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夢、叶った

夜の病院。


最上階の窓際。


女子高生が外を眺めていた。


制服姿。


少し透けている。


制服の男は隣まで歩く。


「……何してんだ」


少女は窓の外を見たまま言う。


「……あそこ」


指さした先。


若い男女が手をつないで歩いていた。


笑いながら。


夜道をゆっくり。


「いいなぁ」


小さく呟く。


「いつか病気が治ったら」


少し笑う。


「彼氏とデートするんだって」


沈黙。


「思ってたのに」


窓ガラスに自分の姿が映る。


「死んじゃった」


制服の男は外を見る。


「……彼氏、いたのか」


少女は首を横に振る。


「いない」


少し照れたように笑う。


「一度くらい」


「彼氏、欲しかったな」


沈黙。


制服の男はポケットに手を入れた。


「すりゃあいいだろ」


少女が振り向く。


「……え?」


「デート」


ぶっきらぼうに言う。


「付き合ってやる」


少女は目を丸くした。


「え、本当に?」


「一回だけな」


少し笑う。


「……ありがとう」


その笑顔は、


さっきより少しだけ明るかった。



夜の街。


制服の男と肩を並べて歩く。


少女はそっと手を伸ばした。


制服の男の手に、自分の手を重ねる。


……本当は触れられない。


それでも、


手をつないだ気がした。


制服の男は何も言わない。


ただ、歩く速さだけを少し緩めた。


コンビニへ寄る。


アイスを買う。


公園のベンチに座る。


「デートって」


少女が笑う。


「こういうのでいいんだよね」


制服の男はアイスを食べながら頷く。


「知らねぇ」


「俺も初めてだから」


少女は吹き出した。


「そっか」


二人で笑う。


夜風が吹く。


少しだけ沈黙。


少女は空を見上げた。


「病院の窓から」


ぽつりと言う。


「ずっと外を見てた」


「コンビニも、公園も」


「全部、いつか行きたいなって思ってた」


制服の男は黙って聞いていた。


「今日、全部行けた」


少女は微笑む。


「ありがとう」


輪郭が少しずつ薄くなる。


「これで」


制服の男を見る。


「夢、叶った」


制服の男は少しだけ照れくさそうに前を向く。


「……よかったな」


少女は嬉しそうに笑う。


「彼氏って」


最後に首を傾げる。


「こんな感じなのかな」


「違うだろ」


制服の男が即答する。


少女は声を上げて笑った。


その笑い声は、


夜風に乗って少しずつ遠ざかる。


やがて、


少女の姿は静かに夜へ溶けていった。


制服の男は空になったアイスの棒を見つめる。


「……またな」


返事はない。


夜の公園は、


少しだけ優しかった。

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