廃村サーバー、初期負債八百万ゴールド
農業VRなのに、最初に育てるのはキャッシュフローです。
ログインした瞬間、目の前に赤い数字が浮かんだ。
『所属村: セリカ廃村』
『村の負債: 8,000,000G』
『返済完了までログアウト制限中』
「農業VRって聞いていたんだけどな」
会社員の湊は、麦わら帽子をかぶった自分の手を見下ろした。剣はない。魔法もない。あるのは新品の鍬と、現実の残業で鍛えられた表計算への執念だけだ。
村はひどかった。井戸は壊れ、畑は雑草に埋まり、村長の家には「探さないでください」と書かれた紙が貼られている。掲示板には請求書が十七枚。家賃、水道、種苗、倉庫修理、なぜか花火代。
「ログアウトできないなら、まず見るべきは出口じゃない」
湊は請求書を一枚ずつ地面に並べた。
「支払期限だ」
最初の期限は三日後。金額は二十万G。返せなければ村はシステムに没収され、湊のアカウントは初期化されるらしい。
畑の土を握ると、視界に文字が出た。
『土壌分析 Lv.1: 酸性過多。カブ不向き。ジャガイモ向き』
「使える」
最初に配られた種はカブだけ。だが倉庫には古いジャガイモが三袋ある。
「妖精さん。市場価格を見せて」
「カブは暴落中です。ジャガイモは品薄です」
湊は鍬を振り下ろした。
「じゃあ初日はジャガイモだ。負債八百万の村で、流行りの作物を育てている余裕はない」
第2話も予約済みです。評価・ブックマークで応援いただけると励みになります。




