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宙域会戦:3節 第三次 火星宙域会戦

( 68 VS 75 )会戦当初

( 40 VS 68 )第一次火星宙域会戦

( 31 VS 63 )第二次火星宙域会戦


現在のスコア ナーミャン艦隊35 VS マルカ艦隊50


大きな攻撃と補給 を2回ほど繰り返している。双方とも当初と比較するとかなりの被害が発生している。


そして現在、ナーミャン艦隊は、第二次火星宙域会戦で格闘戦を仕掛けられ多くの艦が大破している。しかし円滑な兵站により大破艦を現地補修できているようである。


他方、マルカ艦隊は、“TF-1型”の攻撃と格闘戦によりナーミャン艦隊に大打撃を与えたものの、補給艦隊を殲滅させられてしまっている。


艦隊数こそ2倍ほどいるが、ジリ貧状態にある。

対処として駆逐艦を輸送艦として利用しているため、前線の艦が減少している。


しばらく補修のため再びにらみ合いが続いている。




--- マルカ艦隊


「補修は進んでいますが、あと一戦が稼働限界です。 補給が間に合っていません。 想定以上に弾薬や燃料が消耗しています」


「電磁加速砲もエネルギー消費がある。 加えて待機状態でもエネルギー消費がこれほど多いとは――戦いが終わったらシステムの総見直しだな」


「ええ。 ただし、生きて帰れたらですよ」

「確かに…… ナーミャン艦隊もまだ補修中か。地上はどうなっている?」


「レーベとテッサリアの反攻作戦により足止めですね。 噂では北に進軍との報告もあります」


「北? 目的地は、キンメリアのプロメンテだろう。 北には……エリスか」

本気でエリスを襲う気なのか? 


「どう思います? 」

「戦線をいたずらに広げることは、悪手であることなのは、わからないはずはないと思うが」


「同感です。 しかし、陸軍は、ルゥルゥ陛下の御血縁の王族が指揮しておられます。 参謀も難しい判断を迫られるでしょうね」


戦闘記録が取られている。やたらなことが言えないのがもどかしい。


王族に反抗することを言ったら不敬罪になる可能性がある。


まぁ給料さえ払ってもらえれば特段いうこともないさ……いや出してもらっているのは、あの幼女からか?


多少、気が抜けたのか、おどけた考えするマルカであるが、直ちに副官に咎められる。


「それでこの状況をどうするおつもりで? 」

ジト目で副官が質問してくる。 恐らく読心術で読まれているのだろう。


マルカは、軽く咳払いをし

「現在の各艦の補給や修理状況は? 」


「駆逐艦を補給艦として利用しているため、前線が手薄になっています。加えて大破したシールド艦もドックでの修理が必要とのことから後方におり、防御艦はシールド艦2隻(大型艦)とディフェンス艦(中型艦)3隻での対応です。空母もあの船体であるため、かなりの損傷があります」


シールド艦5隻のうち3隻が航行不能だからな。 かなり……とんでもなく痛い。


副官の説明がつづく。


「駆逐艦は10隻をそのまま補給艦隊に転用していますからね。 機動艦と言えば重駆逐艦とコルベットになります」


「コルベットの魚雷の種類と数量は? 」


「第二次会戦でかなり使用しましたので、魚雷の残弾は50%程度です……トツカ弾核の使用はまだありません。あれの使用は、司令官の専権事項ですので。 どう致します? 」


「あれ系の兵器は、使用に神経を使うよ。とはいっても念のため準備していて」

「……了解です」




--- ナーミャン艦隊

副官が何かの指令を受けっとって、固まっている。

「閣下……その……」

「どうした? 」


「これを」

戻って来たナーミャンが、副官から指令が印刷された一枚の紙の文章を渡してくる。


ナーミャンがその文章を読み込んでいく。みるみる眉間にしわが寄っていく。

「これをどうしろと? 私にこれを実行しろと? 」


「……」

副官は何も言わない。いや言えるはずもない。


副官を責めても解決する問題ではない。

「本国に繋げ。理由を聞きたい。オペレータ本国に繋げ!!」


             *** 通信中 ***


≪ナーミャン 久しぶり≫

なれなれしい貌が、モニターに映る。


≪お久しぶりです。指令書を頂きましたが、この意味を知りたいのですが? 紙きれ一枚で”はいそうですか”この内容を実行できるほど、私は無法者ではありません≫


相手は、エリスのメラノ執政官である。彼も想像通りとも言わんばかりにニヤ付きながら言葉を続ける。

≪君らしいね。 でもやってもらうよ≫


≪衛星兵器の使用は、“エリシウム戦時協定”違反です。明確な理由がない限り命令は、下せません≫


≪何も他国に“堕とせ”と言っているんじゃない。エリスに“堕とせ”と言っているんだ≫


≪自国を兵器で攻撃する軍人がいるとでも? ≫


≪いま、タニア連合王国軍が北に向かっているんだよ。レーベ・テッサリア軍は、地形を上手く利用してね。


タニア連合王国軍は、プロクター海の突破をあぐねている。 簡単に言えば、上手く進軍が出来ないみたいなんだ。


そこで北のエリスに矛先を向けたわけ。ガレから北にあるのは?≫


≪ノアチス平原 平場での戦……≫


≪そう。彼らが最も得意とする場所だ。そしてルベェリエ(サバエア工業都市国家)が頑強に防御しているが、残念ながら時間の問題だろう。 あそこは工業地帯だ。 陥落すると色々困ったことになる≫


ナーミャンは唇を嚙み締めたまま、聞くことしかできない。


≪このままだと、ルベェリエ(サバエア工業都市国家)が陥落して、そのままエリス(サバエア最大都市国家)との衝突だ。 それは避けたい≫


会話の相手は一拍置く


≪あの辺りはエリスの飛び地があるのは知っているよね≫


≪はい≫

≪そこに堕として≫


≪……承服しかねます≫

≪じゃぁエリスの民が死んでもいいの? ≫


≪……≫


≪ここからは独り言~。旗艦ゲリュオンには、秘密の11番コンテナがあります。そこに必要なものがあります。副官にコードを送っておくね。それじゃぁ≫


             *** 通信終了 ***


「閣下。たしかにあの場所に飛び地はありますが、あそこは湿地帯や生態系の研究のための土地。どちらかと言えば借用に近いですし、とても兵士があそこにいるとは――」


「そうゆうことだろ。実験でもなんでも口実を付けて、自国に堕としたが誤射したとしたいんだ」


「その責任は? 」

「我々だ……」


「そんな……」


「さもなければ、エリスで被害が出るぞと」

「無茶苦茶な。自国民を人質に我々を脅迫するんですか? 」


「だろうな。これも戦争だ。事実を確かめたい、地上の情報収集を頼む」

「了解です」




--- マルカ艦隊

「修復率は? 」

「活動できる艦において 30% といったところです」


「これで総力戦かー厳しすぎるな」


「この状態で暴れた場合、長期戦になると戦場の真ん中で燃料切れによる立ち往生が発生する可能性もあります」


「それは困った。向こうが動くまでなるべく補修作業を中心に進めてくれ」

「了解です……ところで、戦術盤に熱心のようですが、敵艦の様子が気になるのですか? 」


「気になる。 威嚇射撃もしてこなくなったな。 補給は十二分にあるはずだが、何か企んでいるのか――。 地上部隊はどうなっている? 」


「ええ。北に進軍の報告は本当のようです。順調に戦線を押し上げているようです」


発言の後、副官はどこからの連絡が端末に入ったようで、敬礼の後、急いで戦闘指揮官室を出て行った。


「エリスを叩く気か?」


マルカ自身も気にはなっている。当初の目的と違う行動は、戦場では多々あるが、それは戦闘レベルの話だ。


戦術レベルで簡単に目標を変更することはほぼない。攻略目的に沿って装備を整えて進軍するためだ。


ダメだったから別の所というのは、装備不足に陥る可能性が高いからだ。

行き当たりばったりでは、部隊を危険に晒しかねない。


更に今回は、プロメンテへの懲罰侵攻という名目がある以上レーベ攻略は、戦略上の必須である。その戦略を変えてまでの進行は絶対にありえない。


御付きの参謀までいるのだ、行先を変更することは絶対にない。

もし自軍を割っての行動ならなおさらのことだ。


実際レーベ攻略の装備でエリス攻略が、可能なのか?


残弾や食料や兵站まで含めた計画をいきなりひっくり返されても多くの兵站担当者に無用な混乱を生むだけだ。自軍のアイギスの手配もある。 


制空権も取れていない状況で何を考えている。

それとも何か裏で動いているのか?


マルカが、その状況に困惑しながらも、今は自分の事に集中することに切り替える。 まずは、この艦隊の補給と補修だな。


≪司令官。敵艦隊に動きがありました≫

オペレータから報告が上がる。

遂に動きやがったか?


しかし、ホログラムでは、大きな変化が見られない。そもそも動いたのかもわからない。外部映像に切り替える。


「……」

(何も変化がないな)


「動作はどのようなものだった」

「何かを落下させたようです。艦隊としてではなく、艦単体の動きです」


「艦長。何かありましたか? 」

副官がホログラムを覗き込む


「ああ。何か敵艦隊の動きがおかしくてね。何かを落としたようなんだ」


「何かを落とした? それより我が艦隊修復率が、依然30%手前で足踏み状態です。 艦の増援が必要かと」


「了解だ。任せる」

「ありがとうございます! 」

副官はどこかに連絡を入れている。


しかし、彼は部隊の復旧も重要であるが、それ以上にナーミャンのことが気になっている。


(向こうには、エリスの英雄のナーミャンがいる。合理性の塊の人物だ。 何を考えている――)


長考状態に陥っている。

何を落とした――。 堕とした――。


「オペレータ地上撮影用のカメラに切り替えてくれ」

オペレータが地上用カメラに切り替える。


モニターには、地上の雲や地上が見える。 多少離れているが、プロクター海も見える。


「こうしてみれば我々の軍事行動など惑星クラスで言えば小さなものですね」

副官がつぶやく。


軍事行動が硬直化しているため多少の感傷的な気持ちが、彼女にも湧いているのだろう。

一方でマルカは、嫌な予感で頭が占有されているため、そのような感情すら湧いて来ない。


「聞きたいことがある」

マルカが副官に話しかける。


「何でしょう」

「地上軍はどこにいる? 」


「報告では、ルベェリエを攻略中と聞いています」

「オペレータ。 ルベェリエ近辺を映してくれ! 」


画面が切り替わる。

「嘘だろ……」


巨大なクレータが見える。

その破壊力は数区画を消し飛ばすほどの威力になっている。


「カメラの拡大を頼む! 」


最大倍率で周囲を映すと撤退しているタニア王国軍と思われる部隊が撤退してる様子が見られる。


「――ウソでしょ。 衛星兵器を使ったんですか。 明確な条約違反行為をなぜ」


「本国からの指示を待つ。 引き続き補修業務を実施してくれ」

「了解です」


(条約違反ではあるが、タニア本国を攻撃したわけではないとの理屈だろうな)

マルカが、コンソールで近隣情報を洗いだす。


(それに……なるほど、エリスの飛び地がある訳か…… しかし、あの堅物(ナーミャン)が、そう簡単にこんな攻撃を許可するとは思えない。


となると、誰かが――あの堅物を動かせる人間が教唆したとなるが、軍の人間には、容易に屈しないだろうなとなると、文官側――執政官だな)


端末を弄り、エリスの執政官を調査する。画面に検索結果が表示される。


(こいつか――いけ好かない面だ。 いかにもナルシストみたいな奴だな。

しかし、こんな奴の指示に従い国際法無視とは、ナーミャンも相変わらずだな


ただ、エリス軍がルベェリエ周辺に派遣されておらず、防御の構えも見せていないところを見ると、最初から使わせる予定だったわけだが……。


引っ掛かる。たしかにこの執政官は、それなりにキレ者であり立ち回りは上手そうだが、こと戦のことをそこまで知っているとは思えない。 誰かが、裏で糸を操っているのか? )


マルカの脳裏に様々な考えがよぎる。

敵もそれなりに何かを背負っているようだ。


「閣下。どうされました? 」

「いや。ところで、作戦要綱は見てくれた? 」


「確認済みです」

「反論を聞きたい」


「反論はございません。王道の防衛線ですね」

「まぁね」


「籠って、引き付けて、アタッカーでの攻撃、最後は接舷での白兵戦ですか。相手も読んでいると思われますが? 」


「だろうね。 読んでいるからこそ、現戦力でこの防御陣をこじ開けないといけないから攻撃も躊躇する。


大破したシールド艦も利用しているんだ。現状、我が軍の陣は、完全な宇宙要塞になっている。この城を開城させないといけない訳だ」


「はい」


「攻城戦は、いつの時代も苦労するからね。 王道だけど、相手もこちらの戦力の3倍を用意しないと防御陣の突破は難しい。


現状は、初期状態の士気が高く、戦艦武装が充実している状態じゃない。 第二次会戦で敵艦隊を多数大破させたのも効いているはず。 加えて、接近戦になれば、“TF-1型”の正面運用は厳しい」


「まだ勝機があると? 」

「勝てない戦であれば、負けない戦いに移行するまで。 それに足掻き続けるのが、自分の性分でね。 補修率は? 」


「40%を超えてきました」


「了解。基本は、待機戦術だな。 相手が動くまで、兵員を休めながら補修を進めてくれ」


「……閣下は、引き分けを狙っておられるのですか? 」

「さぁ? 戦場の結果は、常に時の流れしだいさ」


宇宙会戦は、停戦のような状況で推移している。


つづく



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