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忘れられたと思っていた兄

夜の公園。


ブランコと砂場のある、小さな場所だった。


制服の男は、自販機の前で缶コーヒーを取る。


視線の先。


昼間、ここで遊んでいる少女の姿を、さっき見かけた。


その横に、半透明の少年が座っている。


「あれ、妹」


少年が呟く。


「俺が死んでから、あんまり笑わなくなってさ」


少し間が空く。


「でも最近は、普通に遊んでる」


寂しそうに笑う。


「……俺なんか、忘れて」


制服の男は缶を開ける。


「忘れてねぇよ」


少年が顔を上げる。


「は?」


男は、公園を見る。


「さっき、あの子」

「泣きながら言ってたぞ」


沈黙。


「あの子、この前」

「兄ちゃんの夢見たって」


少年の表情が止まる。


「会えた気がするって」

「また泣いてた」


風が吹く。


少年の姿が揺れる。


「……そっか」


小さく笑う。


体が、少しずつ夜に溶けていく。


「ありがとな」


声だけ残る。


制服の男はポケットに手を入れる。


「忘れたんじゃねぇよ」

「抱えたまま、生きてんだ」


公園は、また静かになった。


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