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〈インフィニティリベルタ・オンライン〉が正式サービスを開始してから二ヶ月、すなわち10万人ものプレイヤーがこの世界に閉じ込められてから2ヶ月が経とうとしていた
現実世界では、アイがメディアを通じて『クラウンステーション』について説明をし、そしてプレイヤーの身体はそれぞれ最寄りの大規模な病院へと搬送された
この世界では物を食べたりしているが、それはこの世界の中でしか過ぎない
現実世界での身体は、肉が落ちてやせ細り、髪もただただ伸び続けていることであろう
さて、現実世界の話はこれくらいにしておいて、こちらの世界の話をしよう
現在こちらの世界では俺が入手した魔道書を大々的に公開したことにより、プレイヤー全員にMPが出現し、魔法を使えるようになった
最初の頃は皆なれない詠唱に戸惑っていたものの、すぐに慣れていった
今では剣だけでなく、魔法を使った戦闘も多くなってきた
二ヶ月経ったこともあり、殆どのプレイヤーがこの世界を現実として受け入れ、それぞれが活動を始めた
また、βテスターを筆頭に当初からゲーム攻略を進めていたプレイヤーたちは集団で行動することが多くなり、それぞれがギルドチームなるものを結成し、ダンジョンへ挑んでいた
俺は現在アリアさんとノブナガの3人でパーティを組み、日々ダンジョンに潜る生活を送っていた
一ヶ月前、俺たちが受けたNPCクエストの最後にナズナというNPCが発した言葉
「アイを倒してシステム権限を取り戻せばこの世界から出ることが出来る」
という言葉を受け、次の日から日が暮れるまでその広大な大地を移動し、アイを探した。
が、当然見つかるはずもなかった
それもそのはず、それに、いくら見つけたところでゲームマスター、すなわちこのゲームの頂点に君臨するものに敵うはずもない
だから今の俺たちに出来る事はほんの僅かな可能性を信じてひたすら自分を磨くのみだ
現在のプレイヤー最高到達レベルは53、もちろんアリアさんだ。
次に高いレベルは51、現在の最高規模のギルドチーム、clear THE World通称CTWのリーダー、シップというプレイヤーだ。
シップとは、直接顔を合わせたことはないが噂はよく聞く。
100人以上のプレイヤーを一人でまとめ上げ、今まで死者を出さずにダンジョンを攻略してきた強者だ
シップのスキル、【絶対防御】はいかなる物理攻撃も無効化してしまうという盾使い最強のスキルだ
今日もダンジョンに潜り、そして帰還した俺たちはポーションが心もとなくなっていたので久々に始まりの街に戻ることにした。
「テレポート!」
魔法が使えるようになり、フラッグという地点メモリが登場したため、プレイヤーが一度訪れた場所なら簡単に移動することが可能となった
始まりの街に着き、街を歩いていると突然鎧を着た男が前に立ちはだかった
「アリア殿、シップギルド団長からおよびがかかっています、ご同行願います」
「え…」
「おい、まて」
俺とノブナガはアリアさんの前に立った
「なんだ、お前たちは」
「俺たちはアリアさんのパーティーメンバーだ。お前こそ何者だ?」
「私はCTWのリダと言う。そして、シップ団長がアリア殿に話があるという事なので同行をお願いしている。以上だ」
「そんなの、アリアさん一人で行かせるわけないだろ、俺たちも行く」
「むぅ、まぁ、アリア殿に同行者がいた場合念のため連れて来いとのことだからな、いいだろう、ついてこい」
俺達はリダというプレイヤーの後に続いてしばらく始まりの街を歩いていると、急にリダが立ち止まって言った
「よし、着いたぞ」
そこにあったのは、大きな屋敷があった
ナズナの屋敷には劣るものの、かなりの大きさの屋敷だった
まぁ、100人以上のプレイヤーが所属しているので、この大きさには納得だ
リダは門の前に立っている同じような鎧を着ているプレイヤーに何かを説明した
そのプレイヤーは頷き、門をあけた
「よし、入れ」
リダに言われて俺たちは中に入った
俺たちと入れ違いに武装した集団が10人ほど出て行った
奥へ進み、部屋に入った
「失礼します!シップさん!」
リダは深々と一礼して部屋に入った
右端の席には背の低いの男が座っていた
「やぁ、アリア。久々だね」
「うん、久しぶり」
アリアさんもシップもβテスターの中でもトップの実力の持ち主だ。当然顔見知りであろう
「彼らは君のパーティーメンバーかい?おっと、そこにいるのはノブナガじゃないか」
「よっ、シップ」
「さて、アリア今日君にきてもらったのは他でもない。我がギルドパーティーに参加してほしい」
「えっ…それ、は…」
アリアさんは口ごもる
そこにシップが続けて言った
「それにノブナガもだ。本来我がギルドは軽い入団テストをおこなっているが、君たち二人なら無条件で入れてもいい」
「おい、勝手に話を進めるな」
俺は立ち上がって言った
「君は…」
「俺はシオン。アリアさんとノブナガのパーティメンバーだ。悪いが俺のパーティメンバーを勝手に引き抜くのはやめてもらおう」
「そうだな。本件を言わずに失礼。実は先日我がギルドが特殊ダンジョンを発見した。それは一つの同じパーティーに所属するものしか入ることが出来ならしい。だからβで最強を誇ったアリアに入ってもらいたい、という事だ。了承してほしい」
特殊ダンジョン…聞いたことはある。
なんらかの条件が存在する不思議なダンジョンだ
存在する、という情報こそあったもののβテスト、そしてゲームが始まってからも未だに見つかっていなかったのだがようやく発見されたか
「私…入る気は、ないよ。それに、シオンが、1人になるから」
アリアさんが立ち上がって言った
シップは腕を組んで何かを考え、そして言った
「じゃあ、こうしよう。今から上の修練場で僕とシオンでPVPをしよう、そして五分以内にシオンが僕に一撃でも攻撃を食らわせることができたらこの話は無かったことにしよう、だが、食らわせる事ができなかったらアリアとノブナガは我がギルドパーティーに入る、というのはどうだい?」
「よし、乗った」
俺は即答した
「そうかい、じゃあ僕は先に上に行ってるよ」
そう言ってシップは部屋を後にした
「おい!シオン!大丈夫なのかよ!」
「そうだよ、シオン。シップにはいかなる物理攻撃も無効化するスキルが、あるんだよ」
ノブナガとアリアさんが心配そうな顔で俺を見てきた
俺は笑みを浮かべて言った
「大丈夫ですよ、アリアさん。俺は負けません。アリアさんも、ノブナガも、絶対手放しませんから。それに、あの秘策を試すのには申し分ない相手ですから」




