1-12:謁見後
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12話:謁見後
「すまなかったな、アルリード、エレン」
部屋に入って開口一番に陛下が謝ってきた。
なんでも陛下と母は同じ王立学園の貴族科に通っていて同級生だったらしい。ちなみに父は平民だが商人の息子だったため一般科にいたとのことだ。
この世界では貴族家の人間は15歳から3年間は学園に通うことが義務付けられている。これに例外はなく例え王族であっても従う必要があるらしい。
その学園生活で勉学・交流をし、世の発展に貢献するようにするのだとか。と言いつつも、年頃の紳士・淑女が一同に集まることから出会いの場となっているようだ。
父も母もそこで出会い、卒業後結婚したそうだ。で、オレもあと10年でその学園に行かなければならないらしい。
貴族の柵があるんだろうなと考えると面倒だ。行かないで済むことは本当に出来ないのだろうかと思ったが、平民であれば問題ないが貴族はやはり絶対らしく、行かないとなると貴族でないということで貴族位没収となる重い処罰が下るらしい。
それでも特例はあるが、止むにやまれぬ事情でない限り、その特例は出ないようだ。
「それで陛下、やはりあのサボル侯爵は...」
「あぁ、ハイデルブルグ男爵を降爵もしくは廃爵させようという腹積もりだろう。奴の言い分だと王家に貢献していない者を貴族にするのは王家の威信に関わるという名目だ。で、降爵させた後釜に自分の勢力の誰かを昇爵させようという魂胆だろうな」
派閥争いか。自分たちを巻き込まなければ好きにやってくれというスタンスを貫きたいが、今回は自分たちがその渦中にいるという状態だ。
元々ハイデルブルグは役立たず、名ばかり貴族と言われているから恰好の的なのだろう。
しかし、ほとんどの貴族が【精霊術師】に関してそう思っているのに、陛下と宰相、それに軍務卿はそう思っていないように思う。
オレが疑問顔をしていたのがわかったのか陛下がオレに聞いてきた。
「どうした、アレン?」
「えっと、陛下たちはハイデルブルグというか【精霊術師】に対して好意的に感じられて、ちょっと不思議だったので」
「あぁ、オレはエレンと学園で同じクラスでな。ハイデルブルグは女系一族ということもあり女性が強くてな。それにその時にはエレンは【精霊術師】として精霊と契約してて、精霊術を自由に使えていたから、その強さを知っていたんだ」
陛下の言っていたことに、母が付け足してオレに説明してきた。
「でも、あの時は今と違って精霊との意思疎通は難しかったから実は自由には使えていなかったんだけどね」
「それでも、精霊術の強さを認識するには十分だったよ」
少し陛下が疲れたように話していたのが印象的だった。母の学園生活は知らないほうが良さそうだ。
今度は軍務卿が話をし始めた。
「我々、軍に関しては時折、精霊と契約している【精霊術師】が入ってきたりしていたからな。それに敵軍に【精霊術師】がいて戦ったこともある。差異はあるものの【精霊術師】の強さや利便性は理解しているつもりだ。しかし、それに携わらない者からしたら、侮るだろうことは想像に難くない」
最後に宰相が。
「我が一族は代々王家を支えている家系でおりましてな、家の書庫に先祖が書き記した日記のようなものがあり、そこに【精霊術師】として活躍された初代ハイデルブルグ家について書かれていたのですよ」
「そのようなことが書かれていたのですか?」
母もそれについては初耳のようで驚いている。宰相はそれに頷き続きを話した。
「そこにはハイデルブルグの由来も書いてありましてな。この国は【ハーレンブルグ】と言う名ですが、【ブルグ】には城という意味もあり、重要な場所であることを指しています」
「ん?それではハイデルブルグも?」
父がふと思った疑問を口にした。それに対して宰相が返答した。
「左様。ハイデルブルグも城を冠する【ブルグ】の名を与えられています。それだけ当時の国王は【精霊術師】を重用しており、多大な信頼を得ていたことの証拠でしょう。だからこそ男爵の位を与えていたのですから。それに日記の最後に【精霊術師】を敵に回すな。味方につけよとの一文が書かれておりましたから」
「あぁ、その一文なら我が王家にも伝わっているな」
なるほど、だからお三方は【精霊術師】に対して寛容というか好意的なんだな。
ただ、その事実を知らない者たちからすれば、変に保護されているような感覚を持って面白くないのだろう。それの筆頭がサボル侯爵ということか。
「だから今回のこの状況は申し訳ないという気持ちだ。しかし、世論の状況がそれを許さない状態なのも事実なのだ」
陛下も【精霊術師】の置かれている状況は理解しているようだ。
「それに関しては私も申し訳ないと思っております。しかし精霊は争いごとが嫌いで、下手したら契約が切られてしまう可能性もあるのです」
「そう、そこだ。謁見の間でも言っていたが、精霊は争いごとが嫌いというのは事実なのか?もし事実であればなぜ他の国の【精霊術師】は契約が切れないのだ?」
「アレン、あの話を陛下に」
あの話?あぁ、精霊王との話か。オレは精霊王から聞いた精霊についての話をこの場にいる3人に話した。
「まさか精霊王という存在がいるなんて。しかも、その精霊王の祝福をアレンが受けているとは。だが、その話が本当なら精霊と契約している【精霊術師】の扱い方を今後変えないといけないか」
「そのようですね。【精霊術師】は今後、防衛のみに当てたようがよろしいでしょう。まぁ、今の我が国の軍には精霊と契約している【精霊術師】はいませんが」
「そうだな。だが、今後の方針にはなるだろう。それに今後は【精霊術師】が我が国で増える可能性もあるだろう。そういうことだな?アレン?」
「そうですが、あくまでも【精霊術師】と精霊の性格によると思います。無理強いをしたら変わらないと思います」
「もちろん、無理強いはしない。国防という観点で問題なければ、という条件で要請しよう。ちなみにアレンの契約精霊を見せてもらうことは出来るか?」
陛下が動物精霊に興味を持ったようなので、ソラを呼び出した。最初は急に現れたソラに驚いていたが、ソラの可愛さに3人ともメロメロだ!
少し精霊と戯れたところで陛下が話を切り出した。
「話を戻そう。それで、明日のお披露目だが、今アレンができる全力を見せてくれ。ちなみに中級精霊の全力とはどの程度なんだ?」
「どの程度と言われましても、全力を出したことなどないんです。明日はどんなことをすればいいのか?」
そう、オレが悩んでいるのは明日のお披露目に何をすればいいのかだ。
「そうだな。軍務卿、何をすればいいだろうか?」
「そうですね。それなら【魔法士】の訓練にも使っている的を使いましょう。あれは魔法の威力を図るのに最適なものですから、その威力を持ってお披露目と言う事にしましょう。威力次第では反勢力も大人しくなるでしょう」
「うむ、そうすれば侯爵たちもある程度治まるだろう」
「わかりました。なら出された的に向かって全力でやればいいだけですね」
「ああ、明日はそれでいい」
それじゃあ、帰ったらムギとソラに話をして何かド派手な感じでやるとしよう。
その後は、世間話をしていた。で、その世間話のなかで馬車の話が出た。そういえば王家に献上するって話だったのを思い出す。
今回は実際に馬車に乗ってもらい、価値をわかってもらうことにした。評価は上々で是非欲しいとのことだったので献上することにした。
その時、レシピはうちが新たに創設する商会に権利があることを陛下に認めてもらった。
この陛下に認めてもらう大きなメリットは2つ。
一つは王家御用達レシピとして信用があり売れる見込みが高くなるということ。
2つ目は王家が後ろ盾になってくれるということだ。
これで万が一、レシピの所有権に異議を唱えてきた場合は王家に歯向かったということになり、とても大変な事になる。
そんなこんなで、やっとこさ王城での用は終わったので、王都の仮邸へ帰る。
明日は訓練場でお披露目をしたら、領地へそのまま帰ることになるそうなので、レオとセナにも伝えておかないと。
あの二人にも世話になった人はいるだろうからな。挨拶ぐらいはさせないと。
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