1-10:初めての部下
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10話:初めての部下
「二人とも私のところで働く気はないか?」
「はい?」
急に言われればそう反応するか。なにせいきなり貴族に仕えないか?と聞いているのだからな。
オレが先ほど考えていたことを話す。もちろん本人にその気があればの話であり無理強いはしないこと。もし仕える場合はハイデルブルグに来てもらうことになることを付け足す。
「う...ん...おにい...ちゃん?」
セナが気が付いたようだ。
「セナ!目が覚めたか!体調はどうだ?辛くないか?」
「うん。なんかいつもよりいいよ。つらくない!」
ムギとソラの魔力コントロールが上手いってるようだ。やっぱり魔力量の多さが原因だったんだな。
「良かった...本当に良かった」
兄のレオが泣きながら笑っている。仕方ない...今まで頼れる人がいなかったんだから。
「おにいちゃん、この人は?」
レオは腕で涙を拭って答えた。
「この人は男爵様のご子息のアレン様だ。お前の体調を良くしてくれた人だよ」
「そうだったんですか。ありがとうございます」
なんだろう。しっかりしていると言えばいいのか、凄く丁寧だ。
「お礼ならこの子たちに言ってくれ。実際に力を貸してるのはこの子たちだから」
オレはそう言い、ムギとソラを呼ぶ。
「うわぁ!かわいい!!」
セナは2匹を抱き寄せると頭を撫でている。
「この子たちのお名前は何て言うんですか?」
「狐がムギで、猫がソラだよ」
「ムギちゃんとソラちゃんですね。ムギちゃん!ソラちゃん!ありがとう!」
コン!
にゃあ!
「かわいい!あれ?でもなんでこの子たちが?」
我に返ったセナが疑問を浮かべていた。オレがレオを見ると、レオが頷き妹に説明をし始めた。
説明が終わると、セナは改めてオレにお礼を言ってきた。レオもだ。
オレは先ほどレオに質問した話の答えを聞いた。それに対してレオの返答は。
「よろしくお願いします」
うん。良かった。それじゃあ、父と母にも話をしないとな。勝手に決めちゃったし。2人の給金は追って相談だ。馬車のレシピ代で稼げるから問題はないだろう。
一度邸に帰って話をしようと思ったら、レオが話を続けた。
「セナ、これからお前はアレン様のところで働くんだぞ。アレン様についていけば【精霊術師】として活動することもできるそうだ」
「えっ?おにいちゃんは?一緒じゃないの?」
「オレは精霊術師じゃないから一緒には行けない」
「そんな?!いやだよ!おにいちゃんと一緒じゃなきゃ!」
なんか二人して言い合いをしている。なんだ?レオは何を勘違いしている?妹だけ連れていくとか鬼畜か?薄情に見えるか?
「アレン様、どうかおにいちゃんも一緒に連れてってはくれませんか?」
「セナ!わがままをいうんじゃない!オレは大丈夫だから!」
二人だけで盛り上がっている。まったく...
「あのなぁ、レオ。オレは二人ともと言ったぞ!なんでセナだけの話になっているんだ?」
人の話はちゃんと聞いとけって...まぁ10歳かそこらの子供に言う事ではないか?
「でも、オレは【精霊術師】じゃないし...」
「誰も【精霊術師】でないとダメなんて言ってないだろ」
「だけど、オレじゃあ、役に立てない」
「役に立つのかどうかはオレが決める。ちなみにレオの【職業】は何なんだ?」
「オレは【剣士】です」
剣士か。ならいいのがあるじゃないか。
「ならお前はオレの専属【護衛士】になればいい」
「オレが【護衛士】に?」
「そうだ!オレは男爵家の長男だからな。いずれは男爵家を継ぐことになるだろうから、オレ専属の護衛が欲しいと思ってたんだ。それにお前がなれ!」
「オレなんかでいいのか...ですか?」
「もちろん、今は仮の話だ。今は頼りないかもしれないけど、それはこれから力をつけていけばいい。もちろん、力不足なら専属の【護衛士】の話もなかったことにする。それはお前の努力次第だ。オレのモットーは【働かざる者、食うべからず】だ。どうだ?」
「おにいちゃん!」
「...よろしくお願いします!絶対に役立って見せます!」
さて、そうと決まれば善は急げだ!オレは二人を伴って邸へと戻った。
~王都 男爵邸(仮)~
「それで、この二人を雇いたいと」
オレは父と母に二人の事を話す。
「はい。レオはオレの【護衛士】として、セナは【精霊術師】として、オレのサポートをしてもらおうと思ってます」
「・・・・・・・」
父はいきなりオレが二人を連れてきたことに多少の驚きはあったが、決して反対している様子は見られない。
まぁ貴族家であるから容易に人を招くことに抵抗はあるんだろう。それに、相手が子供で身よりもなくスラム街で住んでいたとすれば謀略の可能性もないわけではないと考えているのだろう。言い方は悪いが、身寄りがない子供は捨て駒に使われるのがオチだからな。
そこで今までオレと父の話を聞いていた母が口を開いた。
「いいではないですか、アル。アレンが二人に言ったように、ただ養うのではなく働かせると言ってますし、努力しなければいけないとも言って、二人も同意しているのですから。それにムギちゃんとソラちゃんが迎えに行ったみたいなものですし。うちのマリンも見えてるようですしね。そうでしょ?セナちゃん?」
「は、はい!小人みたいな青髪の可愛い女の子が見えます」
「マリンも気に入ってるみたいですからね。精霊は嫌な雰囲気を感じ取ると距離を置くけど、そんな様子もないから」
「...そうか。わかった。二人を我が男爵家で雇おう。二人ともお前の部下として面倒を見るようにな。給金は帰ったら相談しよう。まぁ、今後のお前が作るレシピで問題ないだろうがな」
さすが父、考えてることは一緒か。
「「ありがとうございます!頑張ります!」」
「期待してますね」
「期待しているよ。ニーナ、二人を部屋に案内してくれ」
「かしこまりました、旦那様」
ニーナが二人を連れて部屋から出ていく。オレは改めて父と母にお礼を言った。
当面、二人には一般常識を学んでもらうのと、レオにはうちの【護衛士】に修行をつけてもらうとして、セナは体力をつけるのが最優先だな。
オレも二人に宛がわれた部屋に行き、今後のことを話す。
うちの【護衛士】にレオを紹介し、扱いてもらうようお願いした時、
レオは苦笑いしていたが、これもオレの【護衛士】になるには必要な事だから、精いっぱいやってもらいたい。
セナはとりあえず、ハイデルブルグに戻るまではニーナの手伝いをさせる。
それと城から返答がきたようだ。明日、登城することを伝えられた。
謁見の間で、王様とその他大勢の貴族がいるとのことで早くも帰りたいと思ったのは内緒だ。
~翌日~
オレは父と母と一緒に王城へと着き、案内係の騎士に案内され、今は謁見の間へ向かっている途中だ。
王城へと入ってきてから、何か視線が痛い。それになんかボソボソ言ってるし。
なんなんだ?
「ホント、この視線は嫌いだわ。文句があるなら正々堂々と言えばいいのに」
キッ!
母が周りにいる人間たちに聞こえるよう喋りながら周りを軽く睨むように見る。
すると、周りにいた貴族風の男たちが、そそくさと立ち去って行った。
「ホント嫌になるわ。だから王城には来たくないのよ」
母が本当に嫌な顔をしながら声に出す。
なぜそんなに嫌なのか?さっきの視線などに関係があるのかを聞いてみた。
ハイデルブルグ家は代々【精霊術師】の家系であり、精霊と契約できた場合は強力な力を得ることから、王家より男爵の位を代々賜っていた。
だが、代を重ねるにつれ、ハイデルブルグ家は【精霊術師】として精霊と契約ができなくなっていった。
そんなことがあり、ハイデルブルグ家は王都貴族から役立たず男爵・名ばかり男爵と蔑まれており、一度は降爵の話も出たそうだ。でも母が【精霊術師】として精霊と契約が出来たため、その話は白紙になったようだ。
しかし、その母も【精霊術師】として、王家に貢献をしていないことから王都貴族からは嫌われているのだとか。
何度か軍事目的で母を行軍させるべきだという話が合ったそうだが、体調が優れないなどを理由に断っていたそうだ。
【精霊術師】は軍事目的で使われることが多いらしいからな。
「まったく、なんで私の可愛いマリンを戦争に使われなければならないの!」
と、母は精霊を戦争に使うべきではないと思っている。
精霊にお願いすれば問題ないんだろうけど、心情的に嫌なんだろう。
さて、そういうことがあって王城でのオレたちへの風当たりは強いという訳だ。納得!
基本的にオレたちは自分たちの領から出ることはしないから、王城へ行く時だけ我慢しているらしい。
そんなこんなで謁見の間に着いた。
「ハイデルブルグ男爵様一行をお連れしました」
「入れ」
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