冒険者支援施設
《ゴブリン》に襲われていたルル・ニカーターと共にイズルリの街に入った俺達…。
周りには沢山の人や店が並んでいる。
「へえ、賑やかな街だな」
「このイズルリの街はこの地域の中でも多くの人が住んだり、来たりしているんです。勿論、多くの冒険者もこの街から出立しているんですよ」
「冒険者…確か、ルルさんは冒険者支援施設で働いているんだよな?」
「はい。…あちらの建物です!」
ルルさんの指差す方向を見ると、確かに冒険者っぽい見た目の奴等が多く群がっている。
「あの施設ではクエストの張り出しもしているのですよね?」
「していますよ。それにあそこで冒険者登録をする事も出来ます」
冒険者登録…。やっぱり、冒険者にも登録が必要なのか。
「なあ、ルルさん? 俺達も冒険者になりたいんだけど…いいか?」
「勿論、お伺いしますよ! …それにしても…お二人はまだ冒険者ではなかったのですね」
「まあな。…力付けてから、冒険者になろうって、思ったんだ」
俺の嘘の言葉に成る程とルルさんは納得してしまう。それはそれで罪悪感を覚えてしまうが、仕方ない。
なんせ俺達はこの世界の人間じゃないって事は言えないからな。
冒険者支援施設に入ると、施設の中にいた冒険者全員の視線が集まる。
…なんか遅れてきた学生みたいだな…。
そして、ルルさんの案内で窓口まで連れて来られた。
「それでは、アルトさん、メリルさん…。お二人のコンディションブレスを確認します」
ルルさんの言葉に頷き、俺とメリルはステータス画面を表示する。
「えっと…メリルさんは魔術士、アルトさんは…えっ…?」
あ、やっぱり驚きます?
ルルさんは見間違いだと、何度も目を擦るが、変わる事はないだろう。
そして、気まずそうな顔で俺を見る。
「あの〜、アルトさん? 失礼かも知れませんがお聞きします。…もしかして、アルトさんは無職なのですか?」
ルルさんの言葉に他の案内嬢や冒険者達は驚愕の表情で俺を見る。
俺の隣に立っていたメリルにまで視線が向かうから、彼女もアタフタとしている。
「見ての通りだよ。…俺には職業は存在しない」
俺の言葉後…施設内は暫くの沈黙に包まれた。
そして、数秒後…。
「ブワッハッハッハッ! 聞いたかよ、お前等!」
「無職が冒険者になるだってよ!」
「無謀にも程があるだろ! あー、腹痛え〜!」
俺が無職と知り、他の冒険者達は大笑いをする。ルルさん以外の受付嬢も笑いを堪えているのが見える。
…ん?
不意に視線を感じ、その方を見ると窓の外から、施設内を見ている緑髪の男がいた。
緑髪の男は俺の視線に気がつくと、すぐさま何処かへ行ってしまう。
…あの服装…まさか…。
俺は緑髪の男について、少し考えるが、周りの笑い声に集中できなくなってしまう。
…煩えなぁ…。そんな挑発に乗るかよ。そもそも挑発に乗る奴なんているわけないだろ。
「ア、アルトさんを馬鹿にしないでください!」
…前言撤回、ここにいましたね。
メリルがムッとした表示で口を開き、今度はルルさんも口を開いた。
「そうです。それにアルトさんの実力は本物です! 私を《ゴブリン》から守ってくれたのですから!」
2人がヒートアップして、どうするんだよ…。
俺は頭に手を当てながら、溜め息を吐く。
「2人共…気持ちは嬉しいが、落ち着けって」
「「落ち着けません!」」
「落ち着けなくとも、落ち着け! 面倒事を起こすなっての!」
「…わかりました」
俺の注意に2人は渋々と了承した。
ゴホン、と咳払いをし、気を取り直したルルさんは話し出した。
「それでは、冒険者登録の試験を明日行います!」
「試験があるのですか?」
「どんな内容なんだ?」
俺達の問いにルルさんは一枚のクエスト書を取り出し、俺達に見せる。
「一つのクエストをこなしてもらいます」
何々? クエスト内容は…フィーリン森林の銅リンゴを5つ持ち帰る…か。討伐とかじゃないだけマシか…。
「試験は明日の朝に行いますので、遅れないようにしてください」
「了解だ。それじゃあ、明日にまた来るよ」
「はい! 今日は本当にありがとうございました!」
笑顔で感謝の言葉を述べるルルさんに俺は気にするな、と言い、メリルと共に施設から出た。
出る際、他の冒険者達から馬鹿にする視線を向けられたが、無視だ無視〜。
外に出て、道具屋に向かおうとすると、メリルに呼び止められる。
「アルトさん! あんな事言われて悔しくないんですか⁉︎」
まだ俺が無職って、バカにされた事、気にしてんのかよ…。
「いいんだよ。それにあいつ等は事実を言ってるだけだ」
回復ポーションと解毒ポーションを買いながら、俺は話を続ける。
「俺の為に怒ってくれている事はありがたいけど、冒険者同士で揉め事は起こしたくないんだ」
「…アルトさんがそう言うのであれば…」
俯くメリルを見て、俺はフッ、と笑う。
「な、何ですか?」
「いや…。こうしてるとお前、女神って感じがしなくてな」
「…やっぱり、向いていませんかね?」
俺の言葉を聞き、メリルはさらに表情を暗くする。
あ、勘違いしてやがる。
「そうじゃねえよ。女神ってさ…人間の事を見ているだけの存在って、思っていたけど…メリルは俺の為に怒ってくれたんだろ? って事は俺達はこれからもやっていけるって思わないか?」
それを聞いたメリルはあっ…、と口にし、笑顔になった。
「そう…ですね! ここで立ち止まってはいられませんよね! あははっ! 私が導くはずが、励まされましたね」
「気にするなよ。お前は俺の相棒なんだからよ」
相棒という言葉に反応したメリルは嬉しかったのか目元に涙を浮かべる。
「…まあ、駄女神な所もあるけどな」
「酷いっ⁉︎」
皮肉を言いながらも、俺達は笑い合った…。
その後、メリルに防御力をと装備を買い、宿に一泊して、俺達はフィーリン森林の入り口前に立った。
「さて、準備は出来たか? メリル」
「バッチリです!」
和かな笑顔を見せたメリルを見て、微笑んだ俺はキッ、と顔を強める。
「じゃあ…行くぞ!」
そして、俺達は…フィーリン森林に足を踏み入れた…。




