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レオン覇道戦記  作者: 慈架太子


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第3章:仲間たちの集結

「セレスさん、ヴァレリアさん。修行の総仕上げです。あの巨躯……10m級のクイーンアントと、その側近5体に挑みましょう」


レオンの指し示す先には、丘のような巨体を震わせる女王蟻が鎮座していました。周囲を固める側近たちは、先ほどのキラーアントよりもさらに一回り大きく、禍々しい魔力を放っています。


「今までの全てを出し切ってください。僕が女王の動きを牽制します。お二人は側近を片付けたあと、女王の懐へ!」


レオンの合図とともに、二人の年長者が弾かれたように地を蹴りました。セレスは「アクセル」を限界まで引き上げ、光の矢と化した刺突で側近の一体を瞬時に沈めます。ヴァレリアも「マッスル」を全開にし、側近の大顎を片手剣の腹で強引に受け流すと、懐に潜り込んで「ウォーターバレット」をその節節に叩き込みました。


「……はあ、はあ! さすがに硬いわね、でも止まっていられないわ!」


ヴァレリアはロケット型の豊かな胸を激しく揺らしながらも、止まることなく次の標的へと斬り込みます。レオンが放つ水の刃が女王の触覚を削ぎ、注意を逸らしている間に、二人は鮮やかな連携で5体の側近を全て屠り、そのまま女王へと肉薄しました。


セレスの光が女王の視界を奪い、その隙を逃さずヴァレリアが「マッスル」の剛力を込めた一撃で脚部を断つ。姿勢を崩した女王の頭部へ、二人の片手剣が同時に突き立てられました。


断末魔と共に巨躯が沈むと、静寂が戻りました。

「お疲れ様です……お二人とも、完璧でした」

レオンは誇らしげに二人を見つめ、10m級の遺体を丸ごと「アイテムボックス」へと吸い込ませました。この森で、三人に敵う者はもういません。




修行の仕上げとして、三人は今日仕留めた獲物の解体に取り掛かることにしました。レオンは二人を促し、アイテムボックスからキラーアントやクイーンアント、マジックナイトの残骸を取り出しました。


「これだけの素材、普通に解体していたら日が暮れてしまいます。今度は『風の刃』をイメージして、魔法で精密に切り分けてみましょう。皮、角、牙、爪、骨、肉、内臓、それに外殻……全てが貴重な資金になります」


レオンの助言を受け、三人は集中を高めました。セレスは光の魔力を極限まで細く鋭い糸のように練り上げ、フォレストボアの皮を傷つけずに剥ぎ、肉を部位ごとに切り分けていきます。


「……こうですか、レオン様? 力加減が難しいですが、慣れると手で行うよりずっと正確です」


一方、ヴァレリアは「ウォーターバレット」の応用で、超高圧の細い水流を作り出し、キラーアントの硬い外殻を接合部から鮮やかに解体していきました。

「ふふ、これなら商隊を雇わなくても、私たちだけで最高級の素材を市場に持ち込めるわね」

彼女はロケット型の豊かな胸を昂揚で揺らし、魔石を一つずつ丁寧に取り出しては、その質を鑑定するように目を細めました。


最後にレオンは、マジックナイトたちが身に纏っていた魔法銀の鎧を山積みにしました。彼はそこに強力な熱と圧力を加えるイメージで魔力を注ぎ込み、不純物を一気に取り除いていきます。

「……よし、これで『魔鋼』のインゴットの完成です」

ドロリと溶けた魔法銀が再構築され、鈍い輝きを放つ純粋なインゴットへと姿を変えました。


全ての解体を終え、部位ごとに完璧に仕分けられた素材を再びアイテムボックスに収納した三人は、充実感と共に街への帰路につきました。




街に戻った三人は、その足で冒険者ギルドの査定窓口へと向かいました。夕暮れ時のギルドは多くの冒険者で賑わっていましたが、レオンたちがカウンターへ近づくと、その独特な雰囲気に周囲の視線が集まります。


レオンは年長者であるヴァレリアを立て、一歩下がった位置で彼女に目配せをしました。


「ヴァレリアさん、お願いします」

「ええ、任せてちょうだい」


ヴァレリアはロケット型の豊かな胸を張り、自信に満ちた足取りで受付の前に立ちました。レオンが「アイテムボックス」から次々と素材を取り出すたびに、酒場の方からもどよめきが上がります。10m級のクイーンアントの外殻、鈍い光を放つ魔鋼のインゴット、そして赤黒く脈打つオークキングの魔石。さらに、魔法で完璧に解体・清拭された大量の肉が並べられると、査定員の手は震え始めました。


「ちょっと、これだけの量を今ここで……。それにこの肉、まるでたった今仕留めたばかりのような鮮度じゃないか」


「当然よ。魔法で瞬時に解体して、すぐにアイテムボックスに収納したんだから。適当な数字を並べたら承知しないわよ。詳細な『査定見積書』を出しなさい」


ヴァレリアの鋭い眼光に、ギルド側は慌ててベテランの責任者を呼び出しました。一刻後、提示された見積書をヴァレリアはひったくるように受け取り、精査を始めました。


「……ふん、やっぱりね。このフォレストボアとウルフの肉、ただの食肉扱いにしているけど、これほど血抜きが完璧で臭みのない肉は王都の高級店でもお目にかかれないわ。保存状態がいいんだから、市場価格の1.5倍は出しなさい。それとキラーアントの外殻も、節ごとに完璧に切り分けてある。技術加算分を乗せなさい」


ヴァレリアは指先で見積書をなぞり、商人の本能を全開にして畳み掛けました。


【フォレストウルフ・ボア 10体分】

・極上食肉(血抜き完璧):金貨30枚(鮮度・加工加算)

・上質な毛皮:金貨15枚

・牙・爪・骨:金貨10枚

・魔石(並):金貨15枚


【キラーアント 20体・クイーン 1体】

・一般外殻:金貨40枚

・クイーン特級外殻:金貨100枚(無傷評価)

・食用内臓・肉質部:金貨20枚

・魔石(中・特級):金貨110枚


【マジックナイト・オークキング】

・高純度魔鋼インゴット:金貨120枚

・オークキング魔石(最上級):金貨150枚

・最上級オーク肉:金貨40枚(強壮剤・高級食材用)

・王の牙・皮:金貨50枚


合計:金貨700枚

特に肉の査定において、ヴァレリアは「レオンの魔法による鮮度維持」がいかに付加価値を生んでいるかを力説し、当初の倍近い値を認めさせました。


「……合計金貨700枚。これで手を打ってあげるわ」


最終的な見積書を突きつけるヴァレリアに、ギルド責任者は青い顔で頷くしかありませんでした。レオンとセレスは、その老獪なまでの交渉術に感服しながら、ずっしりと重い金貨袋を受け取りました。


「レオン、セレス、見たかしら。これが『情報』と『交渉』の力よ。さあ、このお金で最高の準備を整えましょう!」


ヴァレリアは満足げにロケットを揺らして微笑み、レオンもまた、仲間の頼もしさに改めて敬意を抱くのでした。



ギルドでの大立ち回りを終えた三人は、街で一番賑わう宿屋の食堂へと足を運びました。テーブルの上には、先ほど換金したばかりの金貨の一部で注文した、湯気の立つ肉料理と冷えたエールが並んでいます。


レオンは年長者である二人のグラスにエールが満たされているのを確認してから、自分のジョッキを軽く掲げました。


「ヴァレリアさん、セレスさん、今日はお疲れ様でした。お二人の見事な戦いぶりと、素晴らしい交渉に……乾杯しましょう」


「乾杯!」

三人のジョッキが小気味よい音を立ててぶつかり合います。冷たいエールを喉に流し込んだヴァレリアは、ぷはぁ、と満足げな吐息を漏らし、ロケット型の胸元をゆったりと揺らして椅子に深く背を預けました。


「ふぅ……。ねえレオン、今日の狩りだけど、正直驚きの連続だったわ。特にあの『アクセル』と『マッスル』。あんなに体が軽くなって、自分の力が何倍にもなったみたいに感じるなんて。今までの商売旅で苦労してたのが馬鹿らしくなっちゃうわね」


セレスも、頬を少し赤く染めながら熱っぽく語ります。

「私もです、レオン様。あんなに速く動き、正確に剣を振るえたのは初めてでした。それに、何より『マジックアーマー』の安心感。あれがあるだけで、一歩踏み込む勇気が全く違います。守られていると確信できるから、攻撃に全力を注げる……本当に、魔法の力は素晴らしいです」


レオンは二人の言葉に安堵し、切り分けられた肉を口に運びながら問いかけました。

「魔法での解体はどうでしたか? 手作業よりは楽だったと思うのですが」


ヴァレリアは楽しげに目を細めます。

「楽どころじゃないわよ! 『風の刃』でスパスパ切れる感覚、あれは病みつきになりそう。内臓を傷つけずに外殻だけを剥がすなんて、熟練の解体師でも数時間はかかるわ。それを一瞬で、しかもあんなに綺麗に……。おかげで見積書の数字を釣り上げるのも簡単だったわ。最高の効率ね」


「はい。アイテムボックスにその場ですぐ収納できるのも、鮮度が落ちなくて助かります。血の臭いに誘われる魔物の心配も減りますし、これからの旅が劇的に変わる予感がします」


セレスが心底感心したように頷くと、レオンは嬉しそうに微笑みました。

「お二人がそう言ってくれて良かったです。でも、今日はまだ第一歩ですから。明日からはもっと、この力を馴染ませていきましょう」


三人は美味しい料理に舌鼓を打ちながら、次なる旅の計画と、今日手に入れた莫大な富の使い道について、夜が更けるまで語り合うのでした。




エールを飲み干し、一息ついたレオンは、少し真剣な面持ちで二人の顔を見つめました。


「ヴァレリアさん、セレスさん。今日の結果を改めて振り返ると、すごいことになりましたね。たった一日で金貨700枚です。このペースで一ヶ月狩りを続ければ、単純計算で金貨2万1000枚……。これだけの額があれば、小国の予算にも匹敵しますよ。もう僕たちは、単なる冒険者の枠を完全に超えてしまったのかもしれません」


レオンの言葉に、ヴァレリアは重厚な金貨袋をテーブルに置き、ロケット型の豊かな胸を昂揚で揺らしながら不敵に笑いました。


「本当ね。正直、ギルドに張り出されているような地道な依頼を一つずつこなすのが馬鹿らしくなってくるわ。薬草を摘んだり、街の溝さらいをしたりして数銀貨を稼ぐなんて、今の私たちには時間の無駄でしかない。Sランクの冒険者だって、これほどの額を一日で稼ぎ出すのは至難の業でしょう。レオン、貴方が授けてくれた魔法は、世界を変える力だわ」


セレスもまた、自分の手のひらを見つめながら、静かに、しかし確かな自信を込めて頷きました。


「ええ。今日、キラーアントの群れやあの巨大なクイーンを相手にした時、恐怖よりも『勝てる』という確信が先にありました。身体強化、防御魔法、そして無詠唱の攻撃。これらが組み合わさった今の私たちは、おそらくギルドが定めるSランクの基準すら、とうに追い越してしまっています。レオン様、あなたの指導のおかげです」


レオンは二人の成長を誇らしく思いながら、エールをもう一口含みました。


「お二人の言う通りです。もう『依頼を受けて小銭を稼ぐ』段階は終わりました。これからは、自分たちの目的のために、この圧倒的な力と資金をどう使うかを考えるべきです。誰かに使われるのではなく、自分たちが望む場所へ行き、望むものを手に入れる。そのための準備は、今日一日で整ってしまいました」


「ふふ、頼もしいわね」とヴァレリアがエールのジョッキを再び掲げました。「金に困らないということは、誰にも頭を下げなくていいってことよ。これからは私たちのルールで旅をしましょう。明日はまず、この金貨を注ぎ込んで、王侯貴族も裸足で逃げ出すような最高の馬車と、最強の装備を揃えに行きましょうか?」


三人の視線が重なり、夜の食堂に新たな野望が灯ります。かつては一介の少年と、居場所を失った二人の女性だった彼らは、もはや世界を震撼させうる「最強のパーティ」としての自覚を、その胸に深く刻んでいました。



三人が将来の展望を語り合っていると、酒場の喧騒を割って、体格のいい男たちがレオンたちのテーブルへと近づいてきました。その中心にいたのは、鋼のような肉体を持つ格闘家のアランです。


「失礼。隣で話を聞かせてもらった。一日で金貨七百枚……それが事実なら、あんたたちはこの街のギルドの常識を根底から覆してしまったことになる。私はアラン。徒手格闘を専門としている。あんたたちの実力、そしてその魔法の理論に強い興味がある」


アランは堅苦しい口調で会釈しました。彼は魔力を肉体に纏わせて戦う、彼らと同じく実力主義の求道者でした。すると、その背後から顔に古い傷跡のある、いかにも「荒事のプロ」といった風貌の剣士、ブライトが低い声を響かせます。


「おいアラン、堅苦しい挨拶は抜きにしろ。……ガキ、お前がその魔法を教えたのか? 俺はブライト。斬撃の速さには自信があるが、あんたらの話は俺の常識を超えてやがる。……気に入った。その強さ、ハッタリじゃねえなら俺も混ぜろ」


ブライトはコワモテの表情で不敵に笑い、腰の剣を軽く叩きました。さらに、その後ろから横幅のある屈強なドワーフ、バルクが鼻を鳴らしながら割り込んできました。


「おいおい、武闘派の連中だけじゃ話が進まねえだろ。俺はバルクだ。見ての通りドワーフの鍛冶師さ。あんたらの持ち帰った『魔鋼』……あんな高純度の品、俺のハンマーで叩かせねえのは宝の持ち腐れってもんだ。ついでに酒の醸造や蒸留も得意だ。最高の仕事の後には最高の酒が必要だろ?」


バルクは職人らしい太い指でテーブルを叩き、レオンたちの獲物に職人としての情熱を燃やしています。最後に、眼鏡の奥で知性を光らせる青年、バルトが冷徹な口調で口を開きました。


「理論的に考えて、あなたたちの魔法行使とアイテムボックスの効率化は、既存の魔道具市場に革命を起こします。僕は魔道具技師のバルト。特に量産技術に関しては僕の右に出る者はいません。あなたの魔法理論を魔道具に落とし込めれば、その利益は金貨数万枚では収まらない。非効率な現状を打破するために、僕の知識を貸しましょう」


理系特有の理屈っぽさでまくし立てるバルト。それぞれに卓越した技能を持つ四人の男たちが、レオンたちの圧倒的な力に惹かれるように集まってきたのです。


レオンは、年長者である二人の顔を見ました。ヴァレリアは新進気鋭の才能たちを品定めするように、ロケット型の胸元を揺らして微笑みました。セレスもまた、新たな仲間、あるいは協力者となるであろう彼らの実力を測るように、静かに視線を向けます。


「……面白い顔ぶれが揃いましたね」


レオンは年長者への礼儀を保ちつつ、新しい風を感じて微かに微笑みました。



翌朝、爽やかな陽光が差し込む森の広場に、レオンたち3人と新たに加わった4人の男たちが集まりました。互いの手の内を知り、連携の礎とするため、実戦形式の模擬戦トーナメントを行うことになったのです。


「皆さん、今日は怪我のない範囲で、全力を見せ合いましょう」


レオンが年長者たちへ敬意を込めて開会を告げると、静かな熱気が場を包みました。第一試合は、格闘家アランと剣士ブライト。魔力を拳に凝縮させて打ち込むアランに対し、ブライトは空気を切り裂く鋭い斬撃で応戦します。コワモテな外見に違わぬ力強い剣筋と、一分の隙もないアランの体術が火花を散らしました。


続いて、理屈っぽいバルトが自作の魔道具を駆使してセレスに挑みますが、彼女の「身体強化アクセル」による神速の前には、計算し尽くされた罠も意味をなしません。一方、ドワーフのバルクは鍛冶師らしい重厚な守りと一撃で健闘し、ヴァレリアもまた「筋肉強化マッスル」を乗せた一閃で応戦、ロケット型の胸元を激しく揺らしながら立ち回ります。


準決勝ではレオンも参戦し、無詠唱魔法と身体強化を完璧に制御する圧倒的な実力を披露しました。男たちは口々に驚愕の声を上げます。


「理論を超えた出力だ……」「これが、金貨700枚を稼ぎ出す力か」


トーナメントを通じて、7人は互いの卓越した技能を認め合いました。勝敗以上に、それぞれの長所が噛み合った瞬間の手応えが、最強の集団への第一歩となったのです。




模擬戦を終えた広場で、セレスとヴァレリアは格闘家アランのもとへ歩み寄りました。剣だけでは補えない至近距離での対応力を身につけるためです。


「アランさん、あなたの無駄のない体の使い方を教えていただけますか?」


レオンの教え通り、年長者であるアランにセレスが丁寧に請うと、アランは堅苦しくも力強く頷きました。

「承知した。魔力を外に放つのではなく、皮膚の内側に薄く、だが鋼のように定着させて打つ……これが私の格闘術の真髄だ」


アランの指導は厳格でした。セレスとヴァレリアは、放出した魔力を拳や脚に纏わせる感覚を模索します。ヴァレリアは豊かな胸を揺らして激しい呼気をつきながら、マッスルと併用した重い一撃を大樹に叩き込みました。

「……こうかしら? 皮膚が熱くなるような、独特な感覚ね」


修行の合間、二人はお返しとしてレオン直伝の術式をアランに授けました。

「アランさん、拳に宿した光を弾丸として放つ『ホーリーバレット』。そして浄化と回復の力を込めた『ピュリフィケーションバレット』と『ヒールバレット』です」


レオンの魔法は無詠唱。セレスが実演して見せると、アランの目に見開かれました。

「詠唱もなしに、これほどの純度の光を……。私の格闘術にこの遠距離・回復手段が加われば、もはや死角はない」


拳に魔力を纏う武の極致と、無詠唱で放たれる聖なる弾丸。互いの技術を交換し合った三人の間には、昨日までの警戒心は消え、確かな戦友としての信頼が芽生え始めていました。



次に二人は、コワモテの剣士ブライトの前で片手剣を構えました。アランから学んだ格闘術に加え、実戦的な剣の振りと、離れた敵をも断ち切る「斬撃」の極意を教わるためです。


「ブライトさん、お力添えをお願いします。あなたの鋭い剣筋を、私たちにも伝授していただけないでしょうか」


セレスが礼儀正しく頼むと、ブライトは無愛想に鼻を鳴らしながらも、重い腰を上げました。「……いいぜ。斬撃ってのはな、腕力じゃねえ。魔力を剣筋に乗せ、空気を裂くイメージだ。お前らの『アクセル』の速度があれば、もっと鋭くなるはずだ」


ブライトの指導は実戦的で容赦のないものでした。ヴァレリアは「マッスル」で高めた剛力を剣先に集中させ、一気に踏み込みながら横一文字に剣を振るいます。

「……はぁっ! こう? 空間ごと切り裂くような感覚ね」

激しい運動にロケット型の胸元を揺らしながらも、ヴァレリアは次第に鋭い衝撃波を飛ばすコツを掴んでいきました。


修行の合間、二人は教えてもらった礼として、レオン直伝の魔法をブライトへ伝授することにしました。


「ブライトさん、私たちからも魔法をお教えします。まずは『ホーリーバレット』。杖も詠唱も介さず、指先や武器の先端から聖なる光の弾丸を放つ攻撃魔法です。これなら剣が届かない距離の敵も即座に射抜けます。次に『ピュリフィケーションバレット』。これは邪悪な呪いや毒を浄化し、霧散させる光の弾です。そして最後が『ヒールバレット』。自分や仲間の傷に直接光を撃ち込み、瞬時に癒やす回復魔法です」


無詠唱で次々と魔法を繰り出す二人を目の当たりにし、ブライトは呆気に取られた後、不敵な笑みを浮かべました。

「……へっ、魔法使いの詠唱を待つのが一番嫌いだったんだが、これなら文句ねえ。剣を振りながら弾丸をぶっ放し、傷を自分で治す……最高にイカした戦い方ができそうだ」


前衛としての攻撃力と継戦能力が飛躍的に向上した二人に、ブライトも一人の戦士として深い敬意を抱き始めていました。




レオンは、理系で理屈っぽいバルトを呼び寄せ、彼に「アイテムボックス」の術式を直接授けることにしました。


「バルトさん、あなたの量産技術があれば、僕のこの魔法を形にできるはずです。これを解析して、誰にでも使える魔道具に落とし込んでください」


レオンから直接、異空間構築の術式を脳内に転送されたバルトは、眼鏡の奥の瞳を異常なほどに輝かせました。

「……素晴らしい。この多次元接続の数式、そして魔力の固定理論。非効率な既存の袋とは根本から構造が違います。理論上、この術式を魔鋼の繊維に定着させれば……。レオンさん、僕ならこれを最小のコストで量産化できます。これこそが物流のパラダイムシフトだ」


バルトはそれから数日、不眠不休で工房に籠もりました。バルクが精製した魔鋼をバルトが極細のワイヤー状に加工し、特殊な術式回路を組み込んで編み上げる。そうして完成したのが、外見はただの小袋ながら、内部に広大な空間を保持する「新型マジックバッグ」でした。


この革命的な魔道具の完成を、ヴァレリアが見逃すはずもありません。彼女は完成した試作品を手に取り、ロケット型の豊かな胸を昂揚で揺らしながら不敵に微笑みました。


「バルト、よくやったわ。そしてレオン、この利権を私に預けてくれるわね? このバッグは単なる道具じゃない、世界の経済を支配する鍵よ。私がこの『新型マジックバッグ』の総販売元として、ギルドや各国の商人と渡り合ってあげる。……いい、偽物が出回る隙も与えないわよ。製造はバルトとバルクのライン、販売は私のルート。完璧なビジネスモデルだわ」


ヴァレリアは既に、世界中の物資が自分たちの手を通じて流れる光景を描いていました。レオンの魔法、バルトの技術、そしてヴァレリアの商才。最強のパーティは、武力だけでなく経済の頂点をも目指して動き出したのです。




「これから向かう廃都の地下墓地は、負の魔力が満ち、無数のアンデッドが巣食っています。お二人にも、自分を守り、敵を討つための術を授けます」


レオンは、職人気質のバルクと理系で理屈っぽいバルトを呼び寄せ、真剣な眼差しで向き合いました。二人の能力を最大限に引き出すため、レオンは無詠唱魔法の核となる術式を直接伝授します。


「まず、アンデッドに対して最も効果的な『ホーリーバレット』。杖も詠唱も必要ありません。体内の魔力を聖なる光へと変換し、弾丸として撃ち出してください。次に、不浄な毒や呪いを霧散させる『ピュリフィケーションバレット』。そして、傷を瞬時に癒やす『ヒールバレット』です。バルトさん、術式の回路構築を。バルクさん、魂に刻むようにイメージしてください」


バルトは眼鏡を押し上げ、脳内に展開された数式を瞬時に解析しました。

「なるほど、光子の収束と指向性の持続……。理論上、これなら僕の魔道具の出力系統にも転用可能です。非常に合理的だ」

一方、バルクは太い腕を組み、職人らしい直感で魔力の流れを掴みます。

「がっはっは! 難しい理屈はともかく、この光の密度、最高にいい『焼き』が入ってやがる。これなら腐れ外道どもをまとめて浄化できそうだぜ」


二人はレオンの指導のもと、瞬く間に三つの聖魔法を習得しました。特にバルトは、量産型の魔道具にこの術式を組み込む着想を得て、バルクはその魔力を込めた打撃を想像してハンマーを握り直します。


「お二人とも、流石の飲み込みの早さです」


レオンは年長者である二人の才能に改めて敬意を払い、準備を整えました。ヴァレリアはロケット型の豊かな胸を昂揚で揺らし、セレスは新調した片手剣の鞘を鳴らします。アラン、ブライトも加わり、最強の7人は不気味な静寂に包まれた廃都へと足を踏み入れました。




廃都の地下墓地、冷気に満ちた最深部で彼女は死を覚悟していました。崩れた石柱に背を預け、荒い呼吸を繰り返すのは、二十五歳を過ぎたばかりの熟練の女騎士です。銀髪を乱し、苦悶に満ちた表情を浮かべながらも、その瞳には高潔な威厳が消えずに残っています。


しかし、彼女を包む白銀の甲冑は「亡霊騎士レイスナイト」の猛攻によって無残に砕け散り、脇腹の深い傷口からは鮮血が止めどなく流れ落ちていました。目の前には、実体を持たず物理攻撃を一切無効化する漆黒の霧を纏った死神が、絶望の象徴である大鎌をゆっくりと振り上げています。


「……ここまで、か……」


彼女が自嘲気味に呟き、静かに瞳を閉じようとしたその時でした。


「皆さん、お願いします!」


レオンの鋭い号令が響き渡ると同時に、六人の影が弾けました。先陣を切ったのはセレスとヴァレリアです。「アクセル」の神速で肉薄したセレスの剣が光を放ち、ヴァレリアは「マッスル」の剛力で放たれた「ホーリーバレット」を側面に叩き込み、死神の体勢を崩します。


間髪入れず、アランの魔力を纏った拳とブライトの鋭い斬撃が、実体化を強要されたレイスナイトの霧を切り裂きました。さらに後方からは、バルトが数式通りの精密な射撃で急所を貫き、バルクが魂を込めた光の塊を炸裂させ、漆黒の死神を霧散させました。


女騎士が驚愕に目を見開く中、六人は流れるような連携で彼女の周囲を固めます。レオンは彼女のもとへ駆け寄り、敬意を込めた仕草で膝をつきました。




女騎士 エルザ は顔を紅潮させ、屈辱に震えながら叫んだ。


「私の剣技が……二十年以上、研鑽を重ねてきた我が一族の剣が、あんな化け物一匹に傷一つつけられなかったなんて! 私は、騎士失格よ……!」 助けた騎士が自暴自棄になる。

ヒールバレットを与える 落ち着く




エルザと名乗った女騎士は、深い傷を負いながらも、その瞳に絶望と激しい怒りを宿していました。彼女は顔を紅潮させ、折れた剣を握りしめながら、絞り出すような声で叫びました。


「私の剣技が……二十年以上、研鑽を重ねてきた我が一族の剣が、あんな化け物一匹に傷一つつけられなかったなんて! 私は、騎士失格よ……!」


二十五歳まで騎士として歩んできた彼女の誇りは、物理攻撃の通じない亡霊騎士を前に無残に砕かれていました。自暴自棄になり、自身の存在を否定する言葉を吐く彼女に対し、レオンは静かに手を差し伸べました。


「エルザさん、今は自分を責める時ではありません。落ち着いてください」


レオンの合図とともに、セレスとヴァレリアが同時に「ヒールバレット」を放ちました。柔らかな光の弾丸が彼女の脇腹の重傷に吸い込まれると、裂けていた筋肉と皮膚が瞬時に繋ぎ合わされ、失われていた活力が全身に巡ります。


「な……傷が消えていく……?」


驚きに目を見開くエルザの肩を、ヴァレリアが年長者らしい落ち着いた仕草で優しく叩きました。ロケット型の豊かな胸をゆっくりと上下させながら、彼女は微笑みます。


「相手が悪かっただけよ。あいつらには、私たちの『特別な魔法』が必要だった。あなたの剣が劣っていたわけじゃないわ」


セレスもまた、寄り添うように声をかけました。

「ええ。命があれば、また剣を振るえます。あなたの誇りまで死なせないでください」


温かな回復の魔力と、仲間の穏やかな言葉に包まれ、エルザの激しい動悸は次第に収まっていきました。彼女はまだ震える手で地面を見つめていましたが、その瞳からは先ほどまでの自暴自棄な色は消え、自分を救った七人の姿を、改めて見つめ直そうとしていました。




エルザが呆然と座り込む中、地下墓地の奥底から地を這うような呻き声が響き渡りました。レイスナイトの消滅に呼応するように、数百体を超えるスケルトンやゾンビ、さらには上位種の死霊たちが、不浄な濁流となって押し寄せてきたのです。


「エルザさんはここで休んでいてください。……皆さん、掃除を始めましょう。一匹も逃さないでください」


レオンの静かな、しかし絶対的な命令が下りました。


先陣を切ったのはアランとブライトです。アランは「魔力纏い」を全身に巡らせ、格闘術の粋を凝らした拳をスケルトンの群れに叩き込みました。一撃ごとに聖なる魔力が炸裂し、骨の破片すら残さず塵へと変えていきます。隣ではブライトが自慢の剛腕を活かし、魔力を乗せた鋭い斬撃を繰り出しました。コワモテの顔をさらに歪ませ、「斬撃」の波でアンデッドの軍勢を紙細工のように切り裂いていきます。


「へっ! 聖魔法を覚えたおかげで、幽霊相手でもまともに斬れる。最高だぜ!」


中衛ではセレスとヴァレリアが舞うように戦場を支配していました。セレスは「アクセル」による超加速を剣に宿し、最短距離の刺突でゾンビの急所を的確に貫いていきます。ヴァレリアもまた「アクセル」と「マッスル」を併用し、ロケット型の豊かな胸を激しく上下させながら、大剣の一振りで数体のアンデッドをまとめて粉砕。至近距離から「ホーリーバレット」を連射し、迫り来る腐肉の塊を聖なる光で焼き尽くしていきました。


後方では、バルクとバルトが「教わったばかりの魔法」を存分に振るっていました。

「がっはっは! 汚ねえ連中だ、まとめて洗ってやるよ!」

バルクは「ピュリフィケーションバレット」を広範囲に散弾状に放ち、地下墓地の瘴気ごとアンデッドを浄化していきます。バルトは眼鏡の奥で冷徹に敵の密度を計算し、最も効率的な座標へ「ホーリーバレット」を一点集中で撃ち込みました。

「理論上、この出力なら一撃で三体は貫通します。非効率な戦いは好みません」


レオンは中心に立ち、戦場全体を掌握しながら、漏れた敵を無詠唱の光魔法で確実に処理していきました。


六人の卓越した実力と、レオンから授けられた無詠唱の聖魔法が噛み合った瞬間、そこはもはや戦場ではなく、一方的な「殲滅作業」の場と化しました。数分前まで絶望の淵にいたエルザの目の前で、数百の軍勢が、まるで陽光に晒された霧のように跡形もなく消え去っていきました。


すべてのアンデッドが灰へと帰り、地下墓地に静寂が戻ったとき、エルザは震える声で呟きました。

「……これが、あなたたちの力……? 伝説の英雄か何かなの……?」


レオンは静かに振り返り、傷の癒えた彼女に穏やかな微笑みを向けました。


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