オレの知識と錬金術があれば文明を発達させることもできる。
現代で生きてきた元日本人としては、自分の生活に楽になる物を最優先で作っていこうと思ってる。その流れでお金を稼いで、違う国にしかない素材とかも買えればいいな。
そんなこんなで色々歩いているうちに、ふと横を見ると裏路地に繋がる道を見つけた。
あぁ、これはいわゆる、スラム街という奴だろう。ラノベとかでよくある展開だ。ここは見なかったことにしようと思い踵を返そうとした。
コン!コン!
にゃあ!にゃー!
「ムギ!ソラ!」
ムギとソラが急にスラム街へと走り出してしまった。なんだ?急にどうしたんだ?
オレは急いで2匹の後をついていく。
奥へ奥へと行く2匹だったが、ある一角のあばら家の前で止まった。2匹は中に入れと言っているようだ。
オレは恐る恐る扉を叩く。
コンコン...
し~ん...
反応はない。それでも2匹は先に入っていく。精霊だから透けて通れるからだ。
オレは扉を開け、中の様子を見る。すると、小さい子供(と言っても、オレと同い年ぐらいの女の子)が倒れていた。
オレは急いで、その子供の様子を見た。
生きてはいるようだが、凄い熱だ。と言っても今のオレには何もできることがない。薬師でもないから解熱剤なんて作れない。さすがに薬は専門外すぎる。
この2匹はこの子を見てほしくてオレを連れてきたのか?2匹とも少し心配している雰囲気だ。
その時、誰かが入ってきた。
ガラッ!
「セナ!お兄ちゃん帰ってき...誰だお前は?!セナをどうする気だ!!」
どうやら兄が帰ってきたっぽい。まぁ兄がビックリするのもしょうがないだろう。何せ帰ってきたら、見知らぬ男が家にいるのだから。
そしてオレが言葉を発する前に、持っている剣で斬りかかってきた。
「ちょっ...待っ...!」
ボッ!
ドカッ!
斬られると思ったその時、ムギが火魔法で剣を溶かし、ソラが水魔法で斬りかかってきた男を吹き飛ばした。
ドガッ!
「グハッ!」
.........一瞬の出来事でポカンとしてしまった。
改めて精霊は凄いと思った。オレの意識とか関係なく危害を加えてくる相手には自動防御・迎撃をしてくれるのだから。
オレはムギとソラにお礼を言い、兄の様子を見る。ソラも加減をしているから怪我はさせていないだろう。
「落ち着いてくれ。私は怪しい者ではない!」
「ぐっ。ならなぜこんなところにいる!お前は一体誰なんだ?!」
「私はハイデルブルグ男爵の長男でアレンと言う」
「男爵の?!何故、男爵の子供がこんな所にいる!?」
どうやら信じてくれたようだ。来ている服が貴族風の服だったことが幸いしたのだろう。
貴族は平民に敬語で話しかけるのはまずいと言われているからタメ口で話す。
「うちの子たちが急にこの家に入っていってね。何事かと思って入ったら、この子が倒れていたんだ。で、凄い熱だったからどうしようかと思っていた時にあなたが入ってきたんだ」
コン!
にゃー!
2匹が兄の方を見ながら鳴いた。
「そうだったのか」
「で、この子はあなたの妹ってことでいいのか?」
とりあえず確認しておく。
「そうだ...です。妹のセナ...です。オレは兄のレオといいます」
「それで、セナは風邪か?」
「わからない。たぶんそうだと思う。でもいつもよりも辛そうなんだ」
たぶん?何故わからないのか聞いてみると、お金がなく医者に見せることもできないのだという。
親はどうしたのか聞いてみると、父は戦争で死に、母は病で亡くなったそうだ。頼れる親族もおらず二人でここで暮らしているということだ。
それにいつもよりも辛いという部分に引っかかりを覚えた。
元々、妹は身体が強くなく体調を崩しやすいらしい。それにすぐ眠くなってしまうそうで良く寝ているのだとか。
うん?よく寝ている?それって...。オレはムギとソラを見る...!?...まさか...オレはセナをよく見てみる。
するとセナの魔力量が多いことに気づいた。
「レオ!セナはもしかして【精霊術師】か!?」
オレがレオにそう問いかけると、レオは驚いた顔で答える。
「そ、そうです。でもなんでわかったんだ...ですか?」
「オレも精霊術師だからだ」
なるほど、この子の体調が崩れているのは、もしかするとオレと同じように魔力量が多くて体に負担が掛かっているからかもしれない。
でもそれが本当なら、すぐに助けることができない。解決策は精霊と契約すれば何とかなるけど、この王都に下級精霊以上の精霊がいなさそうなんだよな。
精霊の森に行くには時間も掛かるし...う~ん...。
ダメもとでムギとソラに、この子の魔力のコントロールができないかを聞いてみた。
コン!...クゥ~~ン。
にゃー!...にゃお~~ん。
「!?」
なんとできるみたいだ。契約してなくてもできるんかいッ!とツッコミたくなったが、一時的にだけで、恒久的にコントロールするには、この子と精霊が契約する必要があるらしい。
とりあえずムギとソラに、この子の魔力をコントロールしてもらうよう頼む。すると、見る見るうちにセナの状態が落ち着いてきた。
「なっ?セナの顔色が元に?何をした...いや、したんですか?」
「ムギとソラに、この子の魔力をコントロールしてもらってるんだ。あっ?ムギとソラっていうのはこの子たちの名前だ。この子たちは精霊でね。オレと契約しているんだ」
「なっ?精霊は姿が見えないんじゃ?セナも気配は感じるけど見たことはないと言ってたのに。しかも猫と狐?」
ムギとソラが見えるから驚いているのか、それとも精霊が動物だったことに驚いているのか。
「この王都には契約できるほどの精霊がいないから、それは見えないよ。まぁオレも今日ここに着いたばっかだから絶対にいないとは言えないけど。少なくともこの近辺にはいないと思うよ。いなければ姿を見ることもできないし、精霊との親和性がある程度ないとね。それとこの子たちは特殊でね」
説明が面倒だったので特殊という言葉で片付けさせてもらった。
「そうだったのか...ですか」
「無理して言葉遣いを直さなくてもいいよ。喋りやすいように喋ればいいよ。オレもそうさせてもらってるし」
だが、男は頑なにそれを拒んだ。貴族様のご子息にそんな言葉を喋ったら不敬罪になると言って。それなら男の話したいように話させる。
ん~、このあとどうするか?さすがに放置するのも気が引けるし、それに、このセナって子の魔力は高いからムギとソラのサポートがなければ危ないのは確かだし。
この2匹がわざわざここに連れてきたってことは、この子が精霊術師だからというだけでなく、おそらく精霊との相性も良いんだろう。
それならこの子を精霊の森に連れて行って動物精霊と契約させるのも一つの手だよな。
ならこの子はハイデルブルグ家に仕えさせるべきだな。であれば、父も母もダメとは言わないだろう。
それに商会を設立するなら働き手は大いに越したことはないし。
「レオ、一つ相談がある」
「な、なんでしょうか?」
「二人とも私のところで働く気はないか?」
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