三日目決算、ログアウトボタンが戻る
三日目の夕方、セリカ村の役場に全員が集まった。
村長、リュウ、妖精ナビ、隣村ギルドの代表、復興会員のプレイヤーたち。そして、銀の仮面をつけた運営アバター。
湊は収支表を読み上げた。
「薬草茶、鍬、補給契約、復興会員費、祭りの施設利用料。支出は種、警備、井戸修理、畑の拡張費」
数字が黒に変わる。
負債八百万G。
三日間の返済額、八百万Gと三百G。
広場が静まり返った。
妖精ナビが、震える指で画面を確認する。
『セリカ廃村イベント、黒字化条件達成』
『ログアウト制限を解除します』
湊の視界の隅に、灰色だったボタンが戻った。
ログアウト。
たった四文字なのに、胸が痛いほど重い。
リュウが笑った。
「帰れますね」
「うん」
「帰るんですか」
湊はボタンを見た。
現実に戻れば、散らかった部屋と冷めた弁当がある。たぶん未読メールも山ほどある。
でも、セリカ村の広場では、村人たちが新しい市の準備をしていた。補給契約の荷札には、来週分の注文が書かれている。
運営アバターが告げる。
『イベント名を変更します』
『セリカ廃村復興イベント』
『以後、セリカ村経営クエストとして常設化』
リュウが吹き出した。
「廃村じゃなくなった」
「ようやく看板に追いついた」
湊はログアウトボタンを押した。
視界が白くなる直前、妖精ナビが頭を下げる。
「また来てくれますか」
「契約が残ってる」
湊は笑った。
「経営は、黒字になってからが本番だから」
現実の部屋で目を覚ますと、机の上のスマホが光っていた。
『セリカ村より週次決算レポートが届いています』
湊はため息をつき、少し笑った。
ログアウトはできる。
けれど、もう無関係ではいられない。
セリカ村は、今日から本当に始まる。
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